先入れ先出し (FIFO:first in first out)とは、賞味期限や入庫日の古いものから優先的に出荷する在庫管理の仕組みのことです。
スーパーやコンビニに行くと、賞味期限が近い商品が棚の手前に、遠い商品が棚の奥に陳列されているのをよく見かけます。これが最も身近な先入れ先出し(FIFO)の例です。
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目次
先入れ先出しとは
先入れ先出しとは、在庫管理において、賞味期限や入庫時期が古いものから優先的に出荷する仕組みのことです。
先入れ先出しを行うことで、出荷時の商品の鮮度や品質を維持することができます。商品によっては倉庫に長く保管していると劣化しやすくなってしまいます。そこで、先に入庫したものを常にピッキングしやすい手前に配置して、優先的に出庫するようにすれば、品質を維持したり、廃棄ロスやクレームの削減につながります。
「先入れ後出し」との違い
ちなみに先入れ先出しと似た言葉で、先入れ後出しという手法もあります。
これは、上記の先入れ先出し(FIFO)方式とは真逆で、新しい商品から優先的に出庫する方法です。賞味期限に左右されない商品に向いています。例えば、インフレで値上がりした商品などは、直近に高く仕入れた商品をそれに見合った高い販売価格で売ってしまった方が、在庫金額が高額にならなくて済みます。
また、先入れ先出しのように、古い在庫を手前に引いて新しい在庫を格納しまた古い在庫を戻すという面倒な作業がなくなるので、作業スペースが小さくなります。もちろん作業工程を省略できるため作業者の負担が軽くなるというメリットもあります。
先入れ先出しのメリット
それでは、先入れ先出しのメリットについて詳しく解説しましょう。
具体的には、以下の4点になります。
- 消費期限切れの防止
- 顧客満足度の向上
- 在庫管理能力の向上
- 倉庫スペースの有効利用
消費期限切れの防止
先入れ先出しのもっとも明確なメリットは、消費期限切れを防ぐことができる点です。食品や精密機器など、製造時期や消費期限、ロットがとくに重要視されるものに関しては、出庫の順番を間違えると、多くの在庫が劣化し、商品価値を失うリスクが高まります。廃棄ロスが発生すれば、著しく利益を圧迫することにもなりかねないため、その回避策として先入れ先出しは非常に有効なのです。
顧客満足度の向上
先入れ先出しにより、高い品質や鮮度を維持した状態で滞りなく出荷できれば、取引先からの信頼は高まります。メーカーなら卸業者から、卸業者なら小売店から、そして小売店なら一般の消費者からの顧客満足度向上をはかることができます。
在庫管理能力の向上
先入れ先出しを問題なく継続するには高い在庫調整能力が求められます。100個しか売れる見込みがない商品を200個も仕入れてしまうと、残りの100個は出荷までの滞留時間が延びて商品価値が下がる可能性が高まります。そのような商品は、棚卸しの際に廃棄の対象となります。
また在庫過多が続くと現場が混乱して在庫管理に支障をきたし、帳簿上の在庫数と実際の在庫数が一致しない棚卸差異(在庫差異)が発生する恐れもあるでしょう。こういったリスクを回避すべく、精度の高い需給計画を作成し、常に在庫数を過不足なく最適化することが求められるため、自ずと在庫管理能力が向上していきます。
倉庫スペースの有効利用ができる
先入れ先出しは、頻繁に商品の入れ替えや出し入れを行う必要があるため、作業スペースの確保が大きな課題となります。例えば、在庫棚に奥行きがあると先に収納した商品を取り出すのに手間がかかるでしょう。そこで逆方向からも収納できるようにレイアウトを変更してみます。するとわざわざ表側の荷物をいったん外に出すといった面倒なことをせず裏側から取り出せるので作業負担は減るります。このように限られたスペースを有効活用することを考えるので、倉庫内は整理整頓がされ、さらに在庫収納力がアップすると期待できます。
先入れ先出しのデメリット
続いて、先入れ先出しのデメリットについて解説しましょう。
- 作業負担の増加
- データ入力作業が膨大
作業負担の増加
多くの場合、奥に配置した古い在庫をいったん外に出してから新しいものを奥へ配置し、再度古いものを手前に戻すといった作業を頻繁に行う必要があります。よって、作業人員の確保、長時間・過重労働、そして人的コストの増加といったある程度の負担を覚悟する必要があるでしょう。
