国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、17の分野で目標が構成され、国や企業、個人などを超えて取り組む目標とされています。その中には物流も含まれます。
同目標は、2030年までの達成を目指しており、物流業界も長期的な視点に立った効率化が求められます。しかし、物流のサステナビリティについて内容がわからないと取り組みにくいのではないでしょうか。物流サステナビリティの追求をすると、労働環境の改善や企業イメージアップにつながります。
ぜひこの記事を参考にして、サステナビリティの追求に役立ててください。
本記事のポイント |
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倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
物流のサステナビリティとは無用な負荷をかけずに荷物を運ぶこと
物流のサステナビリティの概要を以下の流れで解説します。
- 物流のサステナビリティとは
- 物流総合効率化法
- 「ホワイト物流」推進運動
それぞれ解説していきましょう。
1. 物流のサステナビリティとは
物流のサステナビリティとは、環境、社会、経済的に無用な負荷をかけない方法で荷物を運ぶ取り組みです。具体的には、以下の4つの取り組みがあげられます。
- 排出物や廃棄物の最小化
- 省エネルギーや省資源の輸送方法の採用
- 地域社会との協調
- 労働環境や人権の尊重
これらを実現するため、国内では物流総合効率化法が施工され、「ホワイト物流」推進運動が実施されています。
つまり、従来の利益のための効率重視ではなく、ムダなエネルギーをかけずに荷物を運ぶ方法を選ぶようにすると、物流のサステナビリティを高められます。
2. 物流総合効率化法
2005年に施行された物流総合効率化法は、物流業務の効率化を目指す事業への計画の認定や支援などを定めた法律です。
- 計画が認定されると、以下のようなメリットがあります。
- 倉庫の法人税や固定資産税の減免
- 都市計画税の減免
- モーダルシフト等の取り組みへの経費や運行経費の補助
同法により、許認可が一部緩和されたり、複数の企業が共同で物流センターを保有したり、配送を共同化したりができるようになりました。
また、労働環境の改善や資材の削減にも取り組めます。
3. 「ホワイト物流」推進運動
「ホワイト物流」推進運動とは、長時間労働が多い物流業界の労働環境の改善を目的とした運動です。
具体的には以下の2つの目的があります。
- トラック輸送の生産性の向上と物流の効率化
- 女性や60代の運転者なども働きやすい労働環境の実現
上記の目的を達成するには、業務全体の見直しや負荷が軽減できる仕組みが必要です。
そのための取り組み例をあげると、以下のとおりです。
- 予約受付システムの導入で荷待ち時間の削減
- パレットや台車の活用による荷役作業の負担軽減
- 情報共有による納品先企業の入荷受け入れ態勢の構築
以上のような取り組みで、荷待ち時間や労働時間の短縮を実現できれば、ドライバーの確保やなり手が増えていくでしょう。
2023年現在で賛同企業は1500社以上になっています。
物流のサステナビリティの追求方法3選
物流のサステナビリティの追求方法は企業ごとに異なります。
この章では、物流のサステナビリティの追求方法を3つ紹介します。
- ハイブリッドトラックの導入
- 環境負荷低減製品の使用
- トラックの予約システムの導入
それぞれ確認していきましょう。
1. ハイブリッドトラックの導入
ハイブリッドトラックは、物流業務におけるCO2排出量の削減になり、従来のトラックよりも消費する燃料を節約できます。以前は、トラックのような大型車でハイブリッド仕様のモデルは開発が困難でした。
しかし、現在では技術開発が進んで、トラックでもハイブリッド仕様が開発されて販売されています。また、企業イメージアップの効果も期待して、ハイブリッドトラックを導入する企業もあります。
2. 環境負荷低減製品の使用
荷物の梱包や固定の際に使用する緩衝材やバンド、フィルム類を環境負荷が少ないものへ入れ替えるのもサステナビリティの追求になります。
- 生分解性プラスチックを使用した緩衝材
- 再生紙を原料にした粘着テープ
- ペットボトルを原料に使ったリサイクルバンド
