越境ECとは?これから越境ECサイトの立ち上げを検討する際に知っておきたい、越境ECの始め方やメリット・デメリットについて解説します。越境ECは、最近注目されているビジネスモデルですが、興味はあってもよく知らないという方もいることでしょう。国内・海外において越境ECの市場規模は拡大の一途をたどっており、現在もすでに大きな市場となっています。
目次
越境ECとはグローバルな電子商取引(EC)のこと
越境EC(クロスボーダーEC)とは、インターネットを介し、国内だけでなく海外へ向けて商品を販売する電子商取引(EC)を指します。国や地域の垣根をこえたオンラインショッピングで、海外現地に店舗を持たず日本国内の企業が海外現地において販売機会を創出することができるとあって、大きな注目を集めているのです。
越境ECの市場規模は拡大
近年、インターネットが普及することでネットショッピングが増加し、国境を越えた取引も活発になっています。世界の越境ECの市場規模はどのくらいなのでしょうか。
経済産業省の調査結果をみると、2020年時点の世界の越境EC市場規模は、9,123億US$でした。すでに大きな市場になっていることはこの数字からわかりますが、2027年にはさらに成長し約4兆9,000億US$になるだろうと推測されています。
経済産業省の「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、世界全体の越境ECの市場規模(2019年)は、7,800億USドルと推計されていますが、2026年には4兆8,200億USドルになり、 年平均で約30%もの成長率で拡大すると予測されています。 出典:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)
この背景には訪日外国人(なかでも影響力があるのは中国人来訪者)が増え、日本製品の品質・信頼性が評価され認知度が拡大し、越境ECの市場が拡大したものと考えられています。日本では特に化粧品や健康食品などが人気です。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の影響で海外旅行や対面販売が制限されたことも、オンラインで海外商品を購入する需要を高めました。
越境ECは世界的なトレンドですが、参入する際には様々な課題やリスクもあります。例えば、配送や決済方法の選択肢やコスト、関税や消費税などの法規制や手続き、言語や文化・習慣・価値観などのマーケティング戦略などです。これらを適切に対応するためには専門的な知識やノウハウが必要です。
特に市場規模が大きい中国とアメリカ
先にも触れたように越境ECを手掛けるのであれば、中国は見逃せないターゲットとなることは言うまでもないでしょう。かねてよりインバウンド消費のカギは中国人消費者であることは取り沙汰されてきましたが、以下の経済産業省の調査結果を見るとターゲットとして注目すべきは中国だけではないこともおわかりいただけるはずです。
経済産業省による2019年の「電子商取引に関する市場調査」で、中国・アメリカ人による日本製品の購入額が1兆5日本製品の購入額が1兆5,000億円を越えたと発表されたことを鑑みると、中国だけでなくアメリカもターゲットとして見逃せない存在であることがわかります。
とはいえビジネスですから、ニーズがなければ意味がありません。越境ECサイトで販売しようとしている商品によってターゲットを絞り込むことはマーケティング戦略として重要です。合わせて、販売しようとする商品が「ターゲット国に輸出可能かな商品か」、対象国の法律や申請方法についても確認しながら検討することをおすすめします。
越境ECのメリットとデメリット
越境ECのメリット
越境ECには以下のようなメリットがあります。
- 国内市場に依存しないで、世界中の需要に応えることが可能。これにより、売上や利益の拡大や安定化が期待できる。
- 海外市場におけるブランド力や知名度の向上が期待できる。これにより、リピーターや口コミなどの効果も高まる。
- 海外市場におけるニーズやトレンドに対応することが可能
- 海外市場における競合他社と差別化できる。これにより、独自性や付加価値などの強みを生かせる。
海外消費者もターゲットとできる、また複数国を相手にビジネス展開することができる越境ECですから、商圏を拡大できることが大きなメリットとなります。
越境ECのデメリット
一方で、越境ECには以下のようなデメリットがあります。
- 関税法は国によって違うため、関税の支払いや手続きが複雑になる場合がある
- 配送の手間やコスト
- 為替変動の影響や値動きで、利益の予測が立てづらいことや、変動が大きくなる可能性がある