データ入力作業が膨大
先入れ先出しにおいて重要なのは、消費期限や賞味期限、製造時期や入荷日を明確にデータ化して、必要部署とスタッフで共有することです。そのためのデータ入力作業が膨大になります。誤りがあってはならないため、二重チェックを行うなどの防止策も必要でしょう。これらの作業にも時間と人手が取られることになります。
先入れ先出しの注意点
先入れ先出しを実行するには、古い在庫を手前に、新しい在庫を奥に配置する作業が必要です。このため作業方法や倉庫のレイアウトを工夫しないと、作業負担が増加し作業人員の確保や長時間労働などコストが増加する可能性があります。レイアウトの工夫や倉庫内での作業をスムーズに行うためには、整理・整頓・清掃である「3S」を意識することも大切です。
また、消費期限や製造時期のデータ化と共有が重要で、データ入力や二重チェックに時間と人手がかかります。
先入れ先出しの導入ポイント
それでは、注意点をもとに先入れ先出しを導入するにあたってポイントとなる点を挙げていきましょう。すべてを同時に導入することは難しいので、倉庫の規模や在庫の種類・数量、作業者の人数、予算などを考慮して、まず無理のないところから始めてください。
商品ごとに必要性を見極める
消費期限や入荷日の重要性はカテゴリーや商品によって異なります。例えば干物や酒といった長期保存が可能なものもあれば牛乳や野菜など鮮度が落ちやすいものもあります。すると、先入れ先出しの必要性が極めて高いものとそうでないものとに分けることができます。
同じ倉庫で在庫管理するなら、その重要度に応じて基準を定め、エリア別に収納すれば、作業の効率化が実現するでしょう。
古い在庫を手前に格納する
先入れ先出しでは、古い在庫を手前に配置し、新しいものを奥に配置するのが原則です。古いものを奥に置いたり取り出しにくい場所に収納したりすると見落としたり間違いが発生します。また出荷時の作業効率が悪くなります。入庫時の作業自体は手間と負担が増えますが、正確な出荷のためには譲れない条件となります。
情報シールを貼付する
在庫を収納する際には、それぞれに消費期限や入荷日、品目や数量などが一目でわかる情報シールを貼付するのもおすすめです。ざっくりとした情報しかなければいちいち中身を確認する必要が出てきたり、出荷の優先順位を間違ったりする可能性もあります。
情報シールの準備が大変なら、入荷日順や入荷した曜日ごとに色の異なるシールを貼るだけでもよいでしょう。可能なら情報シールも、基準に従って色分けできればなお判別がしやすくなるはずです。
在庫量は最小限を目指す
先入れ先出しは、新旧の入れ替えがあるため、在庫数が多いほど倉庫内での管理は困難さを増します。そこで適切な在庫調整により、最良のタイミングで入出庫できれば、在庫の数を最小限に抑えることができるでしょう。そのためには取引先との連携を深め、配送トラックを手配するタイミングを効率化するといった工夫をすると同時に、この後に紹介するマテハン機器や在庫管理システム(WMS)の有効活用も、おすすめです。
マニュアルを共有する
ルール化が曖昧な作業法では、同じミスを繰り返したり、スタッフの顔ぶれにより作業効率がまちまちになったりします。よって在庫管理と棚卸については、きちんとルールを決めて、関係者全員で共有する必要があるでしょう。試行錯誤を繰り返しながらの作業になるでしょうが、根気よく続け、定着するまでやり通しましょう。属人化を廃止し、作業工程が平準化できれば、確実に成果が出るので、業績と顧客満足度向上に寄与するに違いありません。
マテハン機器を積極活用する
予算の許す限りフォークリフトや自動搬送機、移動棚、ソーターといったマテハン機器の積極活用が、おすすめです。業界全体に見られる慢性的な労働力不足と高齢化により、マンパワー頼りのアナログ的作業には限界があるでしょう。省人化、機械化することで、従業員への負担を軽減し、作業効率を高め、ピッキングミスや誤配送をなくすことは、何より優先すべき課題といえます。
倉庫管理システム(WMS)を活用する
最後に強くおすすめするのが、倉庫管理システム(WMS)の導入です。在庫管理システムを使えば、消費期限や入荷日、ロット別の管理が容易にできます。バーコードやハンディーターミナルとの併用により、ロケーション指示、ピッキング、仕分けといった一連の業務を一元管理することも可能です。これによって作業効率が高まるのはもちろん、ヒューマンエラーも大幅に減らすことができるでしょう。