D2Cという言葉を目にする機会が増えました。それと同時に、似たような言葉でB2B・B2C・C2Cというものも目につき、これらの言葉は何が違うのか戸惑われる方も多いかもしれません。
D2Cとは、顧客と生産者が直接やり取りを行うビジネスモデルのことで、的確な戦略を打ち出すことで最大限に顧客とのエンゲージメントを高めることができ、企業としてのブランディング向上にも繋がるものです。
ここでは具体的に、D2Cとは何か、どういう点に注意すべきか、どのようにすることで成功しやすくなるのかお伝えしてまいります。
目次
D2Cとは
D2C(Direct to Consumer)とは、小売や卸など既存の流通網で販売するのではなく、「製造者から顧客に直接商品を販売する」というものです。
どのように販売するかというと、製造者が自社で準備したECサイトを活用して商品を販売する流れとなります。販売業者を介さない・(基本的に)店舗を持たずネットワーク上の販売網を活用するのが特長といえるでしょう。
D2Cを採用する企業が増えてきたのは2000年ごろで、日本に先駆け海外では自国内のみならず越境ECで活発に取り入れられてきているビジネスモデルの1つです。
D2CとB2B・B2C・C2Cの違い
D2Cと似たような言葉でB2B/B2C/C2Cという同じくビジネスモデルを表す言葉があり、違いに戸惑う方も多いでしょう。違いをご理解頂くため、それぞれの意味を解説致します。
B2B
B2Bは英語で記載すると「Business to Business」となります。そのままの意味で対顧客ではなく企業同士が取り引きをするビジネスモデルがB2Bです。人材派遣業やコピー機・PCなどの企業向け営業がこれにあたります。
B2C
B2Cは「Business to Consumer」の略で、企業(小売業などを含む)と顧客が取り引きをするビジネスモデルを表しています。流通小売業・デパート・スーパーなどがBtoCにあたり、近年盛り上がりを見せているECサイトもB2Cに分類されます。もっともD2Cとの違いに戸惑うのがこのB2Cではないかと推測しておりますが、広義ではD2CもB2Cに含まれるという解釈もあるものの、製造者が顧客と直接取引をするかどうか、という部分がD2CとB2Cの違いです。
C2C
C2Cは「Consumer to Consumer」の略で、消費者同士が商品やサービスの提供を行うビジネスモデルです。近年利用者も急増しているメルカリやヤフオクなどがこれに含まれます。
D2CとB2B・B2C・C2Cの違い
D2Cは自社でマーケティングを行い、企画開発し製造した製品を、自社ECサイトで販売し発送し、顧客の購買データや意見を回収・分析する工程の全てを自社で完結させるビジネスモデルです。
対して従来の小売業では、メーカーがマーケティングし企画開発・製造した製品を仕入れて、ECサイトや店舗で販売し、顧客の購買データや意見の回収を行うものの、メーカーは中間業者を通じて入手しマーケティングに反映するというものでした。
大きく違う部分は、マーケティング・企画開発・製造を自社で行うかどうか、また購買に至った顧客から集めるデータを自社で収集分析するのかどうか、という点です。
消費者にとって魅力的な製品を製造し販売するうえで欠かせない、マーケティング・企画開発の部分を自社で行うD2Cの強みとなるのが、顧客からの声を直接入手し分析し、新商品開発に活かすことができる点でしょう。
同時に、「商品を通して消費者に伝えたいメッセージ」もダイレクトに伝えられる、コアなファンを獲得しやすいのもD2Cの強みであると言えます。
D2Cを取り入れるメリット・デメリット
D2C事業を展開することで、どのようなメリット・デメリットがあるのかまとめました。
D2Cのメリット
まずはメリットから見てみましょう。
- 中間コストの削減ができ利益率が高い
- 他社プラットフォームに縛られず自由度の高い販売活動ができる
- ダイレクトに顧客とのつながりがもてる