- 不正利用やセキュリティの問題
- 多言語化や文化の違い。商品説明やカスタマーサポートを多言語化する必要
越境ECを展開するデメリットとなるのは、ターゲット国に合わせた決済・発送手段などを調査し、それに合わせるためのコスト・労力が必要となることがあげられるでしょう。また商品ジャンルによっても国ごとに規制・法律・関税などの扱いが異なるため、そのための調査と対応に相応の労力が必要にもなります。
また今も円安傾向で苦しむ企業は少なくありませんが、海外を相手にビジネス展開する以上、為替変動による影響も受けざるを得ません。
こうしたデメリットは避けては通れないものではありますが、それを上回るメリットを生み出すための企業努力も必要になること、その価値があるものであるということはお伝えさせていただきます。
越境ECを行う4つの手法
越境ECを行う手法として、大きく以下の4つがあります。
- ECモール型:既存の海外向けECモール(例:Amazon Global Selling)に出店する方法です。手軽さや集客力が高い反面、手数料や競争力などの課題もあります。
- 自社サイト型:自社で海外向けECサイト(例:Rakuten Global Express)を運営する方法です。自由度や収益性が高い反面、運営費用や集客力などの課題もあります。
- 代行販売型:専門業者(例:Tenso.com)に海外向け販売業務を委託する方法です。リスクやコストが低い反面、利益率やブランディングなどの課題もあります。
- 保税区を利用した越境EC(対中国のみ):中国政府が認可した保税区内から中国本土へ直接配送する方法です。関税や消費税などの優遇措置が受けられる反面、規制変更や在庫管理などの課題もあります。
4つの手法については続けて詳しく解説させていただきます。
①ECモール型
ECモール型は国外のECモールサイト(Amazonなど)に出品し、海外の消費者に商品を販売するもので、既存のモールを通して販売するため集客も容易である点が大きなメリットとなります。またECモールには商品を販売するための様々な機能が実装済みのため、スタートアップしやすくなりますが、ターゲット国によってはライセンスを要したり、出品するための審査が厳しくなるケースもあるため確認が必要です。
②自社サイト型
自社サイト型は越境ECを立ち上げる企業が独自にECサイトを構築し、商品を販売していく形式を指します。越境ECサイトの構築にコストと労力が求められるものの、モール型より自由度が高くなる(出品に関する基準や取り決めなどもなくなる為)反面、集客対策をどうするかが課題となります。
③代行販売型
代行販売型とは、海外向けの販売を代行してくれる業者に商品を買い取ってもらい、越境ECを実現する方法を指します。越境ECが可能なモールサイトや独自の越境ECサイトが不要になりますが、代行業者に支払う各種コスト・ルールなどがネックになることもあるでしょう。この方法では商品は代行業者を介して海外の消費者に届けられるため、越境ECサイトのシステム開発・海外ECモールサイトへの出店にかかるコスト・労力を必要とせず、越境ECを始められる点はメリットです。
ただし代行業者が手数料・配送料を商品代金に上乗せして顧客に販売するため、商品の価格が上がってしまうため販売力の面での課題と、顧客と直接やり取りできないため顧客データが得られずマーケティングしづらい点が課題となります。
④保税区を利用した越境EC(対中国のみ)
中国に向けた越境ECを行うのであれば、保税区を活用することで中国国内でのスピーディーな配送が可能になります。近年日本国内のECサイトであってもスピーディーな配送が消費者にとって当たり前となっていますが、中国国内でも同様のニーズがあります。越境ECではどうしても商品到着までに時間がかかってしまうのがデメリットですが、この方法は中国政府が定めた保税区(上海、重慶、杭州など)に商品をストックしておくことで中国現地内のスピーディー配送が実現できるのです。
保税区とは、中国政府が国内での越境ECを推進するために定めた越境EC試験区で、ストックしてある商品の出荷時に通関手続きをして出荷することができるようになります。ただしこれには、ストックしてある商品が思うように販売数が伸びない、在庫過多になりそうだ、といったときに引き上げコストがかかる、商品の状況がすぐに確認できないといったデメリットもあるので留意しましょう。
ECモール型で越境EC市場へ参入する際のおすすめECモール
越境ECをモール型でスタートするにあたり、おすすめのECモールサイトをご紹介します。
海外の代表的なクロスボーダーEC対応済みのECモール
海外で日本企業が出店可能なECモールの代表的なものをご紹介します。
