現在の物流業界が抱える課題とは?問題解決の策も紹介!

コロナ禍による個人向け配送の増加や燃料費の高騰により、人手不足や労働環境の悪化など、物流業界が抱える課題が浮き彫りになってきました。

本記事では、現在の課題と合わせて、物流システムの導入やアウトソーシングなど、課題解決に効果的な方法も紹介します。また、DXやドローンなど今後取り組むべきことについても考察します。

物流業界の現状とは?

コロナ禍は物流業界にも大きな影響を及ぼしましたが、以前と比べどのような変化があったのでしょうか。以下にくわしく説明します。

コロナの影響による国際物流の低迷

2020年度の矢野経済研究所の調査では、2020年度の物流17業種の総市場規模は、前年度に比べ0.8%減少し、20.2兆円の見込みとなりました。これは、新型コロナウィルスの影響で、国際物流関連市場の規模が大きく縮小したことや、店舗などの営業自粛により法人向け物流が停滞したことなどが原因と考えられています。一方、ネット通販や巣ごもりの影響で、個人向け配送や店舗配送が堅調であったため、全体としては微減にとどまりました。

一方で、2021年度の物流17業種総市場規模は前年度比7.7%増の21.5兆円の見込みとなりましたが、これは輸送運賃の高騰に因る部分が大き意図されています。

個人向け配送の需要拡大

近年はスマートフォンの普及により、誰もが手軽にネット通販やフリマアプリを利用できるようになったことなどから、個人向け配送の需要が拡大しています。

経済産業省が実施した「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、平成30年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)は18.0兆円で、前年度の16.5兆円より8.96%上昇、BtoB-EC(企業間電子商取引)は344.2兆円で、前年度の318.2兆円より8.1%上昇と、ともに市場規模を拡大しています。

また、国土交通省が発表した「平成30年度 宅配便取扱実績について」でも、平成30年度の宅配便取扱個数は前年度より約1.3%増加しており、そのほとんどがトラック輸送です。このことから見ても、ここ数年はネット通販などによる個人向け配送が増えていることが分かります。

物流業界が抱える課題

では、現在の物流業界はどのような課題を抱えているのでしょうか。以下でくわしく解説します。

個人向け配送に関する要求が複雑化

競争が激化しているECサイト業界では、即日発送や送料無料など、配送にまつわるスピードや価格で他と差別化しているところも少なくありません。また、細かい時間指定ができるのも今や当たり前になっています。

しかし、小口の荷物を各所へスピーディーに、かつ時間通りに届けるためには、荷物の手配や積み方、ルート選定に工夫が必要で、その分配達員の負担は増えることになります。また、不在で再配達になることも多いですが、追加料金を徴収できないのが現状です。再配達は配達員の負担を増やすだけでなく、ガソリンや在庫管理などのコストもかさみます。ただでさえ個人向け配送は利益が少ないため、今後こうした問題をどう解決するかは大きな課題です。

労働環境の悪化が深刻化

個人向け配送の主要な輸送手段であるトラック業界は、慢性的な人手不足です。国土交通省が2019年に発表した「物流を取り巻く現状」によると、「トラックドライバーが不足している」と答えた企業の割合が2018年には70%にものぼり、調査を始めた2013年より24%も上昇しています。

その原因としては、個人向け配送の複雑化などにより配達員の負担が増え、給料のわりに激務であることや、少子高齢化で若い労働力がなかなか入らないことなどが考えられます。労働環境の改善はトラック業界だけにとどまらず、物流業界全体に共通する課題です。

2017年以降、現状を改善すべく大手配送業者が相次いで配送料の値上げを実施しましたが、現段階で労働環境が劇的に改善されたとは言えません。さらに、2024年にはトラック運転者へ時間外労働の上限規制が設けられます。配達員の労働環境改善にはつながりますが、さらなる人手不足に陥る可能性もあるため、どう対策を打つかは業界全体が考えていく課題と言えるでしょう。

