ネット通販の普及に伴い増加傾向にあった宅配需要は、新型コロナの発生でさらに勢いを増しました。また、サービスの多様化や荷物の小口化により、業務内容は複雑化し、人手不足の深刻化に拍車をかけていまる状況です。この状況を打破し、少しでも改善するためには、的を射た早急なDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要です。
倉庫管理システム(WMS)は、倉庫業務をサポートし在庫状況の可視化や入出庫作業の効率化などを可能にするITツールです。WMSを活用することで、企業は労働力や倉庫のスペースを効率的に運用することが可能になります。本記事では、WMSの概要や基本機能、導入メリットなどをわかりやすく解説します。
今回は、WMSの機能や導入のメリット・注意点などについて詳しくご紹介します。
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倉庫管理・在庫管理の違いは目的と管理対象【それぞれの抱える課題と解消方法】
WMS(倉庫管理システム)とは
倉庫管理システムとは、入庫管理や在庫管理といった倉庫管理業務を補助するシステムのことです。英語では「Warehouse Management System」と表記されることから、「WMS」と略されます。
倉庫管理においては、大量の在庫を正確に管理する難しさや現場とデータのラグなど、いくつかの課題があります。WMSは、そうした課題を解消するためのITソリューションであり、製造業、小売り、EC販売など、業種・規模を問わず様々な企業に利用されています。
荷物が届いたら検品をして倉庫内に格納、在庫管理を行い、出庫指示がくれば、仕分けや梱包をして出荷、という一連の倉庫業務をすべて一つのシステムで管理します。各荷物や製品が、いつ、だれによってどの様に扱われ、現在どこにあるのか、そのステータスをリアルタイムで把握できるのです。
とくに中小の倉庫業者は、いまだこれらの作業を複数の担当者が現場に張り付いて、ぶつ切りのシステム下で行っているケースが多いです。よって、非常に手間と時間がかかるため、社員は過密労働を強いられ、人為的ミスや属人化が避けられない状況が続いています。この苦しい状況を一変させる機能をもつのが、WMSなのです。
WMSには、ベンダーのサーバーを使って利用できるクラウド型、自社内のサーバー上でソフトを稼働させデータ管理するオンプレミス型、社内のパソコンにソフトをインストールして使うパッケージ型の3種類があります。様々な商品が販売されているため、導入にあたっては用途と予算に合わせて選択する必要があるでしょう。
基幹システムとの違い
WMSとよく似た機能を持つシステムとして、基幹システムが挙げられます。しかし、WMSには、基幹システムにはない強みがあります。
まず、基幹システムとは、企業がビジネスを行う際の根幹となる業務をコンピューターで管理するシステムの総称です。その性質上、基幹システムには様々な機能が搭載されており、そのひとつに売上や仕入れ、生産などの数字と関連した在庫数の管理機能が含まれているのです。
そのため、一見すると倉庫業務は基幹システムだけで十分と思ってしまうかもしれません。しかし、基幹システムは企業全体の情報を統括するシステムであるため、特定の業務や特定の現場に最適化されてはおらず、在庫管理についてもあくまで大まかにしか行えません。そのため、たとえばどの在庫を倉庫のどこに置いたかといった、現場ごと状況ごとに異なる入出庫作業の情報を管理しきるのは難しいのです。
その点、在庫管理に特化したソリューションであるWMSならば、現場ごとのローカルな決まりや、その時々で臨機応変に変わる現場の状況をリアルタイムに把握し、実際の入出庫作業をサポートできます。
WMS(倉庫管理システム)の機能
WMSには、在庫管理や入出庫作業などをサポートする数々の機能が搭載されています。その主な基本機能としては以下が挙げられます。
入荷・入庫管理
入荷スケジュールや予定されている入荷品の種類・数量などの情報を管理したりする機能です。これにより現在過去未来の入荷状況を可視化できます。
WMSで倉庫や取引先と連携すると、届く荷物はバーコードや2次元バーコード処理されているため、ハンディーターミナルで検品すれば、すぐに入庫業務に移れます。
荷物の荷主や内容、数量、到着時間などの情報はあらかじめオンラインで受信しているため、その内容と照合して、指示されたロケーションに格納します。
在庫管理
