倉庫・物流業務を委託したい方へ
波動が大きいといわれる物流業界。
『波動が大きい』=『通常通りには業務が遂行できない可能性が高い』ということを意味しますから、物流企業は波動をどのように乗り越えるか対応するため様々な対策が求められます。
特に問題となるのは繁忙期における波動対応ですが、繁忙期だけに照準をあわせ運営してしまうと閑散期の損失が大きくなってしまうことにもなります。
とはいえ、顧客のニーズに応え適切かつ安全に、納期に商品を届けることは物流企業にとって最重要課題。
本記事では物流波動とは何か、どういった要因で波動が起こるのか、波動対応が不十分だとどのようなリスクがあるのかお伝えし、波動対応としてどのような対策が取れるのか解説して参ります。
波動対応にお悩みの担当者様に是非お読みいただきたい内容となっておりますので、是非お目通しください。
目次
物流波動とは何らかの要因によって起こる物流量の変動
物流波動とは、様々な外的要因・内部要因により起こる物流量の上下動を「波」に見立て表現した言葉です。
波動が小さい=変動が少なく保たれている、波動が大きい=変動が大きいということになります。
物流波動を引き起こす4つの要因
物流波動は何らかの要因により起こるものと前述しましたが、波動の要因となる要素は1つではなく、複数の要因が組み合わさり波動を起こすこともあります。物流波動の要因となりうるものを以下にピックアップしました。
- 季節【クリスマス・お歳暮・お中元・年末年始など】
- 施策【セール・キャンペーン・新商品発売・広告など】
- 周期【週末・連休・年末年始のほか年などのサイクル需要】
- 時勢【情勢不安・増税・災害発生時など】
季節・周期・時勢のような外的要因は予測できる場合もあれば、災害時などのように予測不可能なものもあります。大震災のような災害もあれば、2019年に世界中に巻き起こった新型コロナのようなパンデミックも含まれます。
このように予測不能なケースもありますが、予測可能な大きな波動に対して企業は対応できるよう様々な対策を施していますが、それにより閑散期に遊び(無駄)が生じてしまうことも課題となっています。
波動対応が顧客満足度・生産性に直結する
大きな波動が起こることは物流企業にとって避けては通れない道ですが、この波動に対してリソース配分し、業務を遂行する「波動対応」により、顧客の信頼を損なう可能性もあります。
物流業務の質は顧客満足度に直結しますが、その裏では内部的に通常時とは異なる業務量で生産性が低下してしまっていることも。
このバラつきにどのように対応していくか、というところも含めて考えなくてはならないのが、波動対応の難しさではないでしょうか。
物流波動が現場に与える影響
物流波動が現場にどのような影響をもたらすか、という部分も見ておきましょう。
- 繁忙期に対応しうるリソースの確保にコストが嵩む
- 繁忙期に合わせた分閑散期の遊びが増えてしまう
- 配送遅延や誤出荷などトラブルが増加しやすい環境になる
- 無駄なコストが嵩むことで経営状態が悪化する
- 業務過多が続くと人材流出し波動対応がより厳しくなる
大きな物流波動がくることに全く備えない、ということは現実的にあり得ないでしょう。とはいえ、備えすぎてしまうと閑散期を含めた通常時の企業運営が健全に保てなくなります。
これは人件費だけでなく、作業スペースを広くとっておく、繁忙期に耐える倉庫スペースを確保する、対応しうるトラックを保有しておく、といったことも含まれます。
また、物流波動は特定の要因だけでなく作業時間帯によっても起こっているもの。例えば出荷が立て込む朝の時間帯がピークで、午後になると作業がなく従業員が手持ち無沙汰になってしまう企業もあるのではないでしょうか。
物流業務を担う上で最も避けるべき、配送遅延・誤出荷・誤配送といったトラブルが発生しやすくなるのも大きな物流波動の影響による場合が多いのです。
物流波動に対する波動対応が不十分になると起こるリスク
物流波動が現場に与える影響について解説させていただきましたが、続けて、波動対応が不十分になってしまうとどのようなリスクがあるのか見ていきましょう。
- 業務量過多による人材の流出
- 業務量過多でヒューマンエラーが増加
- 配送遅延・誤出荷・誤配送などトラブルの増加
- 顧客満足度の低下・顧客離れ
- ブランド力低下
- 利益減少による経営状態の悪化
波動対応が不十分になってしまうと、このように大きなリスクを抱えてしまう可能性が格段に上がります。
繁忙期にどのように対応するか、平準化(波を平均的に保つこと)できないか、閑散期にできる対応はないか、十分に検討しておくことが必要です。
固定概念が生み出す物流波動こそ自社内で予防できる波動
御社の日常を振り返ると、決まった時間帯、決まった日にちに必ず起こる物流波動はないでしょうか。
例えば朝、顧客のもとに商品を届けるため、多くのトラックに一斉に荷積みを行い出発する、というのは最早当たり前となっている光景の1つ。その分、忙しい朝の時間帯に対応しうる人材の確保が欠かせず、一斉に作業するための広い作業スペースも必要になりますね。
