発送代行とは、商品の入庫・保管・梱包・出荷・返品といった物流業務を専門業者に一括で委託できるサービスです。ECの拡大に伴い、「現場を楽にしたい」「物流品質を上げたい」などの理由から多くの企業が導入しています。
導入を検討するうえで、最も気になるのが費用感です。
発送代行の費用は「1注文あたりのコスト(CPO)」で比較できます。本記事では、その相場と内訳を整理し、自社条件でCPOを計算できる試算シートと、業者比較に使えるRFP提案依頼書の作り方の解説をしています。
さらに、業者選びで必須となる当日出荷率・誤出荷率・在庫精度・締め時間の比較軸や、導入ステップ(3〜6週間の移行プロセス)も解説。
読み終える頃には、
- 自社の費用感がわかる
- 比較と見積依頼の準備ができる
- 導入判断を安心して進められる
状態になります。
「まず相場を知りたい」「納得感のある発送代行業者を見つけたい」──そんな方に向けた完全ガイドです。
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目次
発送代行とは?
発送代行とは、商品の入庫・保管・ピッキング・梱包・出荷・返品といった物流業務を、外部の専門業者にまとめて委託できるサービスです。ECサイトや通販事業者にとって欠かせない「出荷オペレーション」をプロに任せることで、スピードや品質を安定させられます。
「自社で在庫を持ち、スタッフが梱包して出荷」というやり方では件数が増えるとすぐに限界が来ます。
その課題を解決する仕組みが発送代行です。
委託できる業務範囲
業者によって範囲は異なりますが、基本的には以下の物流業務を委託できます。
- 入庫
- 商品を倉庫に搬入、検品、システム登録
- 保管
- 棚割・ロケーション管理、温度/湿度管理
- ピッキング
- 注文内容に応じて商品を棚から取り出す
- 梱包
- 箱詰め、緩衝材、ギフト包装、チラシ封入など
- 出荷
- 伝票発行、ラベル貼付、配送業者への引き渡し
- 返品処理
- 返品商品を受け取り、再検品・在庫登録
また、流通加工(セット組やラベル貼り)やキッティング(電子機器の初期設定)などの付加作業にも対応する業者もあります。
依頼できる商材の例と注意点
- 食品・飲料:常温品は対応可能。冷蔵・冷凍品は温度管理倉庫を持つ業者限定。生鮮品は不可が多い。
- 化粧品・サプリ:薬機法やロット管理に対応できるか要確認。
- アパレル:SKU数が多いため、在庫精度や棚割設計が重要。
- 大型家具・重量物:対応外の業者が多い。専門の3PL業者に委託するケースが多い。
倉庫によって商材ごとに得意・不得意があるため、業者選びの段階で必ず確認が必要です。
発送代行を導入するメリット
発送代行を導入するメリットは大きく3つあります。
1. 物流コストを削減できる
- 自社で倉庫を構える必要がない
- 繁忙期の臨時アルバイト採用が不要
- 大手配送業者と提携しているため送料単価が下がる
特に、月間出荷件数が100件以上になると自社運営より安くなるケースが多いです。
2. 出荷スピードと品質が安定する
- 専門スタッフが常駐しているので「当日出荷」「翌日配送」に対応可能
- WMS(倉庫管理システム)で在庫精度を管理
- 誤出荷率0.1%以下を保証する業者もある
「出荷が遅れる」「誤配送が多い」といったクレーム削減につながります。
3. コア業務に集中できる
- 出荷対応に追われて商品開発やマーケティングに手が回らない…という悩みを解消
- 外注化することで、限られた人員を売上に直結する業務へシフトできる
発送代行を導入するデメリット
一方で発送代行を導入することで発生するデメリットには以下の3つが挙げられます。
1. 最低料金・固定費がかかる
- 月3〜5万円程度の固定費が発生する業者が多い
- 出荷件数が少ないと「割高」に感じやすい
2. 個人情報管理の不安
- 顧客データを外部に渡す必要があるため、セキュリティ体制の確認が必須
- PマークやISMSを取得しているかチェックすると安心
3. 柔軟性の限界
- 社内のみのように「急に仕様を変える」といった対応は難しい場合がある
- 契約時に「どこまで柔軟に対応できるか」を確認しておく必要あり
リスクを避けるチェックリスト(導線)
ここまでのメリットデメリットを踏まえて、導入前に確認すべきポイントをまとめた「発送代行サービス導入前チェックリスト」を用意しました。
- 契約前に確認すべきこと
- 情報管理体制のチェック項目
- 料金で後出しされやすい費用項目
発送代行の費用と相場
発送代行の料金は、1注文あたりの作業費+保管費+固定費で構成されます。料金表に「梱包費○円」「入庫費○円」と書かれていても、トータルで見なければ比較できません。
詳しい費用の内訳については、発送代行にかかる費用の内訳と相場で解説しています。
費用の内訳
- 入庫費
- 商品を倉庫に入れるときに発生。段ボール1ケースあたり 100〜200円、単品ごとなら 10〜30円 が目安。
- ピッキング費
- 注文に応じて棚から商品を取り出す作業。出荷単位またはSKU単位で10〜100円。複数商品を組み合わせると加算。
- 梱包費