倉庫内の在庫の種類・格納場所・数量を常時把握、発注のタイミング調整や出荷後の数量確認も自動化できます。これらの情報が可視化されることで、適切に在庫を補充したり、食品のような消費期限のあるものでも古いものから順に出荷し、不要なロスを減らしたりできます。
また、ステータス機能を使えば、良品と不良品を分けたりキャンペーンや優良顧客向けの商品を取り置きしたり、といった区分け作業も容易に行えます。
出庫・出荷管理
出荷機能には、出庫指示をしたり、ピッキングリストを作成したりする機能が搭載されています。
注文が入ったり、出荷予定日が近づいたりしたら出荷指示を出し、仕分けのうえ梱包、出荷作業へと移ります。出荷時もハンディーターミナルを使って検品し、在庫との過不足がないかをチェックします。
棚卸し管理
棚卸しの指示や、棚卸しした製品のリストを作る機能です。通常は煩雑な手間がかかる棚卸業務も、WMSを使えば、スキャナによって簡単に製品情報を入力したりして、効率的に作業を進めることが可能です。
帳票・ラベル発行
その名の通り、帳票やラベルを発行する機能です。納品書をはじめとする帳票や、商品コードなどが記載されたラベルを発行します。
返品管理
倉庫業務には返品対応なども含まれます。WMSでは、こうしたイレギュラーな返品対応の記録もしっかり残すことにより、正確な在庫管理を可能にします。
WMS(倉庫管理システム)導入のメリット
上記のように様々な機能を搭載したWMSを導入することにより、次のようなメリットが見込めます。
作業ミスの軽減
単調な作業になることが多い倉庫業務では、注意力が散漫になりやすく、目視による作業では人為的ミスも起こりがちです。
WMSでは在庫情報をリアルタイムにデジタル上で把握できるため、最新の情報を正確に把握し、誰でも簡単に入出荷の判断を行うことが可能です。
業務の標準化と効率化が進む
倉庫業界をはじめとする物流業務は、属人化の傾向が非常に強いため、特定のベテラン社員がいなくなると、たちまち業務が停滞し機能不全に陥るケースがあります。ところが、WMSで入荷から出庫までの業務をデジタル化すると、業務の標準化が可能となるので、担当者の変更に影響されなくなります。
紙を使って手作業で行っていた各種の確認作業が必要なくなれば、書類を紛失したり、見当たらない時に探したりする心配もなくなり、業務効率が大幅にアップするでしょう。
作業効率化
倉庫業務には、倉庫内のもの探しや在庫チェックなど時間と手間がかかる作業も多くあります。その点、WMSでは、バーコードリーダーを使ったチェックもできるため、作業スピードと精度の大幅な向上が見込めます。
人件コストの削減
上記のような業務効率化は、人件費の削減効果をもたらします。物流における最大のコストは人件費であり、利益を最大化するには、いかにここを抑えるかが重要です。WMSを導入して作業を簡単にできれば、現場に必要な人員を削減できるので、人件費を抑えられます。
省コスト・省スペース化が実現する
WMSを導入すると、入庫作業や在庫のピックアップ、梱包作業などが効率化されるため、人件費を削減できます。また、効率よく無駄のない格納が可能になるので、在庫スペースにも余裕ができるでしょう。すると、そのスペースを別の目的に使用したり、省スペース化してコストカットすることもできます。
リアルタイムで情報を把握できる
WMSは、PCやタブレットを使って全業務の進捗状況を常にリアルタイムで確認することができます。他の倉庫や取引先ともデータ連携できるため、何らかのトラブルが起きても、原因究明にさほど時間がかかりません。リスク管理の意味でも、WMSの導入は非常にメリットが大きいといえるでしょう。
倉庫管理システムの選び方
一口にWMSとは言っても、実際には様々な製品があります。続いては、自社に適した製品を比較検討する際に役立つ選定ポイントについて解説します。
導入形態をチェック
選定ポイントその1は、「導入形態をチェックすること」です。WMSには、主に「クラウド型」「オンプレミス型」「パッケージ型」という3つの導入形態があります。導入の際には、まずはこの3つの中からどれを選択するかを検討しましょう。3つの導入形態それぞれの特徴は以下の通りです。
【クラウド型】
クラウド型は、ベンダーが提供するシステムをインターネット上で利用する形態です。自社でサーバーを用意したり、システムを整備したりする必要がないため、導入コストを抑えられます。ベンダーがシステムをアップグレードした際は、その内容が自社にもすぐに反映されるので、常に最新のシステムを使えるという利点もあります。ただし、オフライン環境だとシステムを使えないことや、カスタマイズ性が低いことには注意が必要です。