燃料高騰による配送料金の値上げ

さらに物流業界は、燃料費についても課題を抱えています。ガソリンの原料である原油の価格は世界情勢によって左右されやすく、常に高騰するリスクがあるからです。

燃料費が高騰すると、それに応じて配送料金を値上げする必要がありますが、消費者からの反発が強く、上げにくいのが現状です。しかし、配送料金を据え置くとその分会社の利益が減り、配達員の労働環境も悪化します。時勢によって変化しやすい配送料金の価格をどう設定するかは、物流業界が抱える悩みの種の一つになっています。

物流業界が行うべき課題解決法

では、上記で紹介したような課題について、現状どのような解決法があると考えられているのでしょうか。

物流システムの導入

これまでアナログ作業が多かった物流業務ですが、物流システムを導入し、輸送、保管、荷役、包装、流通加工の5つの工程を一元管理することで、大幅な業務効率化が見込めます。

WMS(倉庫管理システム)やTMS(配送管理システム)の導入など、ITを使った物流業務の効率化は、スマートロジスティクスと呼ばれています。スマートロジスティクスを活用すれば、配車ルートの最適化や荷物のリアルタイム追跡が可能になります。現場の負担が軽減されるため、労働環境や人手不足など物流業界が抱える課題の多くは改善されるでしょう。

また、細かな配送の要望にも応えやすくなるため、顧客満足度も向上すると考えられます。

物流アウトソーシングの活用

課題の解決策として、物流アウトソーシングを活用するのも、選択肢の一つです。自社で一から物流システムを構築するには高いコストがかかりますが、あらかじめ整備された外部のシステムを利用することで、物流コストを削減できます。また、個人向け配送の増加に伴う在庫管理や、複雑な配送要求への対応も外部にサポートしてもらえるため、自社の負担も軽減できます。

業務を効率化した分、労働力を商品開発やマーケティングなど別の業務に回せば、企業の成長も期待できるでしょう。

物流拠点の見直し

燃料高騰のリスクがある中、配送コストを下げるために効果的なのが、物流拠点の見直しです。物流拠点を増やせば長距離の運送が少なくなるためコストを抑えられますが、初期費用がかさむため慎重に検討する必要があります。

コストを抑えながら少ない拠点で全国配送に対応するには、首都圏や東海地方に物流拠点を設けるのがベストな方法です。しかし、自社で拠点を移すのが難しい場合は、それらの地域に拠点を持つ外部の物流サービスを利用するのもいいでしょう。

また、在庫を置く倉庫についても、アウトソーシングの利用を選択肢に含めた見直しを行うと、より効果的に効率化を実現できます。

物流業界が未来へ向けて取り組むべきこと

今後、物流業界が課題を解決し、より成長していくにはどのような取り組みを行うべきなのでしょうか。以下に主なポイントを2つ紹介します。

DX化

物流業界に限らず、最近はあらゆるビジネスシーンでDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。DXとはデジタル技術を活用した、経営やビジネスプロセスの再構築を指します。

先述したように、クラウドなどを使った物流システムを導入すれば、配送や在庫の状況を一元管理でき、可視化してすべての拠点で共有できます。そうすることで、業務の効率化を大幅に推進できるでしょう。

関連記事:物流DXの実現で業界の課題は解消されるのか?

AIやドローンを用いた業務の効率化

今後の物流業界に大きな変革をもたらすと注目されているのが、AIやドローンを用いた配送です。日本では法整備や安全性の点で課題があり、まだ実用化されていませんが、海外では一部でAIを搭載したドローンの宅配が始まっています。

ドローンでの配送が日本でも行われれば、配送コストの削減や人手不足の解消、配送時間の短縮が可能になり、物流業界が抱える多くの課題を一気に解消できる可能性があります。将来にわたる物流業界の成長のためにも、早急なドローン宅配の実用化が待たれます。

まとめ

物流業界の課題解決のためには、DX化やアウトソーシングによる業務効率化が必要です。自社での物流に限界を感じられているなら、アウトソーシングサービスを提供する企業へ委託するのも一つの手です。DX化に取り組んでいたり、関東圏など有利な地域に展開したりしている企業へアウトソースすれば、効率的な物流を実現できるでしょう。