物流担当者が知っておくべき!
アウトソーシングで期待できる導入効果とは
物流に強く求められているのは、生産したり荷主から預かったりした商品を、いかに迅速かつ正確に、そして傷つけずに消費者のもとに届けられるかということです。もちろん、これらのミッションを低コストで実現することが大切なのは、言うまでもありません。
そこで必要となるのが、物流業務の効率化です。効率化とひと言にいっても、各工程で実にさまざまなアプローチの仕方が考えられますが、本記事では、自動ピッキングカートや自動倉庫などを導入して効率化に成功した事例を3つに絞ってご紹介します。
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「AI自動ピッキングカート」により検品ミス解消・省人化・コストカットの成功!
正確で迅速なピッキングと検品は、物流業務の中でもっとも神経を配る必要がある重要業務の一つです。しかし、人中心の作業では、どうしてもミスが生じ、手慣れた社員に属人化しやすい傾向があります。荷主や消費者に損失を与えるのはもちろん、コストと時間がかかるため、とても非効率といえるでしょう。そこで、最初は「AI自動ピッキングカート」の導入で、検品作業の効率化に成功した「ケイヒン配送株式会社(神奈川県横浜市)」の例をご紹介しましょう。
ケイヒン配送株式会社は、通販会社や小売業者の物流業務を受託しており、とくに化粧品や雑貨を扱うクライアントの出荷業務を効率化させる必要性に迫られていました。
具体的には、人頼みの作業により誤ピック、誤出荷が起きたり、ピッキング後、梱包に移る前に検品しなければならなかったりする点が、改善課題でした。
そこで寺岡精工(東京都大田区)の「高精度採寸計量スケール SPK」と「AI自動ピッキングカート」を導入。
「高精度採寸計量スケール SPK」により、商品の形状、重量、画像をデータ化すると、その情報を「AI自動ピッキングカート」に提供、オーダーが入るとカートに搭載されたタブレット画面に、ピッキングすべき商品の名前やコード、棚番号、数量、商品画像、バラとボールの別などが表示されます。
その情報にしたがってピッキングし、カート上のオリコン(折り畳み式コンテナ)に商品を入れます。オリコンは、同時に4つまでセット可能(4件のオーダーに同時対応できる)で、それぞれの下に計量器が設置されています。商品画像がポップアップで確認できるうえ、「高精度採寸計量スケール SPK」からの重量データと照合することで、商品をオリコンに投入すると同時に検品が済むという仕組みです。商品名やコードを目視だけでチェックするとミスの原因となりやすいですが、画像で確認できるうえ、グラム単位で正確に重さを把握できるので、ピッキングエラーの確率は極めてゼロに近くなるのです。しかも万が一ミスがあれば、その先の作業は強制的にストップするため、100%ピッキングミスが防げます。
さらに、AIが最適なピッキングルートを常時計算のうえ、オンラインで各カートに指示を出すので、通路が混んで渋滞するとか、同じルートを何度も行き来するといった無駄な移動が省けます。
これらによって、ピッキングミスの解消、ピッキング作業の時短や省力化、検品作業の省人化、時短が、劇的に実現しました。
TMS(輸配送システム)導入でLNGの高効率な配送に成功!
