クロスセルとは?クロスセルの例やアップセルとの違いについて

クロスセルとは、既存顧客に対して購入歴のある商品とは別の関連商品や補助商品の追加購入を促す販売手法のことです。

新規顧客を一から開拓するより、ブランドについての認知度が高く、一定の信頼を寄せる既存客の方が、訴求効果が高く、客単価を上げることで、確実な収益増が期待できます。

クロスセルとは

ファストフード店で「ご一緒に期間限定フレーバーのこちらもいかがですか?」と勧められる、アパレルショップで「こちらのスカートにはこのニットをあわせると素敵ですよ!」と勧められる、またAmazonや楽天でみる「この商品を見ている人が一緒に購入している商品はこれです」と、類似商品が画像と共に表示される、こうした販売手法がクロスセルと呼ばれるものの一例です。

あわせてクロスセルには、「これも一緒に購入すると10%引き」「2点以上お買い上げで15%OFF」など、追加購入することで得をすることができる、と謳うことで客単価向上を狙う手法も含まれます。簡単にまとめると、クロスセルとは追加購入を促すことでお得感をあおり、客単価向上を狙う販売手法なのです。

アップセルとの違い

アップセルは、既存顧客に現在よりも上位の商品を勧めることで、収益増を狙う販売手法です。

賃貸契約の顧客に自宅購入を勧めるとか、軽自動車のオーナーに売れ筋のSUVを紹介するといった形で、現在よりもあきらかに単価が上昇することを目的とします。

ダウンセルとの違い

ダウンセルは、現在よりも下位にあたる商品を勧め、客離れを防ぐのが主目的の販売手法です。

競合に顧客を奪われかねないとか、当社の商品やサービスに対する魅力が薄れた既存客をつなぎ止めておきたい、あるいは収益が下降局面にあり、縁が切れるよりは客単価は下がっても売上を確保できた方がベター、といったシチュエーションで採用されることが多いです。

クロスセルの例

1.特典やオプションとして勧める

ある購入商品に対して、期間限定の付属サービスを提供したり、補助的な商品を格安で販売したり、自社のまったく異なるサービスを使えるオプションを付けたりします。

例えば、ビジネス目的でホテルを利用している常連客に、系列の温泉旅館を割引価格で勧めたり、同じく系列レストランの割引チケットを複数枚プレゼントしたり、といったものがあります。

2.セット販売にする

現在使っている商品に加えて、別の効果やメリットが期待できる同等レベルの商品をセットで割引販売するというものです。

例えば、化粧水、洗顔フォーム、美容液といった基礎化粧品を愛用している顧客に、ファンデーションや口紅、アイシャドーといったメーキャップ化粧品を特別にセット販売する、といった具合です。

3.レコメンドや陳列を工夫する

既存顧客が現在使っている商品から派生して、潜在的に欲していたり、必要としていたりする商品に気づかせるというものです。サイト閲覧の際に「あなたにおすすめ」「この商品を見た人はこんなものを買いました」といった具合にレコメンドしたり、購入商品の売り場付近やレジ待ちのスペースに関連商品や日用必需品を陳列して、購買意欲を掻き立てたり、買い物忘れに気づかせたりする方法がとられます。

小売店や量販店に買い物に行き、ついあれもこれもと買い物かごに入れてしまって予定より多くの金額を支払う、というケースは、この典型といえるでしょう。

4.チラシ・カタログ・ダイレクトメッセージを使う

既存客にチラシやカタログを送り、需要を喚起するやり方です。メールやアプリのプッシュ通知を使う方法もあります。「あなただけに!今だけ!」という触れ込みで特別感を刺激して、買わないと損と思わせるところに、効果を高めるポイントがあります。

クロスセル・アップセルを成功させる4つのポイント

クロスセルもアップセルも、やみくもに行えば顧客の購買意欲を減退させてしまうだけです。

クロスセル・アップセルを成功させるための4つのポイントをまとめましたので、ご覧ください。

  1. おすすめする理由・お得感を伝える
  2. 顧客ニーズの分析・把握を徹底する
  3. ECサイト上だけでなく適切なアプローチを取り入れる
  4. クロスセル・アップセルとあわせてダウンセルも有効

