「任されている倉庫や物流センターのPPMを改善したい」「物流現場でPPMを追求する意味を知りたい」「高品質の物流サービスを提供している倉庫はどうやって探す?」
物流業界ではPPM(ピーピーエム)と呼ばれる数値でサービスの品質が確認できるといわれています。しかし、数値の意味をしっかりと把握していないと、評価や実際の影響、対策を考えにくいです。場合によっては、間違った見方をしてしまい、適切な対応ができずに無用な費用を発生させてしまう可能性があります。
この記事では、物流業界で使用されるPPMについて以下の内容をわかりやすく解説します。
- PPMの意味と計算方法
- PPMは自社の物流品質を追求するのに適した指標
- 物流現場でPPMが上昇する原因とカテゴリー
- PPM上昇の原因とその発生タイミング
- PPMを改善する方法
この記事はPPMの概要や影響、改善方法などを考える際に参考になるでしょう。
PPMの見方や改善するタイミングを把握できれば、今よりも高品質な物流サービスの提供が可能になります。
目次
物流業界でのPPMの意味と計算方法
物流センターや倉庫の品質管理において用いられるPPMの意味と計算方法について解説します。
- PPMとは100万件あたりの誤出荷率
- PPMの計算方法
PPMとは100万件あたりの誤出荷率
PPMとはParts Per Million(パーツ・パー・ミリオン)の頭文字であり、100万件あたりで誤出荷が起きる回数を表しています。この数値が高いと、誤出荷や誤配送、貨物事故、そして顧客のクレームが増加することを意味します。
そのため、高い物流品質のサービスを提供するには、PPMの数値を低くする努力が必要です。反対にPPMの数値が小さいほど物流品質が高いため、以下の3つが少ないことになります。
- ピッキングミス
- 誤配送
- クレーム
当然、商品を預けるクライアントから高い評価を得ることができるはずです。つまりPPMは、誤出荷率の数値だけでなく、PR活動に使用できる重要なツールといえるでしょう。
PPMの計算方法
前述したようにPPMは100万件の作業で発生する誤出荷を表した数値です。
計算する場合は以下の式で算出できます。
- PPM= 誤出荷発生件数 ÷ 総作業件数 × 100万
計算した結果が「10」だった場合は、100万件の出荷あたり10件の誤出荷やクレームが発生することを意味しており「10PPM」と表記します。一般的に、作業者による手作業が多い倉庫ではPPMが高くなる傾向にあります。反対に、完全自動化された倉庫ではPPMが低く、高い物流品質の実現が可能です。
ただし、PPMがゼロになることはなく、一般的に10PPM程度が実現可能な限界値とされています。
PPMは自社の物流品質を追求するのに適した指標
PPMは物流品質を追求するのに適した指標ですが、あくまで自社の倉庫や物流センターのサービスのクオリティを追求する場合に有効な数値です。
PPMを追求する意味
物流現場ではPPMを用いて品質を計りますが、PPMの数値だけで物流品質を完全に判断するのは難しいです。
というのも、PPMは他社との比較には適していないからです。
各社の倉庫やセンターでの作業手順、作業内容、システムが異なるため、PPMを用いた単純な比較は不可能です。正確な比較をするなら、扱っている商品やシステム、設備などを同じにしないといけません。
そのため、15PPMの物流倉庫が10 PPMの物流倉庫に比べて圧倒的に優れているという意味にはならないため注意しましょう。したがって、PPMとは、各企業が自社基準で定めた物流品質を示す数値と認識しておくとちょうど良いかもしれません。
PPMを追求すると得られる2重メリット
物流品質の向上のためPPMの数値を追求することは、直接的および間接的メリットをもたらします
直接的なメリットを列挙すると以下のとおりです。
- 顧客からの問合せ件数が減少(コールセンターなど受付業務の負荷軽減)
- 返品の受入れ・再送作業の減少(作業工数・労力の削減)
これらのメリットは倉庫や物流センターが直接的に得られるメリットです。
次に間接的に得られるメリットを列挙します。
- 顧客満足度の向上
- 物流コストの削減
PPMを追求してクレームや返品が減ることで、倉庫を利用している顧客満足度が向上します。また、無駄が省けることで物流コストが下がり、商品を預ける顧客に割安で高品質のサービスが提供できます。当然、他の倉庫より割安で、物流品質の高いサービスが提供できれば、他社との差別化になるでしょう。
つまり、PPMを追求すると自社内のメリットと、顧客のメリットの両方を同時に得られるわけです。
高品質な物流サービスは、物販ビジネスの成功には不可欠な要素であり、その追求のための資金投入は物流企業にとって価値ある投資といえるでしょう。
物流現場でPPMが上昇する3つの原因とカテゴリー
物流現場においてPPMの数値が高い場合、誤出荷の内容を把握するため分析が重要です。一言で誤出荷といっても、以下の3つのカテゴリーに分けられます。
- 誤数:出荷する商品個数が違う
- 誤品:ピッキングミスで商品が違う
- 誤発送:商品の送り先が間違っている
これら3つのなかで倉庫や物流センター内で起きるのが誤数と誤品です。