- 箱詰め・緩衝材・封入作業。1注文あたり 100〜300円 が一般的。ギフト包装など特殊対応は追加料金。
- 資材費
- ダンボール・緩衝材などの資材。注文ごとに 50〜100円 程度。
- 送料
- 発送代行会社が大手配送業者と契約しているため、通常より割安になることが多い。
例:60サイズで 400〜500円、80サイズで 600〜700円 程度。 - 保管費
- 倉庫に商品を置くスペースの費用。1坪あたり 4,000〜6,000円/月、または1パレット 1,500〜2,000円/月 が相場。
- 返品処理費
- 返品商品を検品・再登録する費用。1件あたり 300〜500円 程度。
- 固定費
- システム利用料や基本料。月額 3万〜5万円 程度を設定している業者が多い。
計算式:CPO(1注文コスト)の算出方法
発送代行の比較で重要なのは
CPO(Cost Per Order=1注文あたりのコスト)です。
計算式:
CPO = (変動費合計 × 月間注文数 + 固定費 + 保管費 + 入庫費) ÷ 月間注文数
計算例
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 月間注文数 | 5,000件 |
| ピッキング費 | 50円 |
| 梱包費 | 120円 |
| 資材費 | 70円 |
| 送料 | 600円 |
| 入庫費 | 20,000円 |
| 保管費 | 80,000円 |
| 固定費 | 30,000円 |
計算すると…
CPO = (50 + 120 + 70 + 600) × 5,000 + 20,000 + 80,000 + 30,000 ÷ 5,000
= 1注文あたり 約880円
相場の目安(小規模/中規模/大規模)
発注規模や商品特性によって幅はありますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 規模 | 月間注文数 | 目安CPO | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 小規模EC | 1,000件以下 | 1,000〜1,300円 | 固定費の影響が大きく割高になりやすい |
| 中規模EC | 1,000〜5,000件 | 600〜900円 | ボリュームディスカウントが効き始める |
| 大規模EC | 5,000件以上 | 400〜700円 | 送料単価が下がりやすく、最も効率が良い |
商材別の変動要素
商材によってもCPOは大きく変動します。
| 商材 | 傾向 |
|---|---|
| 化粧品・サプリ | 小型軽量のためCPOは低め |
| アパレル | SKU数が多く、ピッキングコストが増加しやすい |
| 食品 | 温度管理や賞味期限管理が必要でCPOが高くなりやすい |
【配布】自社条件で計算できる費用試算シート
記事内で配布するエクセル試算シートを使えば、「自社の注文数・SKU数・送料条件」を入力するだけで、CPOを自動算出できます。
まずはこのシートでシミュレーションし、内製コスト(自社倉庫+人件費)と比較してみてください。
発送代行業者の選び方
発送代行業者を探すと、まず「ピッキング◯円」「梱包◯円」といった単価表が目に入ります。しかし、単価が安くても出荷のスピードや品質が不十分なら、結果的に顧客満足を損ない、売上に悪影響が出ます。
重要なのは「費用」だけでなく、品質・柔軟性・システム適合性まで含めて比較することです。
発送代行業者の比較軸(チェックリスト)
発送代行業者を選ぶ際に必ず確認すべき指標を整理しました。
| 評価軸 | 確認ポイント |
|---|---|
| 当日出荷率 | 締め時間までの注文を当日発送できるか 例:17時締めで98%以上を保証 |
| 誤出荷率 | 数量ミス・誤配送の発生率 0.1%以下を基準にすると安心 |
| 在庫精度 | システム在庫と実在庫の一致率 99.9%以上が目安 |
| 締め時間 | 受注の〆切時刻 16〜18時が望ましい |
| 繁忙期対応力 | セール・キャンペーンでの出荷増に対応可能か 通常比2〜3倍を48時間以内で捌ける体制 |
| システム連携 | Shopify・楽天・Amazonなどとの自動連携可否 API/CSV対応を確認 |
| 商材対応 | 食品・化粧品・アパレルなどの特性に対応できるか 温度管理/薬機法対応など |
商材別に注意すべきポイント
- 化粧品・医薬部外品
薬機法やロット管理に強い業者かを必ず確認。 - 食品・飲料
温度帯別保管(常温・冷蔵・冷凍)や賞味期限管理の仕組みが必要。 - アパレル
SKU数が多いため、棚割設計や在庫精度の高さが重要。 - デジタル機器
キッティングやセット組など付加作業に対応できるか。
業者比較用のRFP(提案依頼書)の考え方
業者選びで多い失敗は、見積依頼が曖昧なことです。
よくある失敗例
- 「梱包いくらですか?」と単価だけ聞いてしまう
- 返品や繁忙期対応を事前に確認していない
これを避けるには、RFP(提案依頼書)を用意して各社に同じ条件で見積を依頼するのが最も確実です。
RFPとは?