これは物流業界で当たり前のように昔から定例化している、「トラックを同じ時間に出発させる」という目的のもと起こっているロス。
「全てのトラックを同一時間帯に出発させなくてはならない」という固定概念を、一度切り捨てて考えてみると現状起こっている波動を1つ打ち消すことができる場合も多いのではないでしょうか。
これには顧客との交渉・調整が必須となってしまう部分も大きくありますが、同一時間帯に出発させないことで人件費の無駄・出荷スペースを縮小できるというメリットだけでなく、渋滞に巻き込まれにくくなるメリットも享受できる可能性もあります。
顧客の立ち位置からこのことについて考えていくと、「朝一番に部品がないのでは仕事にならない」という状況があるかもしれません。それであれば、前日のうちに翌日の部品が納入されていれば良いわけです。
生産業において、部品・材料は1つの取引先からだけ納入されるものではないでしょう。そうなれば顧客側でも朝一番の納入の受け入れを行うことで、作業が朝一に集中してしまう物流波動が起こっている可能性もあります。
納入するタイミングを見直すことで、双方が抱えている物流波動を打ち消すことができる可能性がある、ということも視野に入れ検討する価値はあるのではないでしょうか。
物流波動と人件費の課題
大きな物流波動がくる、その時に備えてリソースを十分に確保しておくというのは流通の一端を担う物流企業として必須と考えることもできますが、経営の観点からは現実的とはいえないもの。
特に大きな課題となるのは人件費ではないでしょうか。特に大きな波動が定期的に起こる企業にとって、最も対応が難しい部分でもあるでしょう。
とはいえ、物流業務の中には難易度の高いスキルを要する作業しかないわけではありません。
物流業務を担う企業を悩ませる課題である人件費問題も含め、有効な物流波動対策についても続けて解説させていただきますのでご覧ください。
物流波動に有効な9つの対策
物流波動が起こったときに備え、有効な9つの対策についてご紹介します。
- 倉庫・作業スペースの整理整頓を徹底する
- 作業効率を最適化するマニュアルを策定・徹底する
- 固定概念を捨て効率化・最適化する方法を模索する
- 予測しうる内部要因は現場にも事前に周知する
- 荷積みなど難易度の低い作業を単発バイトで賄う
- 従業員へ複数業務を担える教育を実施する
- 繁忙期に突発的なヘルプを依頼できる体制を整えておく
- WMSやハンディターミナルなど導入し作業効率化を図る
- 物流業務をアウトソーシングする
①~③については自社内の環境整備・作業効率化となる対策です。整理整頓と波動対策は一見結びつかないかも知れませんが、どこに何があるかすぐにわかるようにする、作業しやすい環境にすることで大幅に作業効率が向上するケースも多くあるのです。
また作業手順やポイントを含めマニュアル化し、徹底することで環境も整いやすく、人員の入れ替わりなどが起こっても教育がスムーズになります。
③については前述した部分と重複もありますが、「この仕事はいつもこうやっているから」「この時間にトラックを出発させないと」といった当たり前となっているものを切り捨て、フィルターを取り払い改善することができる部分も多くあります。こうした部分の見直しが社内だけでは不十分である、と感じられるのであれば、4PLといった外部業者に委託し、コンサルティング的観点から改善してもらうことも有効です。
セールやキャンペーンなどで繁忙期が予測されているにも関わらず、その情報が現場に伝わっていないことで混乱を招くこともありますので、④も重要です。
人件費に関わる⑤⑥⑦について、社内や協力会社に委託できるリソースがある場合には⑥⑦、それでも不足する場合には⑤、と柔軟に対応しうるルートを確保しておくことも波動対策として欠かせません。
倉庫内業務を正確かつ円滑にすることで波動による影響を少なく抑える、という観点から⑧もおすすめできる対策方法。ハンディターミナルは現場からリアルタイムに情報入力・編集でき、広い倉庫内で今どこでどのように扱われているか追跡することも可能で、顧客から問い合わせなどがあっても柔軟に対応することができます。
最後に記載した⑨について、自社内製することに限界を感じている、事業拡大を見据え今後さらに大きな物流波動が発生することも見込めているなどあれば、物流のプロに業務をアウトソーシングすることも有効策です。
単純に業務委託するだけでなく、先にもお伝えしたように現状を改善しうるコンサルティングも受けられる4PL、倉庫運営から任せられるフルフィルメントサービスを活用する、といったことも視野に御社にとって最善となる方法を模索していただくと良いでしょう。
まとめ
物流波動とは何か、大きな波動が起こったときに備えてどのような対策が有効かといったことなどお伝えしてまいりました。
物流波動が現場にどのような影響をもたらすか、波動対応が不足してしまうとどのようなリスクが生じるか、といったことも合わせてお伝えさせていただきましたが、物流業にとって切っても切り離せない物流波動。
御社にとって今後どのような対策が取れるか、それにより課題が十分に解決できるかご検討頂く指針となれば幸いです。