- Amazon(アメリカ)
- eBay(アメリカ・ヨーロッパ)
- 天猫商城【Tmall.com】(中国)
- 天猫国際【T-MALL GLOBAL】(中国)
- 京東商城【JD.com】(中国)
日本国内でも利用者が増えているAmazon。クロスボーダーEC(越境EC)に対応しているECモールの1つで、FBAなどスムーズかつスピーディーな配送を実現するためのサポートもある点が高く評価できます。 世界最大のオークションサイトであるeBayは品質が高く評価される日本製品の需要が大きいこと、中古商品も出品できる点が特長で日本企業の出店も多くあります。 天猫商城(Tmall.com)は中国国内でも富裕層をターゲットとしているアリババグループが運営するECモールで、比較的高価格帯の商品を出品するのにおすすめします。 天猫国際(T-MALL GLOBAL)は同じアリババグループが運営するECモールですが、富裕層に限らず広いターゲットに支持されている点が特長です。 京東商城(JD.com)は日本製品が高く評価される電化製品に強いECモールです。
海外発送可能なクロスボーダーEC対応済みの国内ECモール
日本国内で運営されているクロスボーダー(越境EC)対応のECモールに出店することもできます。 日本語で作られたサイト上でクロスボーダーECを展開できるため、顧客対応もしやすく、トラブルなどの時にも安心感が持てるでしょう。また翻訳機能があり他国ユーザーとのやり取りをスムーズにしてくれる機能もある点がおすすめのポイントです。 細かい規定などを他国言語で理解できる担当者が不在、という企業でもクロスボーダーECが展開しやすいのもメリットです。
海外発送可能な日本国内のクロスボーダーEC対応済みのECモールは、以下があります。
- Amazon
- 楽天
- Qoo10
自動翻訳や、決済・配送方法などまとめて対応してくれるだけでなく、大手モールの越境ECを利用すると、在庫管理や顧客分析もできるのも利点です。
越境ECにおける3つの配送方法
越境ECをするにあたっては以下の3つの配送方法があります。
- 現地倉庫を契約しそこから配送する
- 配送代行サービスを活用する
- 直送する
現地倉庫からの配送はもっともスピーディーに対応でき、各種手続きも必要なくなります。
その反面、現地でスタッフを雇う人件費がかかることと、倉庫を契約するのにもコストが発生するため、他の方法よりもコストがかかってしまいます。そのため大規模にEC展開する場合に向いた方法と言えるでしょう。
直送は国際郵便で行うこととなります。他の方法よりもコストは抑えられますが、送り状の作成の手間があることと、配送に必要な申請・手続きなども行わなくてはなりません。
代行サービスを使えば、その点のコストは発生しますが、面倒な手続きや申請も含めて任せることができます。
越境ECスタートアップ企業には手軽さから海外越境ECモールサイト出店がおすすめ
海外で法人として起業し、自社で越境ECサイトを立ち上げるとなるとコストも時間もかなりかかります。
既に国内でECサイト運営をスタートしている企業であっても、越境ECサイトとしてスタートする場合には様々な準備や調査なだけでなく、独自に顧客を開拓していかなくてはなりません。
その点、国内で起業し海外にむけて販売できる越境ECは、国内企業でありながら海外現地のECモールサイトに出店できるため様々な負担が軽減できます。
この方法は海外の消費者にとってみれば、使い慣れたECモールを利用して日本製品を購入する為、安心感があり受け入れられやすくなる効果もあり、スタートアップには有意義な方法といえるでしょう。
スタートアップ時はECモール型としておいて、大々的に拡大する段階になったときに、自社ECサイトを立ち上げるという流れであれば、海外での認知度や消費者とのエンゲージメントもある程度確立した上で進める事ができます。
いきなり認知の低い状態から自社越境ECサイトを立ち上げて戦っていくよりも、スムーズに収益をあげていくことができるでしょう。
まとめ
越境ECとはどういうものか、どのような背景で注目されているのかと合わせて、4つのスタートアップ手法やメリット・デメリット/配送方法などもお伝えしてまいりました。
越境ECのスタートアップに向いているのは、ターゲット国現地で多く利用されているECモールサイトへの出店ということもお伝えしました。
その際利用するECモールサイトの選定には、ランキングでお伝えしたサイトも踏まえて、選び方の基準を加味して最適な選択をしていただければと存じます。
こちらでお伝えした情報をご活用いただき、更なる販路拡大を実現する越境ECで海外進出を成功させていただければ幸いです。