クロスドックとは?変化する物流ニーズに不可欠なソリューションを詳しく解説!

物流センター

個人と法人を問わず、近年の物流量の増加には目を見張るものがあります。しかもその内容は、多様化、複雑化する一方のため、各ニーズに対応できる効率的な物流システムの構築が欠かせません。そこで注目されているのが、「クロスドック」という配送方式です。今回は、クロスドックとは果たして何なのか、従来の物流システムとどこが違うのか、また導入のメリットやデメリットについても詳しく解説します。

クロスドックとは

クロスドック(Cross Dock)とは、仕入れ先から荷受けした商品を、検品、仕分けを行った後、そのまま需要先へスピーディーに出荷する手法を意味します。

従来の、荷受けから出荷の流れといえば、検品後、一旦在庫として倉庫内で管理し、オーダーが入るごとに仕分けして発送するというのが一般的でした。ところがこれでは、専用の棚に商品を収納のうえ、再度ピッキングして出荷する必要があるため、二重三重の手間がかかります。

そこで、仕入れた商品を開梱せず在庫保管も行わずに、そのままパレットやケースごと仕分けして、すでに手配してある別のトラックに積み替えて出荷できるようにしたのが、クロスドッグです。

商品が、荷受場(ドック)から出荷場(ドック)に複数の方向から交差(クロス)して積み替えられることから、「クロスドック」という呼び名が付きました。クロスドックが行われる保管機能がない物流センターをトランスファーセンター(TC)と呼び、ほかに「通過型センター」や「クロスドックセンター」などと表現されることもあります。

クロスドッキングとは?物流センターとのシステムの違いは?

クロスドッキング導入を試みる企業が増えています。本格的に導入を考えるのなら、仕組みやメリット・デメリットを把握しておく必要があります。

DCやPCとの違い

クロスドックのほかに、従来からもっとも多く用いられてきたオーソドックスな物流方式として「ディストリビューションセンター(DC)」があり、さらに、一部の特殊な商品の物流で活用される「プロセスセンター(PC)」もあります。

ディストリビューションセンターとは、仕入れた商品を在庫として倉庫内で管理し、オーダーが入ればその都度発送を行うというものです。在庫スペースに余裕があれば、常に需要よりも多めの商品をストックしておくことが可能なため、欠品の心配がありません。

プロセスセンターとは、「加工型物流センター」ともいわれ、肉や魚を加工してパック詰めや値付けなどの作業を行ったうえで、需要先に出荷する方式のことです。鮮度が重要な商品をまとめて一か所で加工することで、作業が効率化でき、需要先に届き次第すぐに店頭で販売できるメリットがあります。

クロスドック誕生の背景

続いて、クロスドックが多用されるようになった背景について、掘り下げて解説しましょう。

流通業界では、90年代から2000年代を通じて、大規模な規制緩和が段階的に推進され、同業界の業態は著しく変化しました。それに伴い、例えば、コンビニでもタバコやアルコールの販売が始まり、薬局は、いわゆる「ドラッグストア」という呼び名が定着するとともに巨大化が進むと、医薬品のみならず、食品やペット用品まで販売するようになりました。加えて、ホームセンターでは、工具や建築資材のみならず、日用品、動植物、電化製品など、幅広い商品が店頭を賑わし、大手家電量販店も家電以外の様々なアイテムを売るのが当たり前の光景となったのです。

さらに、近年、コンビニは全国で 60,000店に迫る勢いで増加し、スーパーマーケットは17,000店超、総合スーパー(GMS)とショッピングセンター(SG)の合計数も、2,500店を上回っています。

参照データ:日本ソフト販売株式会社/【2022年版】スーパーマーケット、総合スーパーの店舗数ランキング

そして何より注目すべきは、宅配数の増加です。とくに2008年にスマートフォンが誕生して以来、法人はもとより、個人のデジタルシフトも一気に加速し、eコマースの利用者が激増すると、2020年には、年間で約48億個超の宅配便と42億冊超のメール便取扱数をマークするまでに至りました。

参考データ:国土交通省/令和2年度宅配便取扱数について

これら一連の流れの中で、流通および物流業界における適切なサプライチェーンの連携と効率的な物流システムの構築が、必須課題となったのです。しかも、Amazonや楽天など大手ECサイトを中心とした、ヤマト運輸や日本郵便、佐川急便といった大手運送会社を巻き込んだ配送スピードのサービス合戦は、物流業界内で深刻なドライバー不足を招きました。

