物流はコスト、という見方は前時代的なものとなりました。今、そしてこれからの物流は「利益を生み出す経営戦略の一部」と捉え、策定・運用していくこと、これが企業を成功するための秘訣ともされる時代です。
本記事では、御社を成功に導く物流戦略の立案・運用のため、知っていただきたい6つの手順・立案時のポイント、成功事例などお伝えしてまいります。物流戦略を策定していくうえで疑問を持たれやすいポイントのヒントもまとめておりますので、是非お目通しください。
倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
物流戦略とは
物流戦略とは、物流業務の効率化・コスト分配の方針や計画のことを指しており、EC需要の急増などで一気に注目度が上昇した物流を経営戦略の一部として戦略的に運用するために策定・運用されるようになりました。
これまで「物流=コスト」と端的にとられられていたものの、Amazonなどに代表される大手企業が戦略的視点から「物流=流通の一端を担う産業に欠かせない重要な業務であり、利益を生み出すための部門である」と認識を改め、力を入れ事業拡大させてきた事例も多く、物流を見直そうという企業が増えたのです。
物流の6機能
物流戦略を策定する際には、物流に含まれる6つの機能について理解しておくとスムーズです。
- 輸送・配送
- 保管
- 包装・梱包
- 流通加工
- 情報管理
- 荷役
輸送は船便・航空便・貨物便・トラック輸送のように長距離に渡って荷物を移動させることを指し、配送はルート配送や宅急便のような小口配送を指します。
保管に関しては、ただ商品を倉庫に保管しておくことではなく、品質を保つために温度や湿度などの管理を含め、効率よく出荷できるようロケーション管理を行うなども含む作業です。
輸送・配送による箱潰れ・商品損傷などが無いよう、梱包資材などを使い丁寧に出荷準備することは顧客満足度を高める観点からも重要。また配送・輸送しやすい形状にしておくことで効率的に業務遂行する目的もあります。
流通加工は、商品組み立て・ギフトラッピング・保管しやすくし商品価値を高めるためのパッキング作業などが含まれ、専用の機器や設備が必要になる作業が多く、顧客ニーズに応えるためにも重要な機能、としてアウトソーシングする企業も増えています。
在庫管理・配送管理・配送ルート管理といったような情報を管理することも物流業務における要となる業務。人力で行うと効率低下・作業負担の増加などによりミスやトラブルが発生しやすい機能でもあります。
荷役とはトラック・船などと倉庫間での積み込み・積み下ろしのほか、入庫・ピッキング・仕分け・運搬・出庫など様々な業務が含まれる機能。それぞれの業務ごとにミスやトラブルを防ぎ効率化するためのポイントが異なる部分でもあり、多くの物流企業が課題を抱えやすい機能の1つです。
物流への消費者ニーズとは
物流戦略を立てる上で、消費者のニーズを把握しておくことも大切です。消費者の物流に対するニーズには以下の4つが挙げられます。
- 必要なタイミングで届くこと
- できる限り短いリードタイムで届くこと
- 必要な量だけ届くこと
- 商品の品質が良好に保たれていること
Amazonに学ぶ物流戦略の成功事例
一般消費者の視点にたって「Amazonとは」と聞かれれば、多くの方が「世界中から様々な商品を素早く届けてくれるECサイトである」と応えるのではないでしょうか。
ですがAmazonは自社を「ロジスティクスカンパニーである」と称するほど、物流に注力している企業の1つ。新型コロナ禍で多くの企業が業績不振に悩まされる中、売上高は右肩上がりですが、物流関連の投資に多くを回していることで利益率は低い水準に抑えられているのです。
これにより一般消費者も認知しているように、Amazonは低価格で素早い配送により、多くの顧客に支持されるECプラットフォームとして受け入れられています。顧客の利便性を追求した結果、多くの企業が困難を極める時代も見事に御し、他の追従を許さないほど成長し続けることができていると考えられます。
EC需要が拡大した昨今において、Amazonの後を負うように自社の物流を見直し注力することで事業拡大している企業がふえているのも事実です。
