物流に関わる皆さんは日々、物流品質を向上させたい、と様々な努力をされていらっしゃることでしょう。
物流倉庫・センターを運営していく上で起こりがちな誤出荷、御社ではどの程度起こっているか把握されていますか?
本記事では、物流業務上起こりがちな誤出荷について考えてまいります。
誤出荷がどの程度起こっているのか把握するために算出したい「誤出荷率(PPM)」、誤出荷が引き起こす影響、誤出荷が起こる原因としてよくあるものなど解説しながら、物流品質向上のヒントを探っていきましょう。
ご覧いただければ、誤出荷率から現状を把握し、どのような対策が御社にとって有効策となるのかご理解いただけるはずですので、お目通しください。
物流倉庫で起こりがちな誤出荷と誤出荷率について
誤出荷とは、発注内容とは異なる商品・数量を出荷してしまったり、配送先を誤ってしまうことを指します。
誤出荷は様々な要因で起こりますが、あまりにも誤出荷が多い状況は顧客からの信頼を失墜し経営にも悪影響を及ぼしますから、早期の対処が大切。
誤出荷が0件というのは容易に達成できる物ではありませんが、最小化しておくことは物流企業にとって最大の課題でもあります。
まずは自社の誤出荷がどの程度起こっているのか、誤出荷率を算出し現状を把握することから始めましょう。
誤出荷率(PPM)とは|誤出荷率(PPM)の算出方法
物流倉庫やセンターの作業品質をわかりやすく数字で示す為に用いられるのが誤出荷率で、誤出荷率を示す単位としてPPMという表現をします。PPMとはパーツ・パー・ミリオンの略で、言葉の通り誤出荷率が100万分のいくつにあたるかを体形的に示す単位です。
PPMの算出には以下の計算式を用います。
誤出荷率(PPM)=誤出荷発生件数 / 作業件数 × 100万
出荷件数が10,000件、誤出荷件数が5件あったとすると、誤出荷率(PPM)は500PPMということになります。
全自動倉庫のPPM限界値は10PPM
あくまで一般的な数値の目安にはなりますが、物流品質の基準を把握するためにお伝えしておくと、全自動倉庫の場合の誤出荷率が10PPMです。
当然PPMは小さいほど物流品質が良いと評価でき、大きいほど物流品質が悪い、ということになりますから多くの物流企業はPPMを最小化するための努力をしています。
全自動の場合でも10PPMが最小である、ということを目安として実現可能な目標を設定することが重要です。
ちなみに10PPMは、50万件出荷した際に、誤出荷が5件あったことを示しています。
物流倉庫・センターで誤出荷が発生する6つの原因
一般的には誤出荷率は0.01%未満が理想(1万件出荷して1件の誤出荷)とされていますが、可能な限り0としたいものです。
そのためにはまず、どのような原因で誤出荷が起こっているのか知っておくことで有効な対策をとりやすくなりますから、よくある原因から見ていきましょう。
- 誤数:出荷すべき商品の個数を間違えてしまう
- 誤品:出荷すべき商品を間違ってしまう
- 誤配送:出荷先(配送先)を間違ってしまう
- 出荷漏れ:出荷すべきものが何らかの理由で出荷されていない
- 出荷指示のミス
- 在庫管理上のミス
誤出荷原因①:誤数
ピッキング作業時の確認漏れ、出荷検品ミス等で出荷すべき数量と違う個数で出荷してしまうことで起こります。
ヒューマンエラーが主な原因である誤数は、どの段階でミスが起こっているのか把握することで対策する必要があります。
誤出荷原因②:誤品
誤数と同じく、ピッキング作業でのミス・出荷検品漏れにより、本来出荷すべきではない商品を出荷してしまったり、出荷すべき商品が漏れてしまうことを指します。
誤数と異なるポイントとして、本来保管されている場所に違う商品が保管されていたことなどでも起こりますから、どの作業でミスが起こってしまっているのか切り分け、対策することが重要です。
誤出荷原因③:誤配送
