日経平均株価や金・原油など特定の指標に連動するように運用されるため値動きがわかりやすく、いつでも売買できるETF(上場投資信託)は、投資対象として株や債券、また一般の投資信託とは違った魅力があります。
実に多くのETFが上場している中で物流企業のみを投資対象としたETFもありますが、REIT(不動産投資信託)といったい何が違うのでしょうか。今回は、ETFとREATの違いや、物流施設に特化したETFと、ETFやREITが注目される理由などについてまとめました。
ETFとは?
ETFは、「上場投資信託」のことで、投資のプロに資金を預けて代わりに資産運用してもらう金融商品です。投資対象は、数十社から、多ければ数千社におよぶ例もあり、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、特定の指標と連動することを目指して運用されます。
投資信託との大きな違いは、投資信託が非上場なのに対して、ETFは上場しているので、毎日刻一刻とリアルタイムで値動きがあり、株と同じくいつでも売買できる点です。数百円からでも始められる投資信託に対し、ETFは、初期投資に少なくとも2万円以上は必要です。投資信託は銀行や郵便局でも購入できますが、ETFは、証券会社でしか買えません。売買手数料は、少なければ投資信託の10分の1程度で済みます。
投資を行う際のリスク管理として、分散投資が常識ですが、自分一人で何社もの株や債券を購入して運用するのは、なかなかに大変です。その点、ETFなら依頼している相手は一つでも、複数の会社に投資しているのと同義といってよく、その内の一社の株が下落したところで、他に多彩な投資先を有するため、ETF自体が大幅に下落するというのはあまり考えられません。
物流に特化したETFはあるのか
ETFが日本で初上場したのは、1995年のことで、以後2001年に東京証券取引所と大阪証券取引所に5銘柄が上場されると、徐々に増え始め、現在では200以上の銘柄が揃っています。
その中で、物流に関していうと、「NEXT FUNDS運輸・物流(TOPIX-17)上場投信」という銘柄があります。TOPIX-17というのは、東京証券取引所第一部に上場している全銘柄を17業種に分けた時価総額加重型の株式指標のことです。2002年12月30日の各業種の時価総額を100ポイントとし、現在の時価総額がどれくらいにあたるかをベンチマークとして示しています。その一つに「運輸・物流」があり、構成銘柄は「陸運業」「海運業」「空運業」「倉庫・運輸関連業」になります。
このTOPIX-17に採用されている銘柄と採用が決まった銘柄のみに投資をしてベンチマークと連動することを目指して運用されているのが、「NEXT FUNDS運輸・物流(TOPIX-17)上場投信」です。つまり、国内の主要な運輸・物流企業のマーケットをシンボリックに表している金融商品ともいえ、その値動きは、同業界の縮図に等しいといっても過言ではありません。
実は、後述する「REIT」と連動することを目指している「グローバル X ロジスティックス・J-REIT ETF」も存在します。詳しくは、以下のページをご参照ください。
(参考)
REITと何が違うのか
では、ETFは、REITとどこが違うのでしょうか。
REITは、不動産投資信託のことで、投資家から資金を集め、ビルやマンションなどの不動産を購入のうえ賃貸して得る家賃収入や売却益を原資として分配する金融商品です。
上場のうえ、取引所で売買可能で、投資家ではなく不動産運用のプロに運用を任せるという意味では、ETFと似た面があります。ただし、その対象は株や債券ではなく、実体のある不動産である点が、ETFとは大きく異なります。
また、日本初のJ-REIT(不動産投資法人)に限ると、利益の90%超を配当することで法人税が免除されるという特異性があるため、効率の良い配当が呼び水となって、流動性と換金性に富んでいる点も注目すべき特徴といえるでしょう。
物流関連のREIT
国内の不動産マーケットには、国内のみならず海外からも多額の資金が流入しており、REITはそのターゲットの一つとして大変注目されています。理由は、REITが、アパートや戸建て住宅ではなく、オフィスビルやホテルをはじめとする大規模商業施設をメインターゲットとしており、額の大きな家賃収入や売却益が期待できるからに他なりません。その商業施設には、巨大物流倉庫を中心とする物流施設も含まれます。
近年、スマホの普及による急速なデジタルシフトによって、ネット通販市場は目覚ましい成長を遂げてきました。しかも、2020年以降は、新型コロナウィルスの世界的流行により、極端な行動制限と非接触の励行が強いられると、ECへの依存度はさらに高まります。このニーズに応えるには、巨大かつ機能性に優れた物流倉庫の存在が不可欠です。
年間の宅配便数は50億個に迫る勢いで増加しており、物流倉庫の市場価値は高まる一方どころか、供給不足というのが現状です。その証拠に、REITが対象としている大型物流倉庫の稼働率はほぼ100%をマークし、賃料も上昇傾向を維持しています。今後も首都圏や
大都市近辺で、港湾や空港から近く、高速道路や住宅地へのアクセスがよい場所には、土地さえ見つかれば先進的かつ大規模な物流倉庫がさらに建設されていくものと予想されます。
また別の観点からみると、昨今は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を意識した経営姿勢が投資家やステークホルダーから強く求められる傾向があります。物流業界も例外ではなく、その業務の特殊性から考えても、CO2の排出を抑える脱炭素への取り組みは、絶対に無視できないテーマといってよいでしょう。現に巨大物流倉庫の屋根には、太陽ソーラーパネルの設置がすでに常識化しており、持続可能性に配慮することで巨額の投資マネーが調達できているのです。
加えて、他の建物と比較して、構造が簡素で頑丈、耐震性や免振性にも優れ、修復がしやすいことから、被災後の復旧スピードも速いと考えられる点が投資家の安心材料となっている点も、特筆すべきでしょう。
先ほど説明したJ-REITを指標とする「グローバル X ロジスティックス・J-REIT ETF」が存在するのも、国内のREIT市場が有望で、市場から強く期待されていることを物語っているといえます。
物流需要の激増と持続可能性を意識した取り組み、この有望な2本軸が、今後の物流関連のREIT市場を大きく支えていくことは間違いないでしょう。
物流施設特化型J-REIT
最後に、物流施設特化型J-REITのなかでも、とくにメインとなるものをご紹介しましょう。
- SOSiLA物流リート投資法人
- 日本プロロジスリート投資法人
- GLP投資法人
- 三井不動産ロジスティックパーク
- 三菱地所物流リート投資法人
- 日本ロジスティクスファンド投資法人
- 伊藤忠アドバンス・ロジスティクス
- ラサールロジポート投資法人
物流施設の場合、一度テナントとして入居すると、途中で入れ替わることは極めて少ないため、安定した家賃収入が見込めます。しかも、他のオフィスビルなどが、3年前後の契約期間が相場のところ10年前後と長い点も、物流施設特化型J-REITの底堅さを後押ししているといってよいでしょう。
まとめ
物流関係の取引市場は、株や債券、REITが牽引している傾向が強いです。しかし、各種物流プラットフォームへの需要や将来への期待の高まりが、世界中から投資マネーを呼び込み、さらなる活況を呈していけば、物流に特化したETFについても、さらなる成長が期待できるに違いありません。今後の動きを楽しみにしながら注視していきましょう。