余剰在庫(過剰在庫)と滞留在庫、この言葉を見ると、同じものを指しているように思われるかもしれません。しかしこの2つの言葉は企業経営を圧迫する要因としては、似ているものの、別の意味を指しています。今回は、誤解されがちな余剰在庫(過剰在庫)と滞留在庫とは何か、また、経営を正常化するためのポイントや改善策を解説します。
目次
余剰在庫(過剰在庫)・滞留在庫とその違いについて
余剰在庫(過剰在庫)と滞留在庫の違いは、抱えてしまった在庫が「売れる見込みのある商品であるかどうか」です。
具体的にどのような在庫を余剰在庫・滞留在庫とするのか、それぞれ解説させていただきます。
余剰在庫とは、売れ残っている在庫のこと
まず、余剰在庫と過剰在庫は同じ意味になります。余剰在庫とは、今後売れる見込みはあるものの、現状まだ倉庫に保管されたままとなって保管期間がある程度かさんだ在庫を指します。余剰在庫となってしまう原因は、例えば花火や水着、スキー用品のようなシーズンによって需要が増える商品を、仕入れすぎたり生産量が多くシーズン中に売り切ることができなかったということが1つ挙げられます。その他には単純にシーズンに関係なく、需要を上回る数仕入れてしまったことにより余剰在庫となったものも余剰在庫となってしまいます。
滞留在庫とは、売れる見込みの立たない在庫のこと
滞留在庫とは、商品の梱包にダメージがあったり、賞味期限が近くなってしまったものなどを含めて、今後売れる見込みが立たない商品のことを指します。その他、例えば大きな流行を巻き起こしたアニメキャラクターグッズを大量に仕入れたものの、流行が廃れてしまったりしても滞留在庫と考えざるを得なくなることもあります。ワケアリ品として販売されるような箱潰れ商品、賞味期限切れ間近の商品、流行おくれとなってしまった商品などがこれに該当します。
余剰在庫と滞留在庫の違いは、売れる見込みがあるかどうか
余剰在庫と滞留在庫の違いは、売れる見込みが今後あるかどうか、という点ですので先述のアニメ関連グッズのように、線引きがあいまいなものも含まれてしまうため判断が難しい部分もあります。
シーズンもの等は、次のシーズンがくればまた販売機会もありますが、食品や流行ものに関しては時期によってより一層売れる見込みが立たなくなってしまいます。
どちらにしても、マーケティング戦略として市場動向調査をしつつ、需要に見合った供給ができるような仕入れ状況とすることで、余剰在庫・滞留在庫となるリスクを避けることはできます。また余剰在庫も滞留在庫も抱えてしまうと経営状況が悪化してしまう要因ですが、より対処が急務となるのは販売チャンスが少ない滞留在庫でしょう。
余剰在庫・滞留在庫を抱えるデメリットとは
余剰在庫や滞留在庫があると、どのようなデメリットがあるかまとめました。
- 資金繰りが厳しくなる
- 在庫管理コストが嵩む
- 倉庫スペースが有効活用しきれない
- 在庫の品質劣化
余剰在庫も滞留在庫も現金化ができておらず、またその見込みが現状立っていないものです。
そのうえ、在庫として管理するためにコストをかけなくてはならず、倉庫スペースにおいてはこのような在庫があることで、別の商品を保管するスペースがなく、スムーズに需要に見合った入庫ができない状況となってしまいます。在庫管理コストは嵩み、倉庫スペースは無駄になり、かつ保管している余剰在庫・滞留在庫の品質も劣化してしまうリスクもあります。
その結果として、思うように売れるであろう新しい商品をスムーズに仕入れ販売することが難しくなり、経営状況を悪化させてしまう要因となるのが余剰在庫、特に滞留在庫を抱えるデメリットといえるでしょう。
余剰在庫・滞留在庫を減らすためにできること
余剰在庫・滞留在庫が出てきてしまった時に、在庫数を減らすためにできることを見ていきましょう。
- 値下げして売り切ってしまう
- アウトレットストアに卸す
- 在庫処分業者に買い取ってもらう
特売・セールや、期限切れ間近のものだからということで値下げし、ワケアリ品価格で販売する方法は消費者心理面からも有効です。近年では食品ロスに対する対策として、廃棄しないで済むよう値下げされたものが売り場に陳列されることも多くなり、消費者目線でもそうした商品への抵抗感が薄れてきています。