出荷伝票への発送先の記入ミス・配送先の貼付ミス、出荷検品時に別の出荷先の伝票で検品してしまったことで取り違える、配送先情報の登録ミスでも起こるのが誤配送です。
システム上管理している配送先・配送内容のミスがないか、出荷検品時に取り違えなどが発生してしないか、原因を切り分け対策しなくてはなりません。
誤出荷原因④:出荷漏れ
本来出荷すべきものが出荷されていない出荷漏れは、システム管理上の問題でも、出荷作業の流れの中でも起こりうるものです。
出荷作業中に出荷伝票を紛失してしまい、出荷漏れにも気付かずにクレームで発覚するということもあり得ます。
こうしたヒューマンエラーを解消するためには、システム管理と現場作業に置ける最終確認を現品や伝票だけでなく、システム上も管理する流れにすることで対策が可能でしょう。
誤出荷原因⑤:出荷指示ミス
出荷指示を行う段階で数量・品番・商品名・識別コードなどを誤って指定しまったことでも誤出荷は起こります。
仕様変更で新旧ロットがあるような場合の出荷指示も要注意です。
システム的に登録内容をミスしている場合もあれば、出荷伝票の作成を人が行っている場合に起こりやすいミスでしょう。
誤出荷原因⑥:在庫管理上のミス
商品に貼付すべき管理用シール・タグの張り間違えや、商品保管場所のミスによってピッキング作業中が正しく行えないことでも誤出荷は起こります。
在庫管理を徹底することも誤出荷を防ぐうえで欠かせない、と認識しておかなかくてはなりません。
誤出荷が引き起こす影響
誤出荷は見過ごしてはならない、物流業務重大なミスです。
誤出荷が発生することでどのような悪影響がでるか、まとめました。
顧客からの信用失墜
0にすることは難しいとはいいつつも、理想的な誤出荷率は0.01%未満とされることもお伝えした通りです。
届くはずの商品が届かないことで、r取引先や顧客のビジネスに損害を与えてしまうことも十分にあり得ます。
そうなれば当然、その原因となった誤出荷を起こした物流業者に対しての信頼は損なわれてしまうことに。失った信頼を回復することも簡単ではないことは皆さんご理解されていることでしょう。
顧客の個人・企業情報の漏洩
出荷先とは異なる伝票を同梱してしまったりすることで、顧客の情報を漏洩してしまうことも起こり得ます。
情報漏洩はどのような業種であっても最も避けるべきですから、確実に防がなくてはなりません。
ピッキング作業を終えたら、梱包の最終段階で内容に間違いがないか出荷検品を徹底することも大切です。
在庫差異で欠品・過剰在庫に繋がる
誤出荷して気付くのが遅れれば、在庫差異により欠品・過剰在庫となってしまうことになります。
当然在庫差異が頻発すれば、経営が傾く懸念も生まれますから、誤出荷がどうして発生したのか解明し、再発防止策を徹底することが大切なのです。
誤出荷が何度か発生してしまうということは、在庫差異など在庫トラブルが発生しやすい環境になっているということ。
在庫差異は原因究明が容易とはいえませんし、在庫を訂正するための大規模な棚卸をしなくてはならないこともあります。
無駄な労力・時間・コストがかかってしまいますから再発しないよう早期対策をとりましょう。
誤出荷を防ぐための8つの対策
誤出荷率を下げる、誤出荷を防ぐために有効な7つの対策をご紹介します。
- 作業スペースを十分に確保する
- 作業の流れを含め業務ルールを徹底する
- 出荷時の検品作業が十分に行われているか定期的に見直す
- 在庫管理時の商品タグの貼付けはダブルチェック体制で行う
- 誤出荷発生時は現場担当者の声も聞き対策を練る
- 自動ピッキングなど出荷・検品作業にIoTを取り入れる
- 誤出荷が起こすリスクを含め担当者に共通認識を持たせる教育を行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
商品保管・作業スペースを十分に確保する
