ECという言葉を耳にすることが増えましたが、実際に何を指すのかわからないという方も多いのではないでしょうか?
ECとは「Electronic Commerce」の略で、日本語では電子商取引といい、インターネット上での取引のことを指す言葉です。
この記事では、ECの基礎的な内容から事例までわかりやすく要点を絞って解説します。
- ECの概要
- 市場規模
- 種類
- ECを利用したビジネス事例
この記事を参考にすれば、ECの基本や事例などが一通り把握できるようになります。
ECの導入を検討する際にも役立ちますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
目次
ECとは?インターネット上で取引全般のこと
EC(Electronic Commerce : 電子商取引)とは、インターネット上でモノやサービスを売買することを指します。他には、ネット通販と呼ばれたり、eコマースといわれたりする場合もありますが、およそ同じ意味です。
もちろん、取引にも種類があり、ECには以下の3つが含まれます。
- 企業間の取引(B to B): クラウド会計ソフトや卸売りサイトなどでの購入や定額利用
- 企業と個人の取引(B to C): AmazonやYahoo!を使った買い物
- 個人間の取引(C to C): メルカリやラクマなどの中古品売買
そのなかでも、2つ目の企業と個人の取引(B to C)をECとする場合が多いです。とはいえ、一般的にECの対象は、インターネット上での取引全般と捉えておきましょう。
ECを実現するためには、技術やシステム面だけでなく、ビジネスモデルや戦略面も重要です。例えば、
ECサイト | 自社で運営するウェブサイトで商品やサービスを販売する形式です。自由度が高い反面、集客や運営にかかる費用も高くなります。 |
マーケットプレイス | Amazonや楽天市場など他社が運営するウェブサイトに出店する形式です。集客力が高い反面、手数料や競合他社との差別化に注意が必要です。 |
SNSコマース | InstagramやLINEなどソーシャルメディア上で商品やサービスを販売する形式です。若年層を中心に人気がありますが、信頼性や安全性に配慮する必要があります。 |
これらは一例であり、他にも様々なECビジネスモデルが存在します。また、複数のチャネルを組み合わせたり、オフラインとオンラインを連携させたりすることも可能です。
ECのメリット
ECは、様々な業種や企業において利用されており、メリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 店舗や物流などのコストを削減できる
- 市場や顧客層を拡大できる
- データ分析やマーケティングなどの効率化が図れる
- オムニチャネル戦略などの柔軟な対応が可能になる
ECで取引を行うメリットは小資本で済むことです。インターネット上にショップを構えるのに必要なのはサーバ代、またはクラウドサービスの利用料金だけです。あとは、商品を在庫するための倉庫、もしくは保管スペースがあれば十分です。もし提供しているのがサービスやソフトウェアであれば、在庫も必要ありません。
小規模であれば、自室で商品の在庫と発送作業ができます。実店舗で商品やサービスを販売するより、家賃や人件費などが格段に安く済みます。そのため、個人でスタートして、規模を大きくしていけば法人化も可能です。
ECのデメリット
一方で、インターネット上で取引するため、同じ方法でビジネスをする競合他社が多いのがECのデメリットです。その他にも、ECには以下のデメリットがあります。
- インターネット上で価格競争に巻き込まれる
- 宣伝や集客の難易度が高い
- 顧客からリアルなフィードバックが得られない
対策として、販売する商品やサービスに独自性を追求し、顧客に選ばれる優位性が必要です。また、サイトのブランド力や商品力をユーザーに認知させ、価格以外の面で選ばれるようにもしないといけません。
そのため、宣伝や集客のためにSNSを利用したり、GoogleやYahoo!に有料で広告を出したりして、集客につなげる方法を模索する必要があります。SNSやメルマガを利用した方法では、定期的にキャンペーンなどの得点を付けて、顧客からコメントや意見などをもらい改善点を洗い出す方法が有効です。