そこで、おびただしい数の商品を種類ごとに需要先のニーズに合わせてジャストインタイムで出荷できる「クロスドック」が導入されるようになったのです。これにより、仕入れ先から商品が届くと、物流センターでは開梱せずに検品と仕分けのみを行い、各出荷先のオーダーに適した積載量と台数のトラックをあらかじめ手配しておいて、積み替え次第即座に出荷することができるようになりました。

クロスドック導入のメリット

クロスドックを導入する物流とその周辺業界にとってのメリットについて、さらに詳しく掘り下げていきましょう。

コスト削減できる

クロスドックの場合、届いた荷物を在庫管理しないで済むので、在庫保管スペースや在庫管理のための人材が必要なくなります。とくに近年は商品の多様化が著しいため、例えば温度管理が必要な商品を、その特徴に応じて適切に在庫管理できる設備を完璧に整えるのは、物理的にも経済的にも至難の技です。そこで、クロスドックを導入すれば、その分のスペース代や設備費、人件費を削減することが可能となります。

またクロスドックは、あらかじめ出荷に必要なトラックの容量が把握できるので、大事をとってトラックを多めに手配する必要がなく、乗り入れ台数を最小限に抑えることができる点もコスト削減に寄与します。

在庫と倉庫スペースを減らせる

上記の様な理由で、在庫管理が不要になり、その分の物流倉庫スペースが必要なくなるため、人材やスペースを別の用途や目的に利用することもできるでしょう。

リードタイムが短縮できる

クロスドックを導入すると、届いた荷物を一旦在庫として保管し、オーダーが入ればピッキングするという手間や作業が省けるため、リードタイムを大幅に短縮できるメリットもあります。

IT化とDXが促進できる

クロスドックをスムーズに機能させようとすれば、すべての需要先が必要とする商品の種類やロット数、入荷希望日時や場所を正確に把握しなければなりません。さらにその情報を商品の供給元と共有し、それらを荷受けする時間、商品ごとの数量などを把握したり、集荷に訪れるすべてのトラックとの連携をはかったりするためのシステムの構築が不可欠です。

とくにこれからの時代は、これらのシステムを確立するために、AIやブロックチェーンの導入も視野に入れる必要があるでしょう。これによってIT化が大幅に進むだけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化と競争力の向上も期待できます。

クロスドック導入のデメリット

続いて、デメリットについて見ていきましょう。

仕入れ単価が高騰する

クロスドックの場合、需要先が必要とする数量分だけを仕入れることになります。よって、大量購入できない分、仕入れ単価が高騰してしまう可能性が高いです。

手数料収入が減る可能性がある

クロスドックを導入すると、需要先が必要とする分だけを仕入れることになります。よって、荷受けするロット数が減るため、契約先を増やすか値上げしなければ、商品を預かる際の手数料収入が減ってしまうリスクがあります。

出荷情報を取得するシステムの構築が必要になる

メリットの項で述べたように、クロスドック導入にあたっては、出荷情報を取得して、関係各社と連携できるシステムの構築が必須です。これは利点でもありますが、反面、そのための初期費用や、システムを維持管理するコストおよびその人材と人件費の確保が必要となります。

臨機応変の対応が困難

クロスドックは、商品の種類やロット数が細かく決められ、多めに入荷することがないため、基本的に在庫に余裕がありません。よって、商品の破損や遅延、誤入荷、災害によるサプライチェーンの停滞といったイレギュラーな事態が発生しても、代替品を用意するといった臨機応変な対応が困難です。

クロスドックまとめ

新型コロナウィルスの流行にともなって、もともと増加傾向にあった宅配需要がさらに拡大しました。しかも、便利さゆえにネット通販を利用するというより、生活のために必要に駆られてネット通販に頼らざるを得ないユーザーが劇的に増えたといってよいでしょう。

たとえコロナが収束したとしても、一旦生まれた新常態(ニューノーマル)が、完全に元に戻るとは考えにくいです。したがって、これからも物流に課される責任は、重いまま変わらないと考える方が、自然でしょう。

しかしその反面、ドライバーの高齢化や人材不足は極めて深刻なため、そう遠くない将来には需要と供給のミスマッチが方々で顕在化すると予想されます。ゆえに、一刻も早くその流れを阻止するソリューションが必要で、その一つとして「クロスドック」が注目されているのです。

スピーディーでタイムリー、しかも人材不足をカバーできる低コストな物流方式は、今後ますます需要が高まり普及していくと考えて間違いないでしょう。

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この記事の著者について

MOTOMURA物流編集部

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