いつでも必要なものが手に入る私たちの暮らしを裏側から支える物流ですが、倉庫業もその一部として重要な役割を果たしています。
倉庫業とは、預かった物品を倉庫に保管する業務を指します。原材料、製品、冷凍・冷蔵品、危険物など様々な物品を保管します。特に他人から委託を受けて物品を保管する倉庫は、営業倉庫として倉庫業法に基づく登録を受ける必要があります。
今回は、倉庫業についてわかりやすく解説するとともに、倉庫業を営む上で知っておきたい倉庫の種類や大分類、倉庫業法についてご紹介します。
倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
倉庫業とは
倉庫業とは、荷主から委託をうけ、荷物を適切に保管・管理する業種・業務を指します。2002年までは公益性の高さゆえ許可制が採用されていたものの、物流業務効率化・競争力の向上を目的として、登録制へと変更されました。
倉庫業を担う企業として登録するには、倉庫業法にのっとり、運輸局を通してメールなどで申請を行う必要があります。
倉庫業と非倉庫業の違い
倉庫業として登録が必要な倉庫については、倉庫業法(昭和31年6月1日、法律第121号)に定義されています。つまり定義に該当しない場合は、非倉庫業として登録は必要ありません。
具体的には、「他人の物品を保管するもの」「寄託契約が存在するもの」かつ、下記の条件に当てはまらない場合に営業倉庫として定義されます。
- 有価証券、貴金属その他の物品の保護預かり(銀行の貸金庫)
- 営業に付随して自ら行う当該特定物品の保管(クリーニング、修理業など)
- 特定の一時預かり(コインロッカー、駐輪場、駐車場など)
倉庫業4つの大分類
倉庫業で定義される倉庫は「営業倉庫」と呼ばれます。営業倉庫として代表的な4つの大分類を紹介いたします。
- 普通倉庫業
- 水面倉庫業
- 冷蔵倉庫業
- トランクルーム
それぞれどのような物が保管できるのか、またどのような施設なのか詳しく見ていきましょう。
普通倉庫業
4つの大分類の中でもっとも一般的な形態にあたるのが、この普通倉庫業です。一般的に倉庫業とだけ表現される場合のほとんどが、この普通倉庫業を指しています。
保管できる商品により、普通倉庫業が扱う倉庫は6つに分類されていますので、続けてご覧ください。
倉庫業法上の普通倉庫の6つの分類
普通倉庫業を営む業者が保有する倉庫は、以下の6つに分類されます。それぞれに保管できる製品の一例も合わせてご確認ください。
- 1類倉庫(一般雑貨など)
- 2類倉庫(水産物の塩蔵品や乾品・穀類・飼料・ガラス器・缶入製品・原木・ソーダ灰など)
- 3類倉庫(板ガラス・農業用機器・陶磁器・アルミインゴッド・原木)
- 野積倉庫(アルミインゴッド・原木・ドラム缶に入れた物品)
- 貯蔵層倉庫(容器に入れていない液状・粉状のもの)
- 危険品倉庫(ガソリン・灯油・油性塗料・高圧ガス)
水面倉庫業
原木のように、乾燥してしまうと割れやヒビなどで品質が劣化してしまうものを保管することを目的としているのが、水面倉庫業が運営する水面倉庫です。
保管対象の荷物をそのまま水に浮かべて保管するもので、かねてより山で伐採した原木が乾燥して割れるのを防ぐため、河川を利用して運び、海に浮かべて保管していた名残で現存している保管方法でもあります。
水面倉庫業を営む場合には、その他の倉庫業と異なる特長的な運営条件が定められていますので、続けて解説させていただきます。
水面倉庫運営に求められる条件
水面倉庫を運営するには、以下の3つの条件が必須と定められています。
- 築堤や工作物で保護されたスペースであること
- 水害などで荷物の流出を防げる対策がとられていること
- 照明装置が設置されていること
冷蔵倉庫業
冷蔵倉庫業とは、冷凍食品・畜産物・水産物・農産物など、10度以下で冷蔵・冷凍保管することが必須となる商品を保管する倉庫業です。
野菜のような生鮮品の保管は0度前後が多いですが、冷凍食品などは更に低い温度で保管することが必要になりますから、保管するものにより求められる設備が異なります。
トランクルーム
トランクルームは、一定の基準をクリアした施設・設備を保有し、消費者に有利な内容を有するトランクルーム約款を定めた上で、個人消費者の物品保管に倉庫を供する倉庫業を指します。
物流の一端を担う他の倉庫業とは異なるものの、他と同様に倉庫業法にのっとり登録が必要な倉庫業の1つです。
倉庫業のサービス・業務内容一覧
倉庫業のサービス・業務内容は、倉庫業毎に異なる部分もありますが、普通倉庫業の一般的な業務内容を例にご紹介させていただきます。
検品
荷受けした商品の数量・種類に間違いがないか、初期不良などの確認も含めて検品する作業です。
入庫
商品を在庫として管理・保管するため所定の場所に保管する作業を入庫作業といいます。ここで数量確認ミス・保管場所ミスなどが起こってしまったことで、この後の工程の作業効率が低下してしまうこともあります。
保管
商品ごとに適した状態・環境で保管・管理します。温度管理なども必要な倉庫においては、適宜温度設定の確認なども重要な作業となります。
流通加工
出荷する商品の商品価値を高めるための加工作業、包装・ラッピング・組み立て・値札付けなど荷主の希望する加工作業を行う作業です。
ピッキング
