「物流KPI(物流管理指標)」という言葉を最近よく目にするけれど、どのように活用できるものなのか、どのように導入すればよいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか 物流KPIは簡単に表現すると「物流上における課題を見ればわかるように数値化し、課題を解決するための指標となるもの」です。御社にとってのボトルネックはどこにあるのか、数値化されているため、その深刻度も一目で理解できるというもの。ただし導入すれば成功する、のではなくどのように活用するか知っておくことも大切です。 当記事では、物流KPIとは何かという基礎的な情報から、導入して実際の業務改善につなげるためのコツや、そのための考え方などわかりやすくご紹介します。御社の現状抱えている物流課題の改善に役立つ情報となっていますので、ぜひご覧ください。
倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
物流KPIとは
KPI(Key Performance Indicator:業務上で重要なさまざまな定量的データ)は一般的にはコスト・生産性・品質を評価した指標を指す言葉です。 ロジスティクスにおける「物流KPI」とは、「物流管理指標」・「重要業績評価指標」とも呼ばれ、物流が適切に管理・運営できているかを3つの指標で評価した指標を指します。物流KPIは「①コスト・生産性」・「②品質・サービス」・「③物流・配送」の3つの分野において、様々な指標を用いて評価します。 物流業界として抱える「人手不足」の解消が急務であり、業務改善・効率化につなげやすいとして、物流KPIを用いた管理手法が注目を集めるようになりました。
荷主の8割は外注先にKPIなどを用いた適切な管理・報告を期待している事実
物流事業者におけるKPI導⼊促進の必要性|国土交通省をみると、荷主として外注している企業では、77.8%と高い水準で「KPIなどを用いて適切に管理・報告してほしい」と、アウトソーシング先に期待していることがわかります。 これには同調査結果より、「荷主企業の約8割でKPIを導入済み」という実態も関係していると考えられます。多くの荷主企業から物流KPIの活用が求められている現状を考えると、物流業界で今後も支持を受け続けるためにも、導入不可避と認識しておくのが無難なのではないでしょうか。
物流KPIの評価項目とは|評価項目ごとの計算方法
物流KPIの評価項目と計算方法を以下の表でご覧ください。
分野 | 評価項目(指標) | 内容 | 計算方法 |
---|---|---|---|
コスト・生産性 | 保管効率 (充填率) | 倉庫などの保管スペースを効率的に活用できているかの指標 | 保管間口数÷総間口数 |
人時生産性 (庫内作業) | ピッキング・仕分け・検品・梱包作業といった業務効率・生産性を計る指標 | 処理ケース数÷投入人時 | |
数量あたり物流コスト | 現場で発生するコストを荷量ベースで管理する指標 | 物流コスト÷出荷数量 | |
日次収支 (物流センター・トラック) | 物流センター・配送トラックの1日あたりの収支 | 1日あたりの収支-1日あたりのコスト | |
実車率 | 効率よく配送車を稼働させているかの指標 | 実車距離÷走行距離 | |
実働率 | 配送車両の稼働率を可視化する指標 | 実働日数÷営業日数 | |
積載率 | 積載効率を可視化する指標 | 積載数量÷積載可能数量 | |
品質・サービスレベル | 棚卸差異率 | 帳簿上の在庫数と実在庫数の差異 | 棚卸差異÷棚卸資産数量 |
誤出荷率 | 商品・数量・配送先などを誤った出荷割合 | 誤出荷発生件数÷出荷指示数 | |
遅延・時間指定違反率 | 納期遅延・時間指定違反の発生率 | 遅延・時間指定違反発生件数÷出荷指示数 | |
汚破損率 | 商品の汚れ・破損の発生率 | 汚破損発生件数÷出荷支持率 | |
クレーム発生率 | クレームの発生割合を示す指標 (配送のみでなく事務処理・スタッフの対応・サービス品質関連のクレームも含む) | クレーム件数÷出荷指示数 | |
物流・配送 | 出荷ロット | 配送先/顧客ごとの出荷数やサイズ/重量 (輸送効率・保管スペース活用改善に用いる) | – |
出荷指示遅延件数 | 出荷指示の遅延件数 (配送効率向上のため、出荷指示の遅れを軽減するために用いられる | 該当件数の合計 | |
配送頻度 | 配送先別の配送頻度 (多頻度納品の改善で配送効率向上につながる) | 配送回数÷営業日数 | |
納品先待機時間 | 指定時間に納品先に到着が発生した待機時間 | 当該時間数のカウント | |
