先入れ先出し (FIFO:first in first out)とは、賞味期限や入庫日の古いものから優先的に出荷する在庫管理の仕組みのことです。
スーパーやコンビニに行くと、賞味期限が近い商品が棚の手前に、遠い商品が棚の奥に陳列されているのをよく見かけます。これが最も身近な先入れ先出し(FIFO)の例です。
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先入れ先出しとは
先入れ先出しとは、在庫管理において、賞味期限や入庫時期が古いものから優先的に出荷する仕組みのことです。在庫管理については下記記事を参考ください。
ここで、状況を物流倉庫に置き換えて考えてみましょう。仕入先が同じ商品を数千個納品してきたとします。もし、納品のペースが週に1度、10日に1度と頻繁であれば、倉庫はすぐに在庫で溢れかえるでしょう(もちろん、溢れる度合いは納品の回数や倉庫の大きさによって変わりますが)。
例えば、100個の入庫したのと同時に、同じく100個の注文が入り、入庫したばかりの100個を出荷したらどうなるでしょうか。作業の上では好都合かもしれませんが、すでに商品の在庫が1,000個あるとしたら、それらは後回しにされることになります。これが長期保存が可能な商品であれば良いのですが、商品によっては、倉庫に長くあればあるほど劣化しやすくなってしまいます。また、後先考えずに古いものから順に在庫棚の奥に置いてしまうと、新しい荷物に邪魔されて取り出しにくくなります。そこで、先に入庫したものを常にピッキングしやすい手前に配置して、優先的に出庫するようにすれば、消費期限という時間軸で考えた場合の不具合は、間違いなく解消されます。
「先入れ後出し」との違い
ちなみに先入れ先出しと似た言葉で、先入れ後出しという手法もあります。
これは、上記の先入れ先出し(FIFO)方式とは真逆で、新しい商品から優先的に出庫する方法です。賞味期限に左右されない商品に向いています。例えば、インフレで値上がりした商品などは、直近に高く仕入れた商品をそれに見合った高い販売価格で売ってしまった方が、在庫金額が高額にならなくて済みます。
また、先入れ先出しのように、古い在庫を手前に引いて、新しい在庫を格納し、また古い在庫を戻すという面倒な作業がなくなるので、作業スペースが小さくなります。もちろん、作業工程を省略できるため、作業者の負担が軽くなるというメリットもあります。
先入れ先出しのメリット
それでは、先入れ先出しのメリットについて詳しく解説しましょう。
具体的には、以下の4点になります。
- 消費期限切れの防止
- 顧客満足度の向上
- 在庫管理能力の向上
- 倉庫スペースの有効利用
1つずつについて見ていきます。
消費期限切れの防止
先入れ先出しのもっとも明確なメリットは、消費期限切れを防ぐことができる点です。食品や精密機器など、製造時期や消費期限、ロットがとくに重要視されるものに関しては、出庫の順番を間違えると、多くの在庫が劣化し、商品価値を失うリスクが高まります。廃棄ロスが発生すれば、著しく利益を圧迫することにもなりかねないため、その回避策として先入れ先出しは非常に有効なのです。
顧客満足度の向上
先入れ先出しにより、高い品質や鮮度を維持した状態で滞りなく出荷できれば、取引先からの信頼は確実に高まります。メーカーなら卸業者から、卸業者なら小売店から、そして小売店なら一般の消費者からの顧客満足度向上をはかることができます。
在庫管理能力の向上
先入れ先出しを問題なく継続するには、高い在庫調整能力が求められます。100個しか売れる見込みがない商品を200個も仕入れてしまうと、残りの100個は出荷までの滞留時間が延びて、商品価値が下がる可能性が高まります。そのような商品は、棚卸しの際に廃棄の対象となります。
また在庫過多が続くと現場が混乱して在庫管理に支障をきたし、帳簿上の在庫数と実際の在庫数が一致しない棚卸差異(在庫差異)が発生する恐れもあるでしょう。こうなると利益が減ったり、余分な税金を無駄に支払うことになったりするので、要注意です。こういったリスクを回避すべく、精度の高い需給計画を作成し、常に在庫数を過不足なく最適化することが求められるため、自ずと在庫管理能力が向上していきます。これは間違いなく大きな競争力アップにつながるでしょう。
