物流DXの実現で業界の課題は解消されるのか?

この頃、頻繁に耳にするようになった物流DXというワード。しかし、物流DXとは実際どのようなものなのか、具体的な中身がなかなかわかりづらいという方もおられるのではないでしょうか。そこで今回は、物流DXとは何かという定義から概要情報、物流業界が直面する課題、物流DXの導入事例までを詳しく解説します。

物流DXとは?

物流DXとは、国土交通省の定義によると「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」とされています。DXとはそもそも「デジタルトランスフォーメーション」の略で「デジタルによる変容・変革」と訳されます。デジタル技術を活用することにより、生活やビジネスの在り方をかえようとするものです。

DXとIT化は似ているようで異なる概念です。IT化はあくまでも業務効率化の手段であり、DXはその先にある目的と言っていいでしょう。よって、ビジネスモデルやサービスそのものが劇的に変化した結果、皆がそのメリットを感じ、生活や仕事の質が向上する状態、そこまでいって初めてDXが実現したと言えるのです。

そのDXを物流業界で行うとどうなるでしょうか。例えば、AmazonのようなECサイトで何かを注文したとします。すると配達員が荷物を届けてくれます。この際、現在は主に配送車が使われていますが、DXを行いドローンに置き換えることで、大幅な変化が生じます。

ドローンは無人で空中を移動するため、交通渋滞の影響を受けず、人件費も抑えられます。通信機能を有しているため、ドローンが正確な到着予定時刻をスマートフォンなどのデバイスを通じて、リアルタイムに購入者へ知らせることもできます。

さらに、AI化が進めば、運行管理をサプライチェーンシステムに組み込むことで、ドローンが自律的に配送できるようになります。

もちろんこれはまだ実現していないものです。ですが、物流DXが実現するとは、こういった大きな変革が起こることを示す好例です。ビジネスモデルそのものが大きく変容するでしょう。

当然物流には他にも小売店などへの商品配送はもちろん、輸出入に関わるグローバルサプライチェーンもあります。物流DXとは、これら全てに対し、IT技術を用いて変革をもたらすことなのです。

物流・運送業界が抱える課題

現在、物流・運送業界はいくつかの課題を抱えています。

そのひとつが労働力の不足です。国土交通省の資料によると、2019年にドライバーが不足していると回答した企業は約7割に及びました。これにはいくつか原因があり、そのひとつが日本の人口減少です。今後も日本の人口が減少すれば、労働に従事する生産年齢人口も減少し続けます。また、物流・運送業界の労働環境があまり良くないということも挙げられます。トラック配送業者の労働時間は全業種平均より約2割長く、年間賃金は約1~2割ほど低いというデータがあります。年齢構成も全業種平均より高齢の人の割合が高くなっています。このような中であえて物流・運送業界を選択しようと考える人は多くないでしょう。

ふたつ目の課題としてトラックなどの積載効率の低下が挙げられます。積載効率とは、配送するトラックにどれだけ空きが少なく運用できているか、効率的であるかを見る指標です。2011年の営業用トラックでは40%以上だったものが2019年には40%を切っており、下げ基調にあります。この主要因はEC市場の成長と小口配送の増加です。Amazonや楽天のような物販系のEC市場は現在も成長中であるとデータは示しています。BtoCのEC市場が増えれば、小口配送が増え、トラック輸送の非効率化が進んでしまうのです。

また、新型コロナウイルスのような感染症は、輸出入に関わるグローバルサプライチェーンに不安定化をもたらすことも明らかになっています。

参照元:国土交通省「最近の物流政策について」

物流DXで実現できること

では、物流DXでは何が実現できるのでしょうか。ここからは、物流DXが実現できることについて具体的に紹介します。

物流の機械化・自動化

物流DXで実現できることのひとつが「物流の機械化・自動化」です。従来は人の手でこなしてきた作業を自動化する試みです。いくつか例を挙げると以下のようなものがあります。

  • AIが航路提案を補助する自動運航船
  • トラック配送における後続車無人システム
  • ドローン配送システム
  • 倉庫内作業の自動化(ピッキングの自動化、自動配送ロボットなど)