①おすすめする理由・お得感を伝える

クロスセルにせよアップセルにせよ「どうしてこれがおすすめされているのか」がわからなければ、「余計な広告ばっかりでてくるな」と不快感を感じさせてしまうだけです。例えばティーパックの紅茶を探していて、おおよそ関連のない、高級な和牛やティーカップでもないお皿を勧められてもピンときませんよね。

ですが、「紅茶を買おうとしていたら同じメーカーの新作フレーバが表示された」や、「紅茶に合うなと思えるクッキーが表示された」となれば、購入した後の時間を具体的に想像し追加購入を検討する方も増えるでしょう。追加購入で割引が受けられる、といったキャンペーンなどを行う際にも同様に、「このスカートなら合わせられそうだな、と思うブーツがでてきた」といったように顧客のニーズをくみ取った商品のアピールが有効です。

②顧客ニーズの分析・把握を徹底する

「検討している商品を顧客が何故必要としているのか」をくみ取り、アプローチしていくことが重要です。そのために欠かせないのが、顧客情報分析やユーザー行動分析といった、ECサイト運営を後押しするマーケティング。どういった行動をした顧客がどのような商品を選ぶのか、この商品を選んだ顧客は合わせてどのようなものを購入したいと思うのか、を分析していくことが重要です。また、リピートを頻繁にしてくれているヘビーユーザーと、数回訪れた事のあるユーザー、見ているだけで未購入のユーザーではアプローチの仕方も変えることが大切でしょう。

③ECサイト上だけでなく適切なアプローチを取り入れる

アップセル・クロスセルという販売手法を取り入れる上で有効となるのは、ECサイト上へのおすすめ商品の表示だけではありません。例えば購入額の多いリピーターには、「もっと購入しよう」と思えるようなDM配信や、より特別感を感じてもらえるようDM郵送も有効でしょう。定期的に決まった商品を購入してくれるリピート顧客であれば、「いつものこれもお得だけど、こういう類似商品も今ならお得ですよ」というメッセージが伝わるようにアプローチすることもできます。アプローチもやみくもにすれば良いものではありません。、購入頻度の少ないユーザーや、まだ購入したことのないユーザーにとって、うっとうしいと感じられてしまうことも考えられますから、顧客により対策を分けることも大切です。

④クロスセル・アップセルとあわせてダウンセルも有効

クロスセルもアップセルも、客単価向上にとても有効な販売手法です。ただし顧客タイプによって、またECサイトを利用する顧客の多くは「よりお得だから」ECサイトを利用している、ということを考えると、ダウンセルも有効な手法の1つとなります。客単価を上げたい、ということはもちろん大切な目的ではありますが、クロスセル・アップセルだけでは「お得な買い物をしたい」と考える顧客のニーズをくみ取ったとは言い難い状況になってしまうでしょう。ダウンセルとクロスセル・アップセルをうまく組み合わせていくことで、より客単価を向上させることも可能です。

AIDMA理論でクロスセル・アップセルの成功率UP!

クロスセル・アップセルの成功率を更に高めるために知っておいていただきたいのが、AIDMA理論です。

AIDMA理論とは1920年にサミュエル・ローランド・ホール(アメリカ)が提唱した、顧客が購買に至るまでの消費者行動の基本的なモデルの1つ。

どういうものかというと、

  • A(Attention) ⇒ 注目・認知
  • I(Interest) ⇒ 興味
  • D(Desire) ⇒ 欲求
  • M(Memory) ⇒ 記憶
  • A(Action) ⇒ 行動

と5つの英単語の頭文字をとり命名された理論で、A⇒I⇒D⇒M⇒Aの順に顧客の意思・行動が変遷するのだということを理論づけたものです。

AIDMA理論を知っておくことで、「このECサイトは広告ばっかりで買う気がしない…」「見当違いな広告ばっかりで目障りだな…」という事態を避けられるでしょう。

AIDMA理論で重要なAIAとは

AIDMA理論では、顧客の行動をAIDMAを更に3つの段階に分けて考えます。

  1. A(Attention):認知段階(注目・認知)
  2. I(Interest):感情段階(興味・欲求・記憶)
  3. A(Action):行動段階(購買)

認知段階にいる顧客に「これはもっと高いけどいいものですよ」と勧めて購買に繋がるか、と考えてみてください。

顧客が今どの段階にいるのかを把握しておくことで、それぞれの段階に合わせて最適なアプローチができる、そのためにAIDMA理論に基づき顧客の行動を分析することが重要なのです。