もちろん、誤発送は発送伝票の貼り間違いなど、倉庫内でのミスが原因で起こることもあります。とはいえ、誤数と誤品が倉庫や物流センター内で起きない体制を構築することが重要です。
また、いずれの誤出荷であっても顧客からクレームにならなかった場合は、PPMとしてカウントできません。カウントされなければ無かったことになります。
しかし、誤数と誤品に対する根本的な対策ができないため、再発する可能性が高いといえるでしょう。
また在庫確認の際に、誤差が大きくなるという問題も生まれます。
つまり、誤数と誤品は在庫管理においても欠品や過剰在庫に発展する可能性を含んでおり、重点的な対応が必要です。
PPM上昇の原因とその発生タイミング
倉庫や物流センター内で誤数や誤品が起きない体制を構築するには、これらの問題が起きるタイミングを知る必要があります。
タイミングがわかれば、PPMを改善する糸口になるからです。
誤数と誤品が起きるタイミングは以下の2つがあげられます。
- 出荷情報のミス
- ピッキング・仕分けミス
これらのタイミングで対策方法が異なります。
出荷情報のミス
出荷指示の段階で誤った情報やエラーが含まれている場合は、ピッキングや仕分け作業でミスを発見するのは困難です。
出荷指示で発生しやすいミスには、以下のようなケースがあります。
- 品番・名称・数量の入力ミス
- 顧客の特別な要望の記載漏れ
特に、注文情報を手入力している場合はミスが生じやすい傾向にあります。
このため、注文情報と入力情報の確認手段を設けることが重要です。
入力情報が正確である場合でも、システムやデータベース、機械に問題が出る可能性もあるため、データをチェックする仕組みを確立しておきましょう。
ピッキング・仕分けミス
ピッキングや仕分けミスは、誤出荷では珍しくない原因です。
これらのミスは、マニュアル化が不十分な現場や、作業者の思い込みにより発生しやすい傾向があります。
特に、現場で似た色や複数サイズの商品を扱っている場合には、誤って選んでしまうリスクが高まります。
また、期間限定のキャンペーン品のピッキングでもミスが生じやすいです。
出荷情報にミスがなくても、現場のピッキングや仕分で対策が十分に行われていない、作業者の熟練度に依存している体制では、常に誤出荷が起きるリスクを含んでいます。そのため、類似品やサイズ展開商品のピッキング時には、作業手順を明確に定めたフローの構築が重要です。
物流品質の指標であるPPMを改善する方法
PPMの数値を悪化させる原因がわかれば、改善方法の検討に入れます。
この章では、大まかに2つの改善方法を説明します。
- デジタル化
- 業務のマニュアル化
説明している内容を参考に実際の現場で試行錯誤をしながら、効果のある改善方法を見つけ出してみてください。
デジタル化
人為的なミスが起きないようにデジタル化すれば、PPMは短期間で改善が可能です。例えば、ハンディスキャナーやRFIDを用いたスキャン検品、他にも自動ピッキングロボットを導入すれば人為的ミスが起きる作業が削減され、PPMが改善されます。
倉庫内で人為的ミスが削減できれば、より効率的かつ正確な物流作業が実現するでしょう。これにより、PPMの数値を改善して顧客満足度の向上にも貢献します。また、デジタル化を進めて、少ないスタッフで稼働を可能にしておけば、人口減少に伴う労働力不足への対策にも効果があります。
そのため、デジタル化やロボットの活用はPPMだけでなく、物流ビジネスを維持するためにも不可欠といえるでしょう。
まとめると、デジタル化はPPMの改善や顧客満足度の向上だけでなく、今後の人手不足への対策としても有効です。
業務のマニュアル化
人為的ミスが起きている業務のマニュアル化をすれば、誤出荷を減らし作業効率の向上が期待できます。もちろん、マニュアル化には時間と手間がかかります。しかし、これにより作業者が業務中に迷うリスクが減少し、ミス発生の件数が減少、また新人の育成が容易になるなど、多くのメリットが得られます。
結果として、生産性の向上や品質の安定、コスト削減が達成できるはずです。
誤出荷が発生した際には、グループリーダーや現場スタッフが共通認識を持てる環境を用意しましょう。また、現場の意見を取り入れた対策を検討することが重要です。作業者の対策が取り入れられれば、管理者への信頼にもつながります。
ただし、業務のマニュアル化をどれだけ進めても、デジタル化が進んだ自動物流センターのほうがPPMの数値が高い傾向にあります。
したがって、PPMの改善にはデジタル化とマニュアル化を両方進めることが理想的です。両方のアプローチを組み合わせることで、物流品質をより一層向上させることが可能になるでしょう。
まとめ:物流品質の指標PPMは誤出荷率の少なさの証明
PPMは「Parts Per Million」の略で、100万件あたりの誤出荷回数を表します。
この数値が高いと、誤出荷や誤配送、クレームが増加するため、物流品質を高めるためにはPPMを低くする努力が必要です。
そのためには、誤出荷の原因と発生するタイミングを把握してから、対策を考えることが重要になるでしょう。
つまりPPMは、自社の倉庫や物流センターが提供している物流サービスの品質を表す1つの指標であり、成果といえます。
PPMをより低い数値に改善することで、倉庫を利用する顧客や商品の配送先からの満足度が得られるでしょう。