経営と物流戦略の関係
物流はコストではなく「利益を生み出すための重要な業務・機能」とみなされることからもわかるように、物流戦略は経営戦略とも密接な関連性があります。
物流に対する消費者ニーズは4つある、ということもお伝えしましたが消費者のニーズを踏まえ、業務効率を最適化していくことは物流業務効率化だけでなく経営状況を良化させる結果になるのはいうまでもないでしょう。
ただし、消費者のニーズだけでなく商品を販売する「納品する側」からのニーズも捨て置くことはできません。
- 発注からのうひんまで時間的な余裕が欲しい
- 納品回数はできるだけ少なくしたい
- 可能ならそのままの荷姿で納品したい
こういった販売者側のニーズと、消費者ニーズの間を取り持つのが物流業者なのだ、と考えると何をすべきか、どのような企業であるべきか見えてくるのではないでしょうか。
またそこで見てきた双方のニーズをつなぐためのものこそ、御社が提供すべき物流サービスの根幹となるはずです。
成功に導く物流戦略を策定する6つの手順
物流戦略をたて、利益を生み出せる部門として確立させるためには、順を負って物流戦略を策定していくことも重要です。
物流戦略策定の6つの手順は以下になります。
- 現状の物流を図式化する
- 流れに沿って機能ごとに課題を洗い出す
- 課題を抱えてしまた理由を分析する
- 1つ1つの課題の解決するため戦略策定する
- 策定した戦略を運用するための体制をたてる
- 実践に向けた具体的なプランを作成・運用開始する
それぞれの手順毎に詳細を確認していきましょう。
①現状の物流を図式化する
受け入れ元から自社、自社から配送先までの物流を図式に起こしていきましょう。後で業務毎に課題を洗い出していきますから、自社の関わるステップは詳細な業務・フロー毎に図式に記載していくようにします。
②流れに沿って機能ごとに課題を洗い出す
すでに認識できている課題を①で作成した図式に記入していきます。物流戦略を成功させる1つ目のポイントになりますが、すでに認識できている課題が全て、とは考えず潜在的な課題がないかも検討していくようにします。
その際おすすめするのは、「現状課題があると考えていないところに課題があるとしたら?」と仮定して見つめなおしてみること。これにより認識できていなかった課題を発見することもでき、物流戦略をより強固なものにすることにも繋がります。
③課題を抱えてしまった理由を分析する
課題を洗い出したら、次に「なぜその課題を抱えてしまったのか」を分析しましょう。参考例として以下のような理由があります。
- 業務フローに問題があるから
- 業務フローが徹底されていないから
- 人材不足だから
- 従業員のスキルが十分でなかったから
- 教育不足だから
- 手作業が多く業務効率が低下していたから
- 在庫保管時のロケーション管理など作業環境が整っていないから
- 作業スペースが十分でないから
- 業務量に見合ったフロー・人材配置ができていなかったから
- 配送に用いるトラックの数が配送量に見合っていないから
- 配送ルートに問題があるから
上記以外にも様々な理由が考えられますから、御社の現状抱えている課題の理由を1つ1つ見つめなおしていきましょう。
④各課題を解決する戦略を策定する
現状抱えている課題と理由を洗い出したところでどのようにして課題を解決するか、具体的な戦略を策定します。
例えば、
「業務フローに問題があった」⇒「業務フローを最適化し作業効率を上げるため、○○の進め方を変更する」
「従業員の手作業による業務負担が大きい」⇒「ハンディターミナルやWMSなどIoTツールを導入して効率化・負担軽減を図る」
「配送ルートに問題がある」⇒「配送ルートを自動的に最適化できるシステムツールを導入する」
といったように、各課題ごとに具体的な対策・戦略を当てていきましょう。
⑤策定した戦略を運用するための体制をたてる
戦略立案したら戦略を運用するにあたっての体制を整えます。作業人数の見直し、適材適所となるよう人材の再配置をする、といった人材的な部分ももちろんですが、運用ルールをマニュアル化し、マニュアルを徹底するよう従業員に再教育する、ということも重要です。