作業スペースが狭すぎると効率よく作業ができないだけでなく、商品の取り違えなども起こりやすくなります。
商品保管・作業スペースが十分に取れるようにしましょう。スペースの確保が難しい場合、物流倉庫サービスを活用することで、スペースの確保だけでなく物流業務をアウトソーシングし確実な物流業務を提供する体制も整えられます。
作業の流れを含め業務ルールを徹底する
在庫管理が適切に行われていない、ということは入庫業務にも問題がある場合もあります。
出荷作業がスムーズでない、ミスが多い(=誤出荷率が低下しない)のは出荷に関する作業だけでなく、在庫管理が適切に行われていない可能性も否定できません。
誤出荷率を低下させるためには、物流倉庫運営に関わる作業の流れを見直し、誤出荷を防ぐための運用ルールを徹底することが重要です。
作業が俗人化してしまったり、作業の流れが決まっていないなどあると物流品質が一定しない原因にもなりますから、どのような流れで作業を行うか、作業をする際のチェックポイントや作業工程においてすべきことをルールとして取り決め、担当者全員が徹底できる体制を整えることが大切になります。
出荷時の検品作業が十分に行われているか定期的に見直す
誤出荷を防ぐための最後の砦となるのが、出荷時の検品作業でしょう。
作業工程やルールとあわせて、出荷検品の作業が適切に行われているか、検品が十分に行えているか定期的に見直すことも大切です。
在庫管理時の商品タグの貼付けはダブルチェック体制で行う
商品タグの張り間違えで在庫管理が適切に行われず、出荷時のミスにも気付きずらい状況を作り出してしまうこともあります。
IoTで作業効率を挙げていても、人の手で行うことが多い作業についてはダブルチェック体制を取り入れることで、誤出荷防止に繋がります。
誤出荷発生時は現場担当者の声も聞き対策を練る
誤出荷が起こってしまった時、上層部だけで対策をとるのは十分とは言えません。
なぜ起こってしまったのか、当日の作業の流れも含めて、現場担当者の声をリサーチした上で、適切な対応を取れる体制を整えることも大切です。
また誤出荷発生時に限らず、誤出荷防止・作業効率向上に繋がる現場担当者の意見を日頃から集められる仕組みを導入することもおすすめします。
自動ピッキングなど出荷・検品作業にIoTを取り入れる
人の手に頼った作業ではヒューマンエラーを完全に回避することは難しいもの。
ルールの徹底・適宜見直しなどとあわせて、IoTツールに置き換えられる部分を積極的に置き換えることで作業効率が向上し、物流品質も向上させることができます。
コストがかかりますから、自社だけでは難しい場合には物流サービスをアウトソーシングすることも検討してみると良いでしょう。
物流業務をアウトソーシングすることで、入庫から出荷までのコストダウン・作業効率とサービス品質の向上も見込めます。
誤出荷が起こすリスクを含め担当者に共通認識を持たせる教育を行う
誤出荷を防ぐための教育、ルールの策定も大切ですが、それだけでは確実に防ぐことは難しいもの。
なぜ誤出荷を防がなくてはならないか、誤出荷がどのようなリスクを生み出してしまうのかも含めて従業員への教育を行い、共通の認識と危機感をもって作業できる環境を整えましょう。
まとめ
誤出荷率(PPM)とはなにか、誤出荷とは何かということも含めて、誤出荷率を下げるための有効策などもご理解いただけたでしょうか。
誤出荷は企業運営を危ぶませるほどの大きなリスクを生み出してしまう、物流業者としてもっとも避けておきたいトラブルの1つです。
的確に確実に商品を顧客・取引先に届ける。そのために重要なのは日頃の業務フローを見直し、適宜改定しながら徹底していくこと。
今後も社会の基盤を支える重要な業務である物流を、高い品質で提供することで顧客の信頼を勝ち取っていただくために、こちらでお伝えした情報を役立てていただけましたら幸いです。