RFPは、自社の現状や課題、やってほしいことをまとめて、業者に「こういう条件で提案してください」と依頼する文書です。目的は、条件をそろえて比較しやすくすること。SLA(サービス品質保証)が契約後の「ルール決め」であるのに対し、RFPは契約前に「相手を選ぶため」に使います。
RFPに書くべきこと
RFPというと難しく考えがちですが、物流業務のお問い合わせであれば次のような項目を整理して伝えるだけでも十分です。
- 背景・現状:商材、受注件数、繁忙期のピーク、SKU数など
- 目的とゴール:コスト削減か、品質向上か、スピード強化か
- 依頼範囲:入庫・保管・ピッキング・梱包・出荷・返品処理など
- 希望条件:当日出荷率、誤出荷率、在庫精度、システム連携可否 など
RFPを使うメリット
- ✔ 条件が揃うので、各社の見積を数字で横並び比較できる
- ✔ 対応できる/できないが明確になり、後からのトラブルを防げる
- ✔ 社内提案でも「公平に比較した根拠」として使える
RFPを作ること自体が、自社の物流を棚卸しして「どこに課題があるのか」を整理する良い機会にもなります。形だけの立派なフォーマットでなくても、自社の現状と希望を分かりやすくまとめて伝えることが一番のポイントです。
導入の流れと準備
発送代行は“契約して終わり”ではありません。
発送代行は単なる外注ではなく、自社の物流基盤を担うパートナー導入です。
そのため、導入=プロジェクト進行と考え、段階的に準備を進める必要があります。一般的には3〜6週間かけて立ち上げるケースが多いです。
導入ステップ(要件定義→テスト→棚割→教育→本稼働)
-
自社要件の明確化
- 月間受注件数、ピーク時の件数
- SKU数(品目数)、サイズ構成
- 締め時間(何時までの注文を当日出荷したいか)
- 必要な物流加工(ラベル貼付・セット組・ギフト対応)
これを整理しておかないと、業者とのすり合わせで必ず漏れが出ます。
-
システム連携テスト
- 受注管理システム(Shopify、楽天、Amazon、自社EC)と倉庫側WMSの連携確認
- API/CSV連携の方式、在庫反映のタイムラグを事前にチェック
運用開始後にシステム連携が不安定だと、誤出荷や遅延の原因になります。
-
商品搬入・棚割設定
- 在庫を移動させる前に現行の拠点で棚卸を実施
- 商品を倉庫に搬入し、ロケーション(棚割)を設定
- アパレルならサイズ別・カラー別、食品なら温度帯別に区分
- 賞味期限やロット管理が必要なら、WMSにルールを組み込む
-
SOP(標準作業手順)整備・教育
- ピッキング順序、梱包手順、返品処理の手順をマニュアル化
- 倉庫側スタッフに教育を行い、サンプルオーダーで試験出荷
この段階で誤出荷がないか、リードタイムが遅くないかを検証します。
-
本稼働・運用開始
- 数日間は並行稼働(自社出荷+発送代行)でリスクを最小化
- 出荷件数、誤出荷率、在庫精度をチェックしながら本格移行
- 運用開始