気候変動や災害、感染症の蔓延、紛争など、さまざまなリスクがいつ襲ってくるか分からない世の中で、強固かつ柔軟なサプライチェーンの構築は、何より重要な課題といってもよいでしょう。その主軸となるのが、物流です。
いつ、だれが、何を、どこで、何のために、どのように行うのか。物流の各プロセスで、平素からしっかりとした業務フロー図を整備し、各署で周知、ルーティン化できていれば、いざというときの対応力はもちろん、業界内での競争力も格段に違ってくるでしょう。
今回は、そんな物流における業務フロー図の役割や作成の際のポイント、注意点について解説します。
倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
物流における業務フロー図の役割
業務フロー図とは、部署や開発などのプロジェクトにおける業務の流れを可視化したフローチャートのことです。まず物流における業務フロー図の役割について見ていきましょう。
業務の可視化
物流では、各プロセスによって業務内容が明確に区分されています。しかし、同じ商品を確実に消費者に届けるということは、全プロセスの作業者に共通した目的でありミッションです。そこで、業務フロー図によって全業務の流れが可視化されると、自分たちの役割が明確になるため、仕事への意識や責任感が確実に高まるでしょう。
課題や問題の発見
業務フロー図の作成にあたっては、各担当者に業務内容をくまなくヒアリングする必要があります。その上で、実際にフロー図を作ろうとすると、矛盾点が浮き彫りになったり、効率化できそうなポイントが明確になったりするので、業務改善のよいきっかけとなることが多いです。
業務改善案が出やすくなる
課題や問題がはっきりしてくれば、どのように業務を改善すべきかといったアイデアが浮かびやすくなるでしょう。すでに業務フロー図が存在する場合は、それを材料にしながら各担当者が議論できるので、業務改善のために、より現実的で踏み込んだ話し合いが可能になるはずです。
また、各業務が区分されていることで、「自分たちは間違っていない」「自分たちが一番大変」といった閉鎖的な思い込みや被害者意識が生じることがあります。しかし業務フロー図で全体を俯瞰して見られると、それらが一方的で勘違いだと判明したり、互いに譲歩する気持ちが芽生えたりすることもあるので、組織力強化にも役立ちます。
属人化の解消
物流現場は、属人化によりベテラン社員など特定の人物がいなければ仕事の進め方が分からず、業務が滞ることが少なくありません。
そこで業務フロー図があると、業務の平準化が進むため、限られた社員でなくとも代替が利きやすくなり、新人教育や業務の引き継ぎの際の資料としても大変役立ちます。
物流倉庫業務のフロー図
それではここから、物流の中でも、とくに業務プロセスが複雑で多層化しやすい倉庫業務のフロー図の作成手順を説明しましょう。
入荷・仕分け
取引先から届いた荷物を、中身をしっかりと確認したうえで倉庫内に受け入れる作業になります。
フローとしては、
1.入庫予定の商品かどうか、名前や形状、数量を入庫予定リストと照らし合わせる
↓
2.破損やキズ、液漏れなどがないか、確認する
↓
3.荷降ろしをして、格納作業がしやすいようにカテゴリーごとに仕分けする
(荷物をハンディーターミナルを使ってバーコード管理する場合は、ここでバーコード・2次元コードを貼付します)
入庫
4.在庫保管場所を定める
↓
5.フォークリフトなどのマテハン機器やマンパワーで荷物をすべて指定された場所に格納 する(間違いなく格納されたか複数の目で確認する)
在庫管理
6.室温、風通し、冷蔵や冷凍、水中など、荷物に合わせたコンディションで適切に商品管 理を行う(空調や専用機器の調整時間や温度チェックの項目をリスト化し、済み次第、サインやチェックを記入する)
ピッキング・流通加工
7.注文や出荷予定日に応じて、商品をピッキングする
↓
8.ピッキングした商品ごとに流通加工の作業場へ運搬する
↓
9.ギフトラッピング、ラベル貼付、納品書発行などを経て梱包作業場へ運搬する
梱包・出荷
10.運搬されてきたセットを中身や個数、宛先などを検品・確認のうえ、梱包する
↓
11.フォークリフトで荷渡し場に運搬、発送地域や小売店ごとにまとめる
↓
12.トラックに積み込んで配送
返品
13.返品された荷物が届いたら返品予定リストと照合する
↓
14.廃棄か在庫保管して再度販売対象とするのかを判断する
↓
15.廃棄ならゴミ処理、在庫保管ならバーコードを貼るなどして指定された棚に格納する
以上が、物流倉庫におけるフロー図の大まかな流れになります。ただ、この内容は最低限と考えてください。
厳密には、マンパワーが必要な個所にそれぞれ何人必要か、そのローテーションはどのように組むのか、マテハン機器のオン・オフ、その他必要な操作を行う時間やタイミング・担当者、使用したフォークリフトの片づけ・管理、ハンディーターミナルの管理、到着したトラックの誘導や到着の旨の報告手段・経路など、フロー図に落とし込むべき情報は山のようにあります。
そうでなければ、業務の流れを理屈で分かっていても、何を、どこに、どのタイミングで、だれに、といった点が詳しく分からず、結局業務フロー図は絵に描いた餅となりかねません。
詳細な流れを書き込むのが難しい場合は、「サブプロセス」という形で、別バージョンを分岐して作るようにします。2次、3次と必要に応じて階層化し、どこを辿ってもすべての業務が確実に把握できるように仕上げることが、肝要です。
業務フロー図の注意点
業務マニュアルと併用する
先ほど述べたように、業務フロー図はスペースが限られているため、業務内容や流れのすべてを書き込むのは困難かもしれません。倉庫の規模が大きく、扱う荷物の量や種類が莫大で、業務も複雑な場合は、サブプロセスを設けるといっても限界があるでしょう。
そこで、おすすめするのが、業務マニュアルの併用です。タスクの詳細まで記載した業務マニュアルと照合して流れが完璧に理解できるようにしておくと、初見でも疑問をもつ余地が少なくなるため、大変実用性が高まります。フロー図の中にも、「詳しくは業務マニュアル25ページの「〇〇」を参照」などと付記しておくと、理解がスムーズに進むでしょう。
常にアップデートする体制作り
物流業務の流れは頻繁に、しかも不定期に変化する可能性があります。ある部署での変更事項が、他の部署に影響を与えたり、連携をしながらの調整が必要になったりするケースも十分に考えられるでしょう。
したがって、その変更内容は、リアルタイムで業務フロー図にも反映させて、関係者で共有できるようにしておくことが大切です。アップデートが遅れると部署間やそれぞれの担当者同士で主張が噛み合わず、業務全体に支障をきたす恐れがあるので、注意しましょう。
まとめ
物流需要が増え、人手不足も深刻化する中、実用性の高い業務フロー図の作成は、競争力向上の意味でも必須といってよいでしょう。
効率を高め、かつ安全で確実な業務の推進のためにも、ぜひ質の高い業務フロー図の整備に注力していきましょう。
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