2022年時点で、自動運航船はAIによる船員の判断をサポートするレベルですが、国土交通省が掲げる実現目標の中には「自動操船機能」、陸上施設から船を操る「遠隔操船機能」、大型旅客船の「自動離着桟機能」などがあります。
後続車無人システムでは、3台のトラックが高速道路で並んで走行し、時速80kmでの走行に対応します。また自動ピッキングなどにより倉庫内を自動化することで業務削減や人為的ミスの低減にもつながります。

物流のデジタル化

物流DXで実現できる事項のもうひとつの側面は、「物流のデジタル化」です。デジタル技術の導入により以下に示すような取り組みによって、従来の方法よりも業務負担を大幅に軽減できます。

  • 各種手続きの電子
  • 配車管理のデジタル化
  • 荷物、トラック、倉庫のマッチングシステム
  • トラック予約システム
  • 物流、商流データ基盤、港湾データ基盤を構築し効率化

倉庫管理システムでは、入荷、出荷、在庫管理はもちろん、ピッキングの最適化提案ができたり、スマートフォンやタブレットで管理できたりするものがあります。中にはマテハン機器(荷役作業用機器)や物流ロボットとの連携機能を備えているものもあります。

また、AIが自動でシフトを作成する勤怠管理システムがあれば、物流現場においても大いに有用でしょう。

国土交通省が推進する「SIPスマート物流サービス」は、『メーカー』『卸』『小売』間のデータベース連携不足を解決しようという試みです。もともとメーカーや小売りが抱える課題として、生産予測、仕入れ予測が困難であることなどがありました。「SIPスマート物流サービス」ではこれらの統一的なデータ基盤を築き、データ連携することでサプライチェーンの全域での最適化を図ります。

物流DXに取り組む各企業の事例

ここでは、実際にDXに取り組み企業の具体例を3つ紹介します。

事例1:日本郵船株式会社

日本郵船はESG経営に関連したDXを強く推進しています。乗組員と船舶管理会社間の情報共通をリアルタイムかつ密に行うための船舶パフォーマンスマネジメントシステム「SIMS」の導入や船内で作業効率化を図る「電子M0チェックシステム」などを導入済みです。
また、2018年には船舶管理業務のプラットフォーム「NiBiKi」の運用を開始しました。通常、船員は船舶管理会社に対して様々な申請書や承認書を作成し報告する義務があります。その中には煩雑な作業も多く、労力がかかっていました。「NiBiKi」はそのフローを電子システムに落としこむことで作業簡略化を実現しました。

事例2:日本航空株式会社

日本航空では、社内人材と社外パートナーシップの連携を強化し、オープンイノベーション創出の基盤を構築しています。MaaS、空飛ぶ車、ドローン事業などを含めたエアモビリティ事業を推進しており、ドローンオペレーターの育成には、日本で初めてパイロットの訓練ノウハウをカリキュラムに取り入れました。

事例3:中国の大手物流企業「蘇寧物流」

蘇寧物流は完全に無人化された倉庫「スマート5G無人倉庫」を所有していることでも有名です。倉庫の中では無人フォークリフト、無人搬送ロボット、自動梱包機などの働きにより、商品の集荷から仕分けまで全てのプロセスを自動で行っています。
従来は人間が行っていた作業をロボットがすることで、出荷までのスピードが飛躍的に向上しています。

まとめ

物流業界におけるDX化は、もはや時代に即した必須の取り組みになりつつあります。今後も人口減少が予想される日本では、生産性の向上や競合との差別化、ワークライフバランスの充実などを考えると、DX化を実現することが急務となるでしょう。

株式会社MOTOMURAは、物流DXへの取り組みを進めつつあり、高品質な倉庫管理や発送代行の業務委託を行っています。ECサイトの発送代行から、商品管理、保管、資材調達まであらゆる業種業態に対応しているので、配送管理に関する課題解決を図る場合は、一度相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者について

MOTOMURA物流編集部

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