物流拠点を集約すると、業務効率が改善できるイメージがありますよね。しかし、拠点を集約するメリットはそれだけではありません。また、集約するデメリットもあらかじめ知っておかないと、想像よりも業務効率が上がらなかったりします。
そこでこの記事では、物流拠点を集約した際のメリット・デメリット、そして土地選びに関しても解説します。
- 物流拠点の集約で得られるものは社内業務の効率化
- 物流拠点を集約するメリット3選
- 物流拠点を集約するデメリット3選
- 土地選びで注意すること3選
ぜひこの記事を参考にして、物流拠点の集約に関して一方的ではなく、全体を俯瞰して見られるようになってください。
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目次
物流拠点の集約で得られるものは社内業務の効率化
一般的に物流拠点を集約すると、必要な人員や設備が集中しやすくなり、社内の業務効率が上がります。
ただし、配送先までの距離が長くなりやすく、土地選定が難しいなどデメリットもあるため、一概に集約すれば効率が上がるわけではありません。また、扱う商品や場所によっては、一ヵ所に集めないほうが効率的なケースもあります。
したがって、事前に検討を行う際には、社内だけでなく配達先などの外部の要因も考慮しましょう。トータルで今まで以上の効率化が実現できる場合は、物流拠点の集約は大変有効といえるでしょう。
そのためには、集約することで得られるメリットだけでなく、デメリットとリスクを考慮して検討してください。
物流拠点を集約するメリット3選
物流拠点を集約するメリットを3つ紹介します。
得られるメリットは、主に社内に関するものが多い傾向にあります。
- 人件費や設備にかかるコストを絞れるため経費節約に効果がある
- 在庫管理がしやすくなる
転送回数が減り配達効率が向上する
1つずつ確認していきましょう。
1. 人件費や設備にかかるコストを絞れるため経費節約に効果がある
まず、集約してあるほうが全体として人手や設備が少なく済むため、同じ物量を運ぶ際に拠点が複数ある場合よりもコストをかけずに運べるでしょう。
実際に、運送会社で大型物流拠点を都市部の郊外に建設した結果、業務効率が上がったという事例はいくつもあります。
したがって、業務効率アップや経費節約を最優先に考えるなら、物流拠点は集約するほうが効果的です。
2. 在庫管理がしやすくなる
物流拠点が集約されると、在庫管理がしやすくなります。同時に、管理に必要な労力も少なく済みます。
対して、物流拠点が複数あると、それぞれの拠点ごとに在庫管理をしないといけません。当然、管理するための労力も拠点の数だけ増えます。
したがって、物流拠点を集約しておくと在庫管理は容易になり、在庫のムラが起きにくく、効率化ができます。
3. 転送回数が減り配達効率が向上する
拠点を集約すると、荷物の転送回数が減り、在庫の回転率も良くなります。
一般的に、一部の拠点で在庫が欠品すると、在庫のある拠点から商品を転送して対応します。その結果、転送時間が上乗せされて、配達までの時間が長くなってしまいます。
しかし、拠点が集約されていれば、在庫が大型の物流拠点で管理されているため、欠品にもなりにくいです。そのため、他の拠点から転送してもらう必要もなくなり、配達効率が向上します。
物流拠点を集約するデメリット3選
ここからは、物流拠点を集約するデメリットを紹介します。内容は以下のとおりです。
- リードタイムを短縮しづらい
- 配送料が高くなりやすい
- リスクの分散が難しい
1つずつ確認していきましょう。
1. リードタイムを短縮しづらい
物流拠点を集約すると全体の拠点数は減るため、納品先までが遠くなり、配達するまでのリードタイムが長くなってしまう傾向があります。そのため、配送するものが生鮮食品や迅速に配達が必要な商品だった場合は、拠点の集約によって効率が落ちてしまうでしょう。
したがって、リードタイムを長くしないように拠点で扱う商品や、取引先の納期の調整などをしないといけません。
2. 配送料が高くなりやすい
前述したリードタイムと関連して、物流拠点を集約すると配送先までの距離が伸びて、配送料が高くなります。拠点が複数ある場合は、最寄りの拠点から配送ができるため配送料は安く抑えられます。一方で、物流拠点を集約すると、配送先が遠くても輸送しないといけません。
昨今、原油が高騰して輸送コストが上がっているため、安易に拠点を集約すると、負担が増すでしょう。
3. リスクの分散が難しい
物流拠点を集約すると、台風や地震などの災害によって拠点が機能しなくなった場合、業務全体に深刻な影響を与えます。物流拠点が分散している場合は、近隣の拠点からカバーもできます。しかし、拠点を集約した場合は、拠点同士の距離が遠すぎるため、互いをカバーすることができません。
災害が多い日本という土地では、物流拠点の集約は、本来は望ましくないといえるでしょう。
物流拠点を集約する際の土地選びで注意すること3選
この章では、物流拠点を集約する際の土地選びについて注意することを3つ解説します。順番は以下のとおりです。
- 契約する土地の有効面積を調べる
- 集約先に選ぶ場所の立地条件を確認する
- コストパフォーマンス(費用対効果)を事前に計算する
1つずつ説明します。
1. 契約する土地の有効面積を調べる
契約する土地の面積のうち、どれくらいの割合が建物に利用できる広さかを必ず調べておきましょう。
有効率と呼ばれますが、土地ごとに建物に利用できる広さが異なります。わずかなパーセンテージの違いが建物の広さに影響を及ぼすため、拠点を運用する際に結果が大きく違ってくる可能性があります。借りる土地代と面積だけで判断せずに、建物がどれくらいの広さになるか事前に計算しておきましょう。
一般的に、土地代は安いほうが好条件です。しかし、有効面積を加味した上で判断するようにしてください。
2. 集約先に選ぶ場所の立地条件を確認する
拠点の候補となりそうな土地の立地条件は必ず調べておきましょう。少なくとも以下のポイントは調べておかないと、拠点を移しても効率化が実現できなくなる可能性があります。
- 配送先となる顧客の分布
- 高速道路までの距離やアクセスのしやすさ
- 面している道路の道幅や車輛への法規制の有無
- 駐車スペースとして確保できる広さ
- 空港や港までの距離
- 鉄道やバスなど公共交通機関の有無
物流拠点の集約は効率化が主な目的です。しかし、選んだ場所が微妙に使いにくい立地だったりすると、非効率になってしまう可能性もあるため、地図だけでなく実際に現場に行って確認も必要です。
3. コストパフォーマンス(費用対効果)を事前に計算する
物流拠点の集約を決める前に、現在の収支からどれくらいプラスになるのか明確な数値化が必要です。物流拠点を集約した結果、社内業務の効率化はできたものの、配達まで時間がかかったり、輸送コストが高くついたりするようでは、効果的とはいえません。
物流拠点を集約するのであれば、今よりも収支の改善が見込めるのが最低条件といえるでしょう。
物流拠点の集約ではリスク管理も一緒に行う
利便性とコストのバランスが取れていて、現在の体制よりも効率化ができるのであれば、物流拠点を集約する効果は大きいといえます。とはいえ、燃料の高騰が続いていることから、集約したことで増える輸送コストをどうやって転嫁するかを先に考えておかないと、企業全体の収支にプラスにならない可能性があります。
また、拠点の集約は、災害などのリスク管理が難しいという大きなデメリットを抱えているため、万が一に備えた対策を拠点を集約する前に考えておきましょう。