倉庫スペースの有効利用
繰り返しますが、先入れ先出しは、頻繁に荷物の入れ替えや出し入れを行う必要があるため、作業スペースの確保が大きな課題となります。例えば、在庫棚の奥行きが長すぎると、先に収納した荷物を取り出すのに手間がかかるでしょう。そこで逆方向からも収納できるようにレイアウトを変更してみます。すると、わざわざ表側の荷物をいったん外に出すといった面倒なことをせずとも、裏側から取り出せるので作業負担は激減するはずです。このように、限られたスペースを最大限に有効活用することを考えるので、倉庫内は整理整頓がなされ、さらに在庫収納力がアップすると期待できます。
先入れ先出しのデメリット
続いて、先入れ先出しのデメリットについて解説しましょう。
具体的には、
- 作業負担の増加
- データ入力作業が膨大
- ノウハウの標準化が困難
以上の3点になります。
作業負担の増加
倉庫のスペースに余裕があれば、入庫時期やロットごとに在庫をまとめてエリア別に収納することができるでしょう。高さがあれば、古いものから順に下から上へと格納することで、ピッキングがしやすくなるはずです。さらに最新式の自動倉庫を導入すると、上下左右に自在に動く立体棚から必要な商品だけをフルオートで手元に呼び出すことが可能です。ただそれには莫大な予算がかかるため、一部の規模の大きな企業を除いて現実的ではありません。
多くの場合、奥に配置した古い在庫をいったん外に出してから新しいものを奥へ配置し、再度古いものを手前に戻すといった作業を頻繁に行う必要があります。よって、作業人員の確保、長時間・過重労働、そして人的コストの増加といったある程度の負担を覚悟する必要があるでしょう。
データ入力作業が膨大
先入れ先出しにおいて重要なのは、消費期限や賞味期限、製造時期や入荷日を明確にデータ化して、必要部署とスタッフで共有することです。そのためのデータ入力作業が膨大になります。誤りがあってはならないため、二重チェックを行うなどの防止策も必要でしょう。これらの作業にも時間と人手が取られることになります。
ノウハウの標準化が困難
先入れ先出しは、理屈としてはわかりやすいのですが、実際の現場作業は思いのほか複雑なため、リーダーとなる作業員が属人化しやすい傾向にあります。マニュアル化がしにくく、人によってばらつきがでやすい作業ほど口頭で指示することも多いため、ノウハウの標準化が進みません。すると、その人物が休んだり退職したりすると、たちまち作業が滞るとか、作業効率が低下するといった恐れがあります。
先入れ先出しの導入ポイント
最後に、先入れ先出しを導入するにあたってポイントとなる点を挙げていきましょう。
すべてを同時に導入することは難しいので、倉庫の規模や在庫の種類・数量、作業者の人数、予算などを考慮して、まず無理のないところから始めてください。
1. 商品ごとに必要性を見極める
消費期限や入荷日の重要性は、カテゴリーや商品によって異なります。例えば干物や酒といった長期保存が可能なものと牛乳や野菜などでは、大きな開きがあります。
すると、先入れ先出しの必要性が極めて高いものとそうでないものとに分けることができます。同じ倉庫で在庫管理するなら、その重要度に応じて基準を定め、エリア別に収納すれば、作業の効率化が実現するでしょう。
2. 古い在庫を手前に格納する
先入れ先出しでは、古い在庫を手前に、新しいものを奥に配置するのが原則です。古いものを奥に置いたり取り出しにくい場所に収納したりすると、見落としや、紛失と勘違いする恐れがあります。作業自体は手間と負担が増えますが、正確な出荷のためには譲れない条件となります。
3. 情報シールを貼付する
在庫を収納する際には、それぞれに消費期限や入荷日、品目や数量などが一目でわかる情報シールを貼付するのもおすすめです。ざっくりとした情報しかなければいちいち中身を確認する必要が出てきたり、出荷の優先順位を間違ったりする可能性もあります。