これからECに参入するなら、不必要な競争を回避するために、デメリットの把握と対策を準備しておきましょう。
ECの市場規模は右肩上がりで伸びる
世界の市場規模は右肩上がりで伸びています。EC物流の市場規模は物販系EC(toC向け)に限っても、2023年度が13兆9,997億円、前年比増減率5.37%と大きな市場です。
ECは個人で参入できるものが多く、個人間取引がさらに増えます。理由は、インターネットを利用して買い物をする人口が爆発的に増えるからです。国連機関の国際電気通信連合(ITU)が発表した内容によれば、2016年における世界のインターネット普及率は47%だったそうです。今後は、発展途上国を中心にインターネットの普及が急速に広がり、ECを利用する人が増える見通しです。
経済産業省がまとめた越境ECの市場規模の予想のグラフでは以下のようになっています。
他にも、書籍『すべてが「加速」する世界に備えよ』では、今後の買い物について以下のように記述しています。
“ネット接続人口は2017年の38億人から、2025年には82億人に達する。その大多数は小売店やショッピングモールには足を運ばないだろう。買い物は居心地のいい自宅からモバイルデバイスを使ってネット上で済ませるようになる。”
抜粋引用:P156より 出版社:NewsPicksパブリッシング 2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ」発行:2020/12/24
つまり、日本やアメリカなどの先進国だけでなく、発展途上国を含めてインターネット上で買い物が済むようになります。そのため、世界的にECの市場規模はさらに拡大します。
また、EC物流市場はこれまでtoC向けが主流でしたが、近年はtoB向けも拡大し続けている点です。令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省では、2022年のデータには420兆2,354億円、前年比増加率37.5%となり、toC向けよりも成長幅が大きい結果となりました。併せて、越境ECも販路拡大が続いており、対中国で2兆2,569億円(増加率5.6%)、対アメリカが1兆3,056億円(増加率6.8%)と順調に市場拡大しています。
日本国内のみに限らず、物販業界での成長にECが欠かせないものとなっていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
主なECの種類2選
ECは以下の2つに大別できます。
- プラットフォーム
- 自社ECサイト
それぞれの特徴を説明します。
プラットフォーム
プラットフォームとは、インターネット上に知名度のあるショッピングモールがあり、アカウントやショップを作成して、モール内に商品を販売する方法です。
有名なプラットフォームとしては、以下の3つがあります。
- Amazon
- eBay
- 楽天
サイト自体に集客能力と認知度を獲得しているため、商品の販売を始めるとすぐにビジネスになります。そのため、知名度のない個人店であってもビジネスのスタートが可能です。プラットフォームが越境ECサイトの場合は、商品フォーマットや多言語対応など、必要な機能があらかじめ用意されており、手間なく海外展開が可能です。
その反面、出店費用や販売手数料などが必ず発生します。また、商品ページのデザインも限定されているため、オリジナリティの追求はしにくいです。プラットフォーム内に似た商品を扱う競合も多いため、競争が激しい傾向にあります。また、商品とニーズをマッチさせるためにリサーチも重要です。
参考記事:ECモールに出店する際のポイントとは?メリット・デメリットも解説
自社ECサイト
自社ECサイトとは、プラットフォームを利用せずに、自身でホームページを立ち上げ、商品を直接販売する方法です。D to C(Direct to Consumer : 直販)と呼ばれる場合があります。サイトデザインや機能のカスタマイズ、ページ数などが自由に設計・追加できるのが特徴です。また、自身で制作するため、手数料などのコストが最低限で済むメリットがあります。
自社ECサイトで有名なのは以下の3つ。
その反面、自社ECサイトを立ち上げただけでは認知度がないため、オウンドメディアやコンテンツマーケティングを行い、消費者に見つけてもらう必要があります。また、多言語対応や海外発送も自社で設定しないといけません。