- 古紙をリサイクルした段ボール
上記の製品を使用すれば、CO2排出量の削減に貢献ができます。また、排出される廃プラスチック類を業者に依頼して、燃料にするサーマルリサイクルにも取り組むこともできます。
以上のことから、環境負荷の少ない梱包資材の使用と、処分の仕方を適切に選べば、環境配慮の取り組みになります。
3. トラックの予約システムの導入
トラックの予約受付システムを導入して、円滑な荷受け作業の効率化、トラックの待機時間の短縮ができます。トラック予約受付システムとは、ドライバーや発送元が物流拠点や倉庫に到着時刻をスマートフォンなど携帯端末から事前に予約するシステムです。システムの導入により、以下のようなメリットがあります。
- トラック到着時間の分散
- 計画的な荷受け作業の準備
- ドライバーの長時間待機の解消
結果、トラックの稼働率が上昇し、ドライバーの労働環境が改善します。また、荷物を受ける倉庫内のオペレーションも組みやすくなり、作業効率が上がります。
日本では、トラックの輸送が国内貨物の半分以上を占めているものの、トラック予約受付システムを導入した企業は、全体の1/4程度と半分以下と課題が残ります。しかし、トラック予約受付システムを導入した企業の継続利用率が90%以上とされているため、効果は高いといえるでしょう。
サステナブルな物流の取り組み事例3選
物流のサステナビリティの取り組みは様々です。この章では、サステナブルな物流の取り組み事例を3つ紹介します。
- 大型トラックにトレーラを連結させ輸送効率を向上
- モーダルシフト(鉄道輸送)の積極利用
- 貨客混載を利用して地域経済に寄与
それぞれ説明します。
1. 大型トラックにトレーラを連結させ輸送効率を向上
ヤマト運輸は、一回の輸送量を高めて輸送効率を向上させるダブル連結トラックの導入を進めています。
ダブル連結トラック「スーパーフルトレーラSF25」は、大型トラックにトレーラを連結して、車両長が25mと長いものの、2倍の輸送量を実現できたモデルです。
2023年現在では、西濃運輸や日本通運、日本郵便が導入しています。
従来は、通行経路が制限されており、使い勝手がよくありませんでした。しかし、2022(令和4)年11月8日に国土交通省は、ダブル連結トラックの主な通行経路となる区間を2,050kmから5,140kmへ拡充すると発表。ダブル連結トラックの必要性が高まれば、さらに拡充される可能性が高いです。
2. モーダルシフト(鉄道輸送)の積極利用
佐川急便は、預かった荷物の一部を鉄道輸送に切り替えて、異業種共同によるモーダルシフトを2017年9月下旬から開始しました。
トヨタ輸送株式会社が運行する「TOYOTA LONGPASS EXPRESS」に東北エリア充ての荷物を載せて輸送しています。
「TOYOTA LONGPASS EXPRESS」は、トヨタ自動車の製品を運ぶため、名古屋 〜 盛岡まで1日2往復運転される専用の貨物列車です。この異業種共同により、500km ~ 1,200kmほどのトラック輸送を短縮、排出するCO2の削減やトラックドライバーの労働時間の短縮につなげています。
他にも、はこビュンという新幹線による列車荷物輸送サービスの輸送トライアルが実施されるなど、2024年問題とも相まって物流に鉄道の利用も本格化してきています。
3. 貨客混載を利用して地域経済に寄与
ヤマト運輸やJAは、バスやタクシーを使って荷物を輸送する貨客混載便を利用しています。道路運送法の第82条で、バスやタクシーは350kg未満の荷物であれば運ぶことが可能でした。その条件を一部変更して、350kg以上の荷物を運べるようになりました。少量の荷物を運ぶのにトラックを走らせるのではなく、目的地の近くを走るバスやタクシーに載せて燃料費と人件費を節約します。
ただし、貨客混載は条件があり、過疎地域に限られています。しかし、地域経済とインフラ維持のために重要な役目を担い、貢献ができます。
ムダを省いてサステナビリティの高い物流を目指す
国際社会が2030年までに持続可能な開発目標の達成を目指し、物流業界も長期的な視点に立った効率化が求められています。
開発目標のためだけではなく、国内の労働力不足や環境負荷の低減への対応も含まれます。したがって、利益を追求した効率ではなく、社会全体のためになる効率を求めれば、物流のサステナビリティを追求できるでしょう。