情報シールの準備が大変なら、入荷日順や入荷した曜日ごとに色の異なるシールを貼るだけでもよいでしょう。可能なら情報シールも、基準に従って色分けできればなお判別がしやすくなるはずです。
4. フリーロケーションを採用する
在庫保管では、商品の種類や品番に分けて保管する「固定ロケーション」と、消費期限や製造年月日ごとに保管する「フリーロケーション」があります。
固定ロケーションだと、とくに消費期限の短い商品は頻繁に出し入れを繰り返すことになるため、作業負担が重くなり非効率です。しかも同じ商品ばかりだと日付のとり違いをしてしまう可能性もあるでしょう。
そこで入荷日やロットなどを優先して保管場所を決めるフリーロケーションを採用すると、日付の勘違いをなくすことができます。例えば、製造が同時期のリップクリームと化粧水を同じ棚で保管すると、出荷すべき時期が近づいた時に、何がどれくらい残っているのかが把握しやすいです。商品の取り違えも起こりにくいので好都合でしょう。
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5. 在庫量は最小限を目指す
先入れ先出しは、新旧の入れ替えがあるため、在庫数が多いほど倉庫内での管理は困難さを増します。そこで適切な在庫調整により、最良のタイミングで入出庫できれば、在庫の数を最小限に抑えることができるでしょう。そのためには取引先との連携を深め、配送トラックを手配するタイミングを効率化するといった工夫をすると同時に、この後に紹介するマテハン機器や在庫管理システム(WMS)の有効活用も、おすすめです。
6. マニュアルを共有する
前述のように、先入れ先出しの現場において、作業のマニュアル化は容易ではありません。しかし、ルール化が曖昧な作業法では、同じミスを繰り返したり、スタッフの顔ぶれにより作業効率がまちまちになったりします。
よって、在庫管理と棚卸については、きちんとルールを決めて、関係者全員で共有する必要があるでしょう。試行錯誤を繰り返しながらの作業になるでしょうが、根気よく続け、定着するまでやり通しましょう。属人化を廃止し、作業工程が平準化できれば、確実に成果が出るので、業績と顧客満足度向上に寄与するに違いありません。
7. マテハン機器を積極活用する
予算の許す限りフォークリフトや自動搬送機、移動棚、ソーターといったマテハン機器の積極活用が、おすすめです。業界全体に見られる慢性的な労働力不足と高齢化により、マンパワー頼りのアナログ的作業には限界があるでしょう。省人化、機械化することで、従業員への負担を軽減し、作業効率を高め、ピッキングミスや誤配送をなくすことは、何より優先すべき課題といえます。
8. 在庫管理システム(WMS)を活用する
最後に強くおすすめするのが、在庫管理システム(WMS)の導入です。在庫管理システムを使えば、消費期限や入荷日、ロット別の管理が容易にできます。バーコードやハンディーターミナルとの併用により、ロケーション指示、ピッキング、仕分けといった一連の業務を一元管理することも可能です。これによって作業効率が高まるのはもちろん、ヒューマンエラーも大幅に減らすことができるでしょう。
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まとめ
計算結果を参考にして、強引にコストカットをしてしまえばさまざまな悪影響が発生することは意識してください。物流コストを正確に把握したければステップを確実におこなわなければいけませんが、各過程においてどうすれば良いかの判断が難しければ専門家に依頼してください。
最終的にコストカットや効率化を目指しているなら、早い段階で取り組むことが求められますが、焦って各ステップでの設定や計算が不正確になってしまえば最終的な計算もずれてしまうので注意が必要です。企業活動において悪影響が出る可能性も考えながら、メリット・デメリットについても正確に把握してからの活動をしましょう。
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