倉庫業法とは?貸し倉庫を営むために必要なことや罰則規定も詳しく解説!

倉庫

倉庫業法は、特に倉庫業を営む事業者や今後倉庫業を行いたい方が知っておく必要のある法律です。

倉庫業法とは

倉庫業法とは、倉庫を利用する人の利益を保護することを目的に制定された法律です。

第一条 この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉荷証券の円滑な流通を確保することを目的とする。

引用:昭和三十一年法律第百二十一号 倉庫業法

倉庫業の目的は、さまざまな物品を保管することです。物品を利用者が求める一定の基準以上の状態で保管するためには、温度・湿度の管理、害虫の防止、構造の強度、火災時の補償やセキュリティなど、適切な条件が不可欠です。倉庫業法では、建物やスペースを倉庫として第三者に貸しても安全かどうか、貸主に必要な資格があるかどうかを行政が判断・精査することを法的に補っています。

倉庫業とは

そもそも倉庫業とは、預かった品物を倉庫に保管する業務で、原材料から完成品、冷凍・冷蔵品、危険物まで、人々の生活や経済活動に欠かせないさまざまな品物を大量に安全に保管する役割を担っています。倉庫業は、保管物によって大きく3種類に分けられます。

普通倉庫業冷蔵倉庫業水面倉庫業
農業、製造業、鉱業などで扱われる荷物や家財、美術品などの消費財を対象とし、1類・2類・3類倉庫・貯蔵槽倉庫・野積倉庫・危険物倉庫・トランクルームの7つのカテゴリーに分類する。8類物品(水産物や農産物、冷凍食品、畜産物など10℃以下で冷蔵・冷凍される商品)を扱う。水に浮かべて物を保管する倉庫業のことで、5類物品(原木等)を保管する倉庫を指す。

自家用倉庫と営業倉庫の違い

実は倉庫には、自家用倉庫と営業倉庫の2種類があります。自家用倉庫は、所有者があくまで自分の物品を収納・管理するための倉庫で、営業目的ではありません。一方の営業倉庫は、所有者が第三者に貸与して、その物品を保管するための倉庫で、倉庫業法が対象としているのは、こちらの営業倉庫になります。

ちなみに、ロッカーで私物を一時的に預かったり、クリーニングや靴磨き、物品の修理や補修などで、客が所有する物品を一時保管したりする場合は、倉庫業にはあたりません。よって倉庫業法からも適用除外となります。

倉庫業を営むために必要なこと

営業倉庫として倉庫業を営むためには、その旨を国土交通大臣に申請し、倉庫業者として登録しなければなりません。具体的には、以下のものが申請内容になります。

  • 所有者の氏名や住所
  • 倉庫の場所
  • 国土交通省令上の倉庫の種類
  • 保管する物品の種類
  • 倉庫の設備

正式に営業するために、特に重要な条件や義務について、以下に解説しましょう。

倉庫管理主任者の選任(倉庫業法11条)

倉庫業を営むためには、国土交通省令で定める、倉庫管理に関する適切な知識や能力をもつ「倉庫管理主任者」を選任する必要があります。倉庫管理主任者は、倉庫管理業務について一定の実務経験を有する者の中から選任されるのが原則です。しかし実際には、該当する人材がいないケースも少なくありません。その場合は、国土交通省が定める倉庫管理主任者講習を受講することで条件を満たすものと認められています。講習は、一般社団法人 日本倉庫協会が担当しており、全国の主要都市で年1回を目安に開催されています。

建築・設備基準の遵守(倉庫業法12条)

営業倉庫は、自家用倉庫や一般の建築物に比べると、厳しい建築基準が設けられています。壁や床の強度、耐火・防水構造、害虫防止といった側面で基準をクリアしなければなりません。

火災保険への付保(倉庫業法14条)

倉庫業を運営する場合、事業者には火災保険への付保責任が課されています。全国規模で見ると、倉庫火災は、意外と多く発生しています。2010年代だけでも、1〜3年ごとくらいのペースで、巨大倉庫における大規模火災が起きており、保管物品だけでなく従業員や周辺エリアにも甚大な被害を及ぼすケースがありました。倉庫は、基本的に休日や夜間は、無人になることが多いです。しかも保管してある物品によっては可燃性の強いものも少なくありません。とりわけ化学薬品や燃料が燃えると消化活動は難航し、短時間のうちに二次、三次と被害は拡大する恐れがあります。他にもスプリンクラーなどの防火設備が完璧には作動しなかったり、防火扉が物品に邪魔されて閉じなかったりといったイレギュラーな事態に見舞われる例もあります。このような背景から、倉庫事業者には火災保険への加入が義務付けられています。

近年、EC需要の急速な高まりにより、各地に物流拠点が増加しています。しかも大規模化の傾向が強いため、万が一火災が発生した場合、その被害は深刻になると予想されます。よって、倉庫業者には、それを防ぐ対策や補償体制の構築の義務が重く課されているといえるでしょう。

これから倉庫業を始めようとしている場合は、この事実をしっかりと認識しておく必要があります。

罰則規定について

上記のように、倉庫業は、一つ間違えると利用者や付近住民に多大な損害を与えかねません。よってそれを防ぐ意味でも、倉庫業法により厳しい規定が設けられているのです。遵守できない場合は、罰則もあり、倉庫業法の28〜32条にわたって細かく規定されています。

  • 倉庫業者としての登録義務に違反したり、他人に名義を貸与したりした場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処されるか、併科されます。
  • 倉庫業者として登録した内容に違反した場合は、6ヶ月以内の懲役もしくは50万円以下の罰金に処されるか、併科されます。
  • 倉庫寄託約款の届出をせずに営業した場合は、30万円以下の罰金に処されます。

これ以外にも罰則規定は複数あるので、倉庫業の運営を予定しているならしっかりと把握しておく必要があるでしょう。

標準倉庫寄託約款の効力

営業倉庫を貸与する際は、利用者と事業者間で賃貸借契約を結ぶのが、一般的です。しかし中には、口約束のみで貸すケースもあります。

そのような場合でも、火災などのトラブルが発生した場合、国土交通省に登録申請をする際に提出する「標準倉庫寄託約款」によって、事業者に利用者保護や損害賠償を促すことができます。そのため、利用者からすると賃貸借契約を締結しておくに越したことはありませんが、何らかの理由でそれを拒否されていた場合でも、いざという時には、自分への保護が強く優先されるので安心です。

まとめ

物流需要の増加が勢いを増す中、今後も倉庫業へのニーズは、確実に高まり続けるでしょう。すると、新規参入やサービスをめぐる過当競争も激化していくと予想されます。

その意味で倉庫業法の役割は、ますます重要となるに違いありません。加えて事業者も利益ばかりを追求するのではなく、自ら利用者保護のために誠意と責任感を強くもった事業展開を意識する必要があるでしょう。

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