出荷指示がでた商品をりストを参考に、保管場所から取り出す作業をピッキングといいます。入庫作業時に間違った場所に保管してしまっていた、在庫数量の確認にミスがあった、などあるとピッキング作業効率は格段に落ちてしまいます。またピッキング効率が悪いと納品が遅れてしまったり、無駄にコストが発生してしまう原因となります。
仕分け
ピッキングされた商品を配送先・配送ルートなど条件によって仕分ける作業を行います。
出庫
仕分けされた商品を梱包し、配送先ごとに所定のトラックに積み込む作業を行います。またこの際、出荷内容に間違いがないか検品する作業が漏れやミスがあると、誤配送・誤出荷などのトラブルになってしまいます。
倉庫業を運営するなら知っておくべき倉庫業法とは
倉庫業を運営するにあたり、知っておかなくてはならないのが「倉庫業法」という法律であるとご紹介しました。
自家用倉と異なり、他社の荷物を保管・管理することを目的として運営する「営業倉庫」である以上、倉庫業法に基づき営業ルールを定め、荷主の利益を守る・トラブル抑止を目的として倉庫業法があります。
倉庫業法については別記事倉庫業法とは?貸し倉庫を営むために必要なことや罰則規定も詳しく解説!で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
営業倉庫と自家用倉庫の違いについて
営業倉庫は倉庫業法で定められ様々な条件をクリアしなければ、運用することはできません。また倉庫の種類によってもクリアすべき条件は異なります。
また営業倉庫は自家用層とは異なり、荷物を安全に保管できる環境(耐震性・耐火性・火災対策・水濡れ対策など)を整えていることは必須で、火災保険への加入も必須となる点も、自家用倉庫との違いです。
倉庫業を営む事業者は国土交通省に、自社で定めた約款をもって届け出を行い、有事の際には荷主との契約の有無に関わらず約款に基づいた対応を行うことも必須となります。
届け出をせず営業倉庫を運営すると懲役もしくは罰金(双方もあり)が課せられる
国土交通省への届け出が必須である営業倉庫ですが、届け出をせずに運営してしまった場合は法律違反となり、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(両方の場合も有)」が科せられます。
登録されていない状態で、登録済みであると表記したり、そう認識させてしまうような表記をすることも同じく法律違反とみなされ、「50万円以下の罰金」が課せられるケースもあります。
倉庫業法で倉庫業者には保管責任が課せられている
倉庫業法により、約款は荷主に有利な内容を有するものでなくてはならない、と解説しました。荷物の保管責任は倉庫業者にあるもの、と倉庫業法で定められておりますので、万が一にもトラブルが起こった場合には、その一切の責任を倉庫業者が負うものということも認識しておかなくてはなりません。
倉庫業法により倉庫業を営めない事業者の条件
倉庫業を営む場合、役員、株式会社の場合は取締役・監査役が以下の条件(欠格事由)に合致していないことが必須、と倉庫業法で定められています。
以下2点が欠格事由です。
- 1年以上の懲役・禁固刑となり執行終了したが、2年経過していないもの
- 倉庫業としての登録を取り消されたあと、2年を経過していないもの
倉庫業を営む場合に満たすべき施設設備基準
倉庫種類により満たすべき施設設備基準は異なります。ここでは一類倉庫の施設設備基準を例として、表にまとめましたのでご確認ください。
項目 | 基準など |
---|---|
使用権限 | 倉庫・敷地の使用権限を有している |
関係法令適合性 | 建築基準法・その他規定に適合している |
土地定着性 | 地面に定着している倉庫で、屋根や壁を有している |
外壁・壁の強度 | 国土交通大臣の定める基準を満たしている |
防水・防湿・遮熱・耐火性能 | 国土交通大臣の定める基準を満たしている |
災害防止措置 | 危険品を扱う施設に近隣する場合には特定の災害対策済みであること |
防火区画 | 火気を扱う施設がある倉庫の場合、火気を扱う施設を区画できていること |
消火設備 | 消火器などを設置している |
防犯措置 | 防犯対策がとられている |
防鼠措置 | 鼠害防止策がとられている |
倉庫業を営む場合に必須の倉庫管理主任者の4つの条件
倉庫業を営む場合には、原則1倉庫につき1人の倉庫管理主任者を選出しなくてはなりません。倉庫管理主任者には以下の4つの条件をクリアすることが必須となります。
- 倉庫管理業務で指導監督的実務経験を2年以上有するもの
- 3年以上の倉庫管理業務の実務経験を有するもの
- 国土交通大臣が定める講習を修了しているもの
- 欠格事由に該当しないこと
まとめ
倉庫業を営むためには、申請者(会社形態により役員や取締役)だけでなく、倉庫管理主任者が欠格事由に該当せず、定められた条件をクリアしており、倉庫業法に基づいた登録ができていることが必須です。
また、お伝えしてきたように倉庫の種類により保管できる商品が異なり、また施設整備に求められる基準も異なる点も留意してください。
倉庫業には4つの大分類があること、また保管できる商品の違いにより、詳細な分類があるものもあることなどもお伝えした通りです。様々な細かい規定などもありますが、登録せずに運営すれば懲役や罰金が課せられることもある倉庫業法についてもしっかりとご理解の上、運営していただくことが重要である点もご注意いただき、運営していただければ幸いです。