AIDMA理論と、AIAについて理解していただけると、次に解説するクロスセルとアップセルを成功させやすいアプローチタイミングについてもわかりやすくなります。

クロスセル・アップセルが成功しやすいアプローチタイミング

クロスセルもアップセルも、押し売りに感じられずに見てもらえるタイミングで仕掛けることが重要です。

ですがクロスセル・アップセルはそれぞれ目的が異なりますから、手法から考えても同じタイミングで仕掛けても成功する可能性は低いでしょう。

  • クロスセルの場合はカートに商品をいれたあと
  • アップセルの場合は商品を購入には前向きだけどカートに入れていない時

上記のタイミングがそれぞれの手法を展開するのに適したタイミングです。クロスセルについては、カートに商品を入れたときが最適なので、ECサイト上での表示タイミングはわかりやすいですが、アップセルについては難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

アップセルを効果的に行うためには、ユーザー行動分析を行うことが重要です。

購入意思を推し量るにはユーザー行動分析もおすすめ

アップセルを成功させ顧客の購買行動に繋げるためにおすすめするのが、ユーザー行動分析です。ECサイトの商品ページ内に、動画・画像・商品詳細ボタンなどを設置し、イベントトラッキング設定を活用することも有効です。それと合わせておすすめするのが、ヒートマップ分析です。ヒートマップ分析では、顧客がどのあたりまでページをスクロールしたかなどを分析・把握することができます。それによりどれだけ強くその商品に興味を持っているか=どの程度購買意欲があるか、を推し量ることができます。

ヒートマップ分析は、以下の3つの種類があります。

  • クリックヒートマップ:どこがクリックされているかわかる
  • アテンションヒートマップ:注視されている部分がどこかわかる
  • スクロールヒートマップ:どこまでスクロールされているかわかる

こうしたマーケティングツールを上手に活用することで、クロスセル・アップセルで効果を得て客単価向上に繋げていくことができます。

ECサイト運営にクロスセル・アップセルを導入するメリットとデメリット

ECサイトの運営に欠かせない販売手法として注目されているクロスセル・アップセルについて解説してまいりました。ここではクロスセルとアップセルを実施することで、どのようなメリット・デメリットがあるのかまとめてまいります。

クロスセル・アップセルのメリット

  • 客単価向上に繋がる
  • 既存顧客の囲い込みができる
  • 既存顧客だけでなく新規顧客の獲得も可能
  • 客単価向上により利益率も向上する

クロスセル・アップセルのデメリット

  • 取り扱う商品を増やすことも必要なので各種コストがかかる
  • 的確に実施できないと購買意欲をそいでしまう

デメリットとなるものに、コストがかかるというものあり、気になる方も多いのではないでしょうか。クロスセルもアップセルも、「顧客が今見ているものとは違う商品を勧める」ものですから、商品としてのラインナップをある程度拡充した上で行うことができるものです。仕入れ、販売するだけでなく、在庫として保管することにもコストがかかりますので、そうした意味でコストが増大します。

また仕掛けるタイミングや頻度・アプローチの仕方を間違えてしまうと「鬱陶しい」と感じられてしまい、逆効果になる可能性もあります。ここまでお読みいただけた方には、適切なアプローチタイミングやその図り方についてもお伝えしていますので、このデメリットについては心配いらないでしょう。メリットとしては既存顧客に重きをおいてはいるものの、正しいプロセスで仕掛けることで新規顧客の獲得にも役立つ手法ですから、十分に効果を感じることができるのではないでしょうか。

まとめ

ここまでクロスセル・アップセルについて解説してまいりました。

どちらも特に既存顧客の客単価向上に繋げられる販売手法とお伝えした通りですが、それぞれ、追加購入を促すもの、より高い商品の購入を促すもの、と手法が異なることもお伝えしてまいりました。

それぞれ手法が異なることから、アプローチに適したタイミングが異なること、そのタイミングを図るために必要な手法についても解説させていただきました。

こちらでお伝えした情報を活かしていただき、御社の今後のECサイト運営が、より多くの顧客に愛され順当に利益率を向上していただくことができれば幸いです。

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この記事の著者について

MOTOMURA物流編集部

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物流の基本や改善ノウハウなど、物流担当者が知っておきたい様々な情報を配信している部署です。


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