【オンプレミス型】
オンプレミス型とは、自社内にサーバーやネットワークなどの設備環境を準備し、その中にシステムを導入ないしは構築していく形態です。クラウド型とは対照的に、オフラインでも使える点や、自社の業務にシステムを最適化できるカスタマイズ性の高さが魅力です。ただし、サーバーなどの設置に要する初期投資費用や、システムの運用管理を自社で負担しなければならないため、オンプレミス型には高いコストや技術力が要求されます。
【パッケージ型】
パッケージ型とは、完成されたソフトをPCにインストールする導入形態です。たとえば、Microsoft Officeをパッケージ型で導入している企業は多いのではないでしょうか。パッケージ型はPCにインストールするだけで簡単にシステムを導入することが可能で、製品の種類・価格帯も豊富にあります。原則的にインストールしたPCでしか使えませんが、大がかりなサーバーを要さない規模で運用するならば、有力な選択肢になるでしょう。ただし、パッケージ型は一般化されたソフトウェアなので、カスタマイズ性はなく、自社環境に応じた柔軟な運用には向きません。
目的・予算に合ったサービスを
選定ポイントその2は「目的・予算に合ったサービスを選ぶこと」です。WMSを導入する前に、コスト削減なのか、生産性向上なのかなど、導入の目的を明確にしておくことが重要です。予算も企業の規模や汎用性などを考慮しながら、ベストなものを選択していきましょう。
目的や予算を明確にすることで、先の導入形態のどれを選ぶかも方向性が見えてきます。たとえば、コスト削減が目的なら、大きなコストを要求するオンプレミス型の導入は本末転倒になりかねません。また、目的や目的に応じた必要な機能がはっきりしていないと、自社では使わない機能やオプションが搭載された製品を選んでしまい、やはり無駄なコストが生じてしまう可能性もあります。
そのため、製品選びの際には、目的と予算に応じた価格、そして実際の運用における使いやすさなども考慮した上で、検討を進めましょう。なかには、小規模運用の場合や、期間を定めて無料で利用できるものや、フリーソフトもあるため、まずはWMSの概要を把握してみたい、といった場合にはそういった製品を利用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
WMS(倉庫管理システム)導入の注意点
WMSにはメリットが多い反面、注意しなければならない点もあるので、あらかじめよく認識しておいて下さい。
初期費用がかかる
WMS導入には、高額な初期費用がかかる場合が少なくありません。クラウド型は、サーバーが外部にあるため、初期費用というよりは定額の手数料を支払うのみのため、月数万〜十数万円ほどで済みます。しかし、オンプレミス型は初期費用に数百万円、パッケージ型も買取なので、数百万円単位の予算が必要になることが多いです。
また、オンプレミス型は、自主管理のため、トラブルの対処は自前で賄う必要があるうえ、クラウド型に比べると容易に仕様変更できないので、導入には慎重を期す必要があるでしょう。
連携やルーティン化に時間がかかる
WMSは、初期設定や操作に慣れるまでに時間がかかります。しかも通常の業務を続けながらのシステム変更ですから、綿密な計画の上で実行しなければなりません。また、他の倉庫や工場、取引先との連携作業にも思いの外、手間がかかるので、その点も重々考慮にいれてておく必要があるでしょう。
ニーズに合わないケースもある
オンプレミス型の場合は、細かい部分までカスタマイズして導入することができます。しかし、クラウド型やパッケージ型は、ある程度型にはまった状態で提供されるため、操作性に物足りなさを感じたり、ニーズに合わない機能があったりする可能性があります。後になって当てが外れたということのないように、どのシステムが最適か、よく吟味してから導入する必要があるでしょう。
まとめ
倉庫管理システム(WMS)とは、在庫状況を可視化するなどして、倉庫業務を効率化するためのツールです。
物流代行サービスを提供しているMOTOMURAでは、クラウド型のWMSを活用して適切な在庫管理を実施しています。在庫管理や配送業務のアウトソーシングを検討中であれは、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。