納品付帯作業時間 | 納品先での荷役・開梱・検品・棚入れなど納品に関わる作業時間 (配送全体に影響を及ぼすため、可視化し業務改善する必要がある) | 当該時間数のカウント | |
納品付帯作業実施率 | 納品付帯作業を実施した割合 (多すぎると配送効率に悪影響なため、可視化し改善する必要あり) | 納品付帯作業実施回数÷納品回数 |
物流KPIを設定する目的とは
物流KPIをなぜ設定するのか、その目的を把握するとスムーズに導入・活用できます。代表的な目的を3つ、解説しますのでご覧下さい。
物流上の課題を可視化するため
物流KPIを設定する最大の目的ともいえるのが、「課題の可視化」です。数値化することで、どこにどれだけの課題を抱えているのかわかりやすく、解消すべきボトルネックの把握がしやすくなります。
社内で目標達成への共通認識として意識するため
数値化することで、だれが見てもわかる、というメリットがあります。数値化し社内共有すれば、関係する社員全体での共通認識として、課題に向き合えます。
客観的に自社の物流管理を評価するため
困難に感じていること、困っていることを事象として把握するのとは異なり、数値化することで客観的に自社の物流管理を評価できるのが物流KPIです。客観的な評価だからこそ、ぶれることなく明確に課題を把握し改善できます。
物流KPIの導入手順
物流KPIを導入する際に必要な流れを以下にまとめました。
- 担当者の選出
- データを分析し現状を把握する
- 目標を設定し戦略を立てる
- ルールを設定し社内周知する
- 定期的に運用を見直し改善する
物流業務は1つの部門で完結するものではありません。1つ1つの課題や現状を部門を横断して共通認識としてもち、PDCAを回してこそよりよい状態に導くことができます。 また、物流KPIを導入するにあたり、KPIの評価項目以外に以下の数値を部門横断で共有し、現状を把握することも重要です。現状を正しく把握し、定期的に見直し改善の余地を探り、物流品質の向上・業務効率化に繋げていきましょう。
- 在庫【日数・回転率・棚卸資産廃棄率・滞留在庫等比率】
- サービス品質【配送件数・欠品率・誤出荷率・荷痛み発生率】
- 返品率
- 配送件数
- 物流リードタイム
- SKU数
- 最低配送ロット
物流KPI導入を成功させる3つのポイント
物流KPIの導入を成果に結びつけるために重要な、3つのポイントをご紹介します。
- 目的を明確にする
- 具体的でわかりやすい指標を設定する
- 現状と目標の差異を可視化する
上でお伝えした、物流KPIを設定する目的を認識し、自社においての重きをおくポイントはどこか、明確にしましょう。「何のために導入したか」を認識せずには物流KPIを導入いた意義が見つけられません。 物流KPIを設定し、自社での課題を把握したうえで目指すべき指標は何にするかを決めましょう。その指標の現状と目標の乖離がどれだけあるか、解決にむかって何をすべきか検討することが物流KPI導入を成功させるポイントになります。
物流KPIで業務改善した事例紹介
納品先での待機時間は一見、自社で対策しきるのが難しい課題に見えます。ここでは物流KPIを導入し、この難しい課題を解決した事例をご紹介します。 とある消費財メーカー物流子会社で、「納入先である小売専用センターで、路上待機・構内待機が頻発していた」ことが大きな課題して認識されていました。そこでこの企業ではセンターごとの待機時間を算出し、荷主にも協力を仰ぎ改善策に乗り出したのです。わかりやすく課題を提示できる物流KPIを活用したことで、荷主の協力も得られ、に卸の開始時間を厳守していただけるようになり、無事解決となった事例もあります。 自社内の課題としてだけでは片づけられないこのような問題も、「誰が見てもわかる形で数値化する」できるのが物流KPIを導入するメリットです。
課題の可視化・誰が見てもわかる物流KPIで業務改善!
物流は自社内だけで解決できる問題も課題としてありますが、他社との連携があるからこその課題もあります。 人手不足を良い形で解消するには、物流業務全般を通しての最適化が業界としての急務でもあります。このような時に役立つのが物流KPIであることがお分かりいただけたでしょうか。 物流KPIはいくつものも指標があります。自社にとって課題となっているのはどの部分なのか、数字をみれば簡単に把握できるのが導入するメリット。活用しきるには、導入する目的を正しく把握し、横のつながりを超えて共通認識として意識し、改善に導くことが重要です。 こちらでお伝えした情報を生かし、物流KPIで御社の業務の最適化をかなえていただければ幸いです。