また実店舗だけでなく、ECショップにセール品コーナーを設けて販売されていることも多く、有効な戦略となるのではないでしょうか。とはいえ、セール品を置くということはセール時期以外に頻繁に行ってしまうと、自社のブランド力を低下させてしまう要因になることもあり得ます。そうしたリスクを避けつつ、在庫を処分する方法としてアウトレットストアや、在庫処分業者に買取してもらうというのも手法の1つです。
在庫として抱え最終的に処分するよりも、少しでも資金化することで経営状況も改善されます。
余剰在庫・滞留在庫を抱えないためにすべきこと
余剰在庫・滞留在庫を抱えないためにしておきたいことをまとめました。
- 倉庫内の整理整頓を行う
- 在庫管理を適切に行い不要な在庫を抱えない
- 需要予測を適切に行う
- 在庫管理システムを導入する
倉庫内の整理整頓を行う
倉庫内が整理整頓できていないことで適切に在庫管理ができていないケースも多く、そうした理由で余剰在庫・滞留在庫になることがあります。例えば、倉庫内が煩雑としていて、在庫それぞれの保管場所を定めるルールもないとしましょう。どこにその商品が保管されているか、ピッキング作業の度に探し回る手間もありますが、売れ残ってしまうといつまでも残されたまま、その状況に気付いたときには既に廃棄しなければならない期限になっていたということもあり得ます。決められた場所にきちんと保管され、データ上も管理がされていればデータ上からでも、倉庫内でもすぐに在庫状況を確認することができます。決められた場所に適量の在庫をきちんと保管しておく、こうしたルールを徹底することで無駄に在庫を抱えない仕組みにもなるのです。
詳しくは、下記記事も参考にしてみてください。
» 5S活動の基本・目的・事例を詳しく解説|倉庫の在庫管理に導入するステップも紹介
需要予測を適切に行う
また余剰在庫・滞留在庫を抱えないためには製造ラインを適切に保つことはもちろんですが、在庫管理をしっかり行い、そのうえで需要予測に基づいた入庫ができるようにする、この流れが大切です。シーズンものなのに多く作りすぎてしまったり、流行が変わったあとも流行中と変わらない入庫を行うようなことがあっては、在庫管理が適切とは言えません。またスーパーなどの小売店でも、既に流行が終わってしまったアニメキャラクター関連グッズがまだ売り場を占拠していて、見ている顧客が皆無…という状況をご覧になった方も多いかもしれません。このように倉庫スペースだけでなく、売り場スペースまでも無駄な陳列が成されてしまう要因となることが無いよう対策が重要です。またこのような売り場があると、「このお店で今欲しいもの、目新しいものは見つからないだろう…」と顧客の消費意欲をそいでしまう要因にもなります。ですから、在庫管理だけでなく、市場動向の調査を行った上で需要予測をすることが重要なのです。
余剰在庫・滞留在庫対策には在庫管理システムの適切な運用も有効
大きな流行でも思った以上に早いスピードで廃れてしまう現代ですが、そうした市場動向を掴みやすくするため、AIを使った需要予測を取り入れたり、需要予測ができる在庫管理システムを導入している企業も増加しています。この方法では設備投資がかかってしまうと懸念されるかも知れませんが、企業規模にあわせた在庫管理システムも選べる時代になっていますのでまずは検討されてみることをおすすめします。
» 在庫管理システムの基本を紹介|メリット・デメリットやフリー版の賢い使い方も紹介
まとめ
余剰在庫・滞留在庫それぞれどのような在庫を指すのかまとめてまいりました。
それぞれの違いは「売れる見込みがあるかどうか」にある点もご理解いただけたでしょうか。
どちらに関しても、経営を圧迫してしまう要因となること、抱えてしまった在庫はできるだけ早期に対処すること、また余剰在庫・滞留在庫を抱えないためにできることなどもお伝えしました
本記事でお伝えした情報を皆様の経営戦略に役立てていただけましたら幸いです。