- 顧客データ収集・分析も独自に行える
通常、BtoC他社通販プラットフォーム(Amazon・楽天市場など)に出店する場合は手数料がかかります。
またD2CではなくB2Cの場合には、中間卸業を介すためマージンもかかり利益率はD2Cより劣ることになります。このように出店時の手数料・流通コストを大幅に削減できるのはD2Cならではです。
さらに、D2Cであればキャンペーンや割引は独自の方法・タイミングで実施できます。
そのためPDCAをスムーズに回し、また顧客の声を活かした新商品・キャンペーンなどもスピーディーに打ち出すことができ、顧客満足度を高めやすくエンゲージメントも確固なものになりやすいのです。
その結果コアなファンを獲得しやすいこともメリットと言えるでしょう。
ECは世界的に伸びており国内ECの満足度は高く勝機あり
メリットに関連する話題として、世界的にECが活発であること、そして越境ECも活発に受け入れられている背景もお伝えしておきます。
越境ECは「自国内ではない他国のECサイトを介した商取引」のこと。
日本国内だけに目を向けると越境ECよりも国内ECサイトの利用率が高い(満足度が高いことと、他国言語への対応不安が背景)のですが、世界的には特に越境ECの伸び率が高いのが現状です。
日本では他国言語への苦手意識があるとはいえ、品質やサービスに安心感があるというのが強みですから、今後D2Cを展開するのであれば越境ECも狙い目と考えられるでしょう。
D2Cは会社のブランディング力向上に繋がる
D2Cのメリットである顧客の購買でデータや口コミなどのデータ収集・分析によりPDCAをスムーズに回していけるという強みは、企業としてのブランディング向上にも直結します。
より多くのファンを獲得し、積極的に顧客からの声を集め商品開発に反映していくことができれば、企業としてのプラスのイメージを強めていくことができるでしょう。
D2Cのデメリット
つづいて、デメリットについても見てみましょう。
- 全工程を自社で行うため仕組みづくりにコスト・労力・時間がかかる
- 軌道にのるまで時間がかかる事も多い
- 商品の魅力を肌で感じてもらえないためアピールが難しい
D2Cは、製造した製品を独自のプラットフォーム(ECサイトなど)で販売します。そのため、ECサイトの開発だけでなく、キャンペーンやダイレクトメールなどによる新規顧客の開拓や、サイトを活用するためのシステムなど、かなりの費用と労力が必要となります。
また、基本的に実店舗ではなくネットワーク通信のみで販売するため、お客様が商品を手に取ってその魅力を感じる機会がないこともデメリットの一つです。商品ジャンルによっては、実際に商品を手に取って購入したいと考える消費者が多いのも事実です。その対策として、「全額返品保証」などを行う企業も増えています。
また、D2C商品は小売店を通さずに販売されるため、認知度を上げるのが容易でないことも事実です。認知度の低いECサイトでの購入を警戒する消費者も多いため、SNSやWebサイトなどを適宜活用したマーケティング活動を計画することが重要です。
特に競合が多い商品では、一次販売に満足せず、囲い込みの戦略も大切になります。
D2Cの成功事例
これからD2Cを導入することを検討されるうえで、どのような戦略が功を奏すことに繋がるかポイントを抑えておきたいと考える方も多いのではないでしょうか。
参考になるD2Cを導入した企業の成功事例を見てみると、学びとなる部分も多いのでご紹介させていただきます。
D2C成功事例①:商品開発からユーザーの意見を活かした戦略でブランド力強化
特にD2Cが成功を後押ししやすいアパレル業界における、国内の成功事例からご紹介致します。
成功したご紹介する企業の商品は、1つ1つに「尖ったコンセプト」を設けることで、他社商品と明確な差別化をしている点が強みでした。
そのため、ブランドの表現している世界観、商品1つ1つのストーリやコンセプト、商品が開発されるに至った背景を消費者に伝えたい、それには全てを自社で完結させるD2Cが最適解だと考え他のだそうです。