トラックをジャストインタイムで無駄なく手配し、高い積載率で迅速に配送できれば、物流業務は大幅に効率化できます。そこで、TMS(輸配送システム)を導入して配送の効率化に成功した「株式会社シーエナジー(愛知県名古屋市)」の例を見てみましょう。
株式会社シーエナジーは、中部電力グループの総合エネルギーサービス企業で、とくに-165℃に液化し、体積を気体時の1/600に圧縮して運搬しなければならないLNG(液化天然ガス)の効率的な配送が、長年の課題でした。具体的には、愛知、三重、新潟の3県の出荷基地の、どこから、どれくらいずつ、どのクライアントに届けるのがもっとも効率がよいかを、短時間のうちに探り当てるのが、鍵でした。
120か所のクライアントに年間30万tにものぼるLNGを90台のローリー車を使って配送するための輸送計画は、担当者が1日かそれ以上かかってやっと作成できるという、非常に複雑で手間のかかる作業でした。よって、一部の社員にしかこなせない属人的業務の最たるものだったのです。そこでシーエナジーは、NEC(東京都港区)の「ULTRAFIX」というTMS(輸配送システム)を導入しました。
「ULTRAFIX」は、基地と配送先の位置情報、ローリー車の車種情報、運搬量等の情報を入力し、車の台数、積載率、配送にかかる時間といった項目に優先順位をつけると、その条件にしたがってAIが最適化した輸配送パターンを提案します。担当者は、優先する条件や入力情報を入れ替えて、さまざまなパターンをシミュレーションしながら、それらの中から状況にもっとも適した計画に絞っていきます。
これにより、丸一日以上かかっていた配送計画業務時間は、44%も削減でき、余った時間を、顧客ニーズの掘り起こしという重要業務に充てることができるようになりました。毎日ひっきりなしに続く膨大な作業を約半分にカットできた功績は、極めて大きいといってよいでしょう。
自動倉庫と移動ラックで冷凍倉庫の省人化・時短に成功!
物流の世界では、人が作業するには過酷な現場がいくつもあります。その一つが冷凍倉庫です。最後は、-25℃という環境下に自動倉庫を完備して、効率化と省人化に成功した「森本倉庫株式会社(兵庫県神戸市)」の例をご紹介しましょう。
物流倉庫を運営する森本倉庫株式会社は、とくに冷凍倉庫での作業環境が過酷ゆえ、先は今よりも労働不足が進むと予測し、労働者の安全を確保するためにも倉庫の自動化、無人化を目指していました。
導入したのは、IHI(東京都江東区)の「自動倉庫」と「移動ラック」です。自動倉庫は、天井までのスペースをフル活用するラックとクレーンが一体化しており、だれでも簡単にタッチパネルやバーコードリーダーで操作できます。
パレットに積みつけた冷凍品をトラックから降ろすと、フォークリフトでそのまま運んで自動倉庫の入庫レーンに直接セッティングします。荷物が倉庫スペース内に自動で運ばれると、専用の台車が迎えにきます。台車に乗せられた荷物は、トラス状に組み立てられた天井の高さまであるラックの指定場所に運ばれ、パレットごと格納されます。荷物は必要に応じ、遠隔操作によってパレットごと自動搬出されるので、フォークリフトでトラックに積み込むと、そのまま配送できます。
ちなみにこの時、排出された荷物を、どこから積み込めばよいかが分かるように、荷物の出口上部の電光掲示板にトラックバースの位置情報が表示されます。これにより作業者は迷いなくすみやかに積み込み作業が行えます。パレット単位では多すぎるという場合でも、その一部を取り出し、残りは再度自動倉庫内に戻して保管しておく、という使い方も可能です。
また、小口の冷凍商品については、別スペースに移動ラックを設置。ラックを移動させれば、好きな位置に通路を作って荷物の位置までフォークリフトで簡単にアクセスできます。
従来は、冷凍商品を倉庫の奥から引っ張り出して出荷するという、非常に負担が大きな作業が強いられていました。しかし導入後は、オペレーション一つで、正確かつスピーディーに自動出庫できるようになったため、省人化、省力化が大幅に進んだだけでなく、棚卸時間の短縮により、取引先からも大変喜ばれているとのことです。
まとめ
今回ご紹介したのは、物流業務効率化のほんの一例にすぎません。
効率化は、ただ先進的な機械やロボティクスを導入すればよいわけではありません。あまりに高額すぎると、かえって経営を圧迫しかねないばかりか、現実離れしすぎたシステムは、社員が使いこなせず、結局人頼みのアナログなやり方に逆戻りする、という皮肉な結果で終わることもありえるからです。
物流の効率化成功のためには、問題点を明確にし、それが確実に解消できるシステムを探し出して、予算を考慮しつつ自社の環境に最大限マッチしたかたちで導入する必要があります。広く情報を収集し、実用性に富んだベストの選択ができるように努めましょう。