したがって、サイト構築と消費者から認知を獲得して、十分な発送体制を整えないとビジネスとして収益化が難しいでしょう。
ECを利用したビジネス事例3選
ECサイトを利用して知名度や人気のある事例を3つ紹介します。
- ZOZOTOWN
- ヨドバシカメラ
- ニューバランス
名前だけ見ると普段のイメージにはない会社があるかもしれません。
1つずつ確認していきましょう。
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)は、株式会社ZOZO(ゾゾ)が運営するアパレルを中心に扱うECサイトです。
服のサイズなどが独自に採寸したサイズ表記をしており、ファッション・コーディネート・アプリ「WEAR」をユーザーに提供。試着ができないECサイトの弱点をカバーして使い勝手を高めています。
ユーザーから高い支持を集めており、2022年の段階で年間購入者数1000万人以上だそうです。
商品発送などの物流に関しては、外部に委託せず自社で対応し作業の効率化。
2022年12月16日には、表参道に初の実店舗パーソナル・スタイリング・サービス「niaulab by ZOZO」をオープンさせています。
■参考サイト
自分の「似合う」が見つかる超パーソナルスタイリングサービス「niaulab by ZOZO」、応募開始3日間で2万件を突破! – 株式会社ZOZO
ゾゾタウンが初の常設実店舗オープン、パーソナルスタイリングサービスを提供
ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラと言えば、家電量販店のイメージがあるかもしれません。しかし、ECサイトでの取引も多く、2021年3月期のEC売上高は2,214億円で、ZOZOTOWNよりもECの売り上げが高いです。
取り扱っている商品は、800万点を超えており、家電だけでなく雑貨や食料品までECサイトで購入ができます。
Amazonを意識しており、配送料無料や当日・翌日配送など配送体制を大幅に改善。今後、ECの販売比率を3割から5割にまで引き上げると発表もしているため、さらにECサイトの利便性が高まるはずです。
■参考サイト(メディアやブログ記事):
ECサイトが強いヨドバシカメラ!企業の歴史や事業内容・最近の動向を紹介|ECzine(イーシージン)
【EC売上ランキング2022年版】1位はアマゾン、2位はヨドバシ、3位はZOZO | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム
NB(ニューバランス)
シューズブランドのNB(ニューバランス)は、ECサイトの欠点である顧客とのコミュニケーションを重視して顧客満足度の向上に努めています。
そのため、ECサイトでありながら、専用のコールセンターを備えており、実際に寄せられたユーザーの意見を「お客様からの声」ページで公開し、改善が見えるようにしています。
また、倉庫には専任スタッフを配置、検品精度を高めて不良品や注文の取り違えなどが起きにくい体制を構築。
ECサイト自体の使いやすさも考慮しており、ワンクリックで注文が完了する「1ステップde注文完了サービス」を導入しています。また、購入後10分ほどを「注文キャンセル」時間として設けており、衝動買いを考え直すタイミングを顧客に用意しています。
■参考サイト
【NB公式】ニューバランス | New Balance【公式通販】
ECサイト成功事例6選!ECサイトを成功させる4つの法則もご紹介! | ART TRADING
【ニューバランスジャパンのEC戦略㊤】 顧客視点でサービス拡充、ワンクリック購入や電話注文など、チャットもテスト導入 | アパレルウェブ:アパレル・ファッション業界情報サイト
EC販売とは今後のビジネスで必要なインターネット上での取引全般
EC(Electronic Commerce)とは、インターネット上での取引を指します。その中には、法人取引や個人間取引も含まれます。しかし、大半は企業と個人の取引を指す場合が多いです。
ECといっても、Amazonや楽天などのプラットフォーム型か、自社ECサイト型にするのかで、必要な手間や人員が変わります。アパレルのZOZOTOWNや家電量販店のヨドバシカメラなどは、ECサイトの弱点や配送時間を改善して、ユーザーの使い勝手を良くした仕組みを提供して認知を広げつつあります。