また同社は、商品開発にユーザーに参加してもらう他、ユーザー参加型のイベントを開催するなどして「顧客との繋がりの強化」にも力を入れました。
こうした企業努力が実を結び、ファンを獲得、そしてファンとなった消費者がSNSなどを通じてブランドの魅力を拡散してくれるというプラスの循環を生み出すことに成功したのです。
D2Cを成功させるためには、全てを自社で完結させる以上、ブランド力を高め、その魅力を伝えることが欠かせませんから、こうした企業の活動内容が見事に合致し、成功した事例となったのでしょう。
D2C成功事例②:子供服サブスクリプションサービスで顧客の悩みを見事解決し大成功
アメリカで、「子供服のサブスクリプション」を行った企業の成功事例もあります。
すぐにサイズが合わなくなってしまうことも多い子供服ですが、お気に入りの洋服を着させてあげたい、可愛い服を着させたい、という親心とは裏腹に金銭的な課題も多い子供服事情を見事にくみ取ったビジネスで、創業半年で約23億円という大きな成功を納めることに成功しました。
同社がD2C事業を展開するにあたり最も重視したのは「徹底したパーソナライズ」でした。
サブスクリプションで勝手に送られてくる服が好みとずれていたなら、このような成功を納めることはなかったでしょう。
同サービスでは、自動的に送られてくるシーズンごとの洋服から、気に入っったものを登録し、気に入ったら買取・気に入らなければ返却するという選択も可能です。
こうして集めた顧客ごとの好みを蓄積していくことで、「より好みに合った洋服が送られてくる」という仕組みを作り上げたのです。
また送る洋服は当然自社で企画開発し製造されたもので、顧客の好みなどのデータとあわせて意見を即時反映していくことで、顧客のニーズ・悩みに寄り添うサービスとして支持されるようになりました。
このようにD2Cの強みを活かした顧客に寄り添うサービスも、D2Cというビジネスモデルだからこそ実現できたものでしょう。
D2Cの成功事例から見えるD2Cで成功するコツ
D2Cの成功事例をご覧いただき、コツやポイントを感じていただけたと思いますが、改めてまとめていきたいと思います。
- 自社製品のブランド力を強化する
- 購入後のユーザーの意見をマーケティングに取り入れる
- EC購入されることが多い商品を取り扱う
D2Cを成功させるためには、自社のブランド力を強化することと、購入につながる顧客の声やデータを分析し、活用することが不可欠です。せっかくD2Cでビジネスを展開するのですから、顧客とダイレクトにつながる機能を活用しない手はないでしょう。また、ECで購入されることが多い商品を取り扱っているかどうかもポイントになります。
SBペイメントサービスが2020年1月28日~3月10日に調査したD2Cに関するアンケート結果(20~80代の男女1,924人)を見ると、どういったものがECで好んで購入されるのかわかります。上記調査結果より抜粋すると、以下のジャンルの商品がECで購入されることが多いことがわかります。
- 健康食品・サプリメント
- 本・専門誌
- パソコン・カメラ・オーディオ
- おもちゃ・キッズ用品
上記の商品に共通しているのは、「現物を見ていなくても安心して購入できるもの」であることです。ネットで調べれば十分な情報が得られる商品は、ECで購入されることが多いようです。一方、鮮度や状態の確認が必要な「食品・飲料・酒類」は、ECよりも実店舗での購入が多くなっています。
まとめ
D2Cとは、「顧客がメーカーと直接コミュニケーションをとる」「基本的にECサイトで販売することで様々なコストを削減できる」ビジネスモデルであることは、ご理解いただけたかと思います。
D2Cビジネスでは、消費者と直接コミュニケーションが取れるというD2Cのメリットを最大限に生かしたマーケティング戦略が重要なポイントになります。
今回ご紹介した内容を、ぜひ今後の活動に活かしていただければと思います。