体制を整えたいが抱えている課題が大きすぎ、自社内製は厳しいと考えられる場合には、フルフィルメントサービスや3PL/4PLといった専任業者に業務をアウトソーシングすることも有効な対策となります。
⑥実践に向けた具体的なプランを作成・運用開始する
業務方針の切り替え・IoTツール導入、システム導入と改革を行っていくにあたり、どのように進めていくかを具体的にプラン建てしましょう。
運用開始していく中で進捗度・達成度を都度確認しやすくするため、KPI(重要業績評価指標)を設定していくこともおすすめです。
KPIを設定するにあたっては、達成したい目標を頂点としてトップダウン形式に、達成するために必要な要素をツリー状に洗い出していくKPIツリーを使用すると、担当者の理解も深まりやすくなります。
物流戦略策定時に考えるべき業界の課題
平均年齢が他業種と比較して高く、現状も人手不足と感じる物流企業が多い状況であるにも関わらず、2024年にはドライバー人口の大幅な減少が見込まれることで急激に人手不足が加速することを問題視する2024年問題。
現状物流業界が抱えている課題としては以下が挙げられます。
- 燃料費の上昇
- ドライバー人材の不足
- 働き方改革による規制への対応
- EC需要増加による小口配送の急増
- 業務過多による人材流出
一般消費者にとっても頭の痛い問題となっている燃料費の上昇、これは物流業界にとっても大きな痛手であることは変わりありません。
また過酷な労働状況となりやすいドライバー人材の不足問題への対策も急務。過酷な労働状況とならないよう法規制も変更されることなどもあり、現場の状況は更に厳しくなっているケースも多いでしょう。
これにあわせ、配送件数を増加させる要因となっているEC需要の増加による、小口配送の急増。再配達対応を縮小するなど対策をとっていても、件数が多くドライバー・配送業者の負担は大きく軽減されたとは言いにくい状況がある。このように業務過多になりやすい物流業界において、既に見えている課題をどのように解決していくかが重要な責務となっています。
物流戦略策定時のポイント
物流戦略を策定する際には、先にお伝えした6つの手順にそって進めていただくことは重要です。手順に則るだけでなく、以下のポイントも抑えていただくと、より効果的な物流戦略を立案・運用していくことができます。
- 過去にとらわれ習慣的になっている部分の改善案は何か検討する
- 物流波動についても考慮しマンアワーベースで策定・運用する
- 物流に注力し成功してる他社の事例も参考にする
- 在庫を適正に保てるよう管理を徹底する
- 消費者・販売者側のニーズも考慮し立案する
- 費用対効果が見込める投資は積極的に行う
- 自社内製にこだわりすぎずアウトソーシングも視野に柔軟に検討する
6つの手順を遂行していく上で意識していただきたいのが上記のポイントです。
成功事例を参考にする中で、社内ででなかった新しいアイディアが発見できたり、潜在していた課題を発見できることもあります。
また過去を踏襲しすぎて、改善可能な部分を見過ごしてしまうのも避けたいもの。そういった部分を見出すためにも、成功事例やお伝えしたポイント・手順を活用していただきたいのです。
在庫量が多くなれば倉庫内業務は増加します。ロケーション管理もしずらくなるため、WMSなどを活用し在庫量を適正に保つことも作業効率化・利益率向上に直結します。
忘れてはいけないのが物流戦略を策定する際、消費者側・販売者側それぞれの相反するニーズがあるということ。その間をうまく取り持つことで物流企業としての存在感を示すことができます。費用対効果が見込めるのであれば、業務のアウトソーシング・IoTツール・システムの新規導入といった投資も可能な限り積極的に行っていくことも成功の秘訣です。
まとめ
物流戦略とは、物流企業だけに限らず「利益を生み出すための不可欠な重要業務」であるとお伝えしてまいりました。
消費者・販売者それぞれの対照的なニーズがあることを踏まえ、その間をうまく取り持つことこそ、物流企業に求められるものなのではないでしょうか。
お伝えした6つの手順とポイントを活かしていただきつつ、御社を成功に導く物流戦略の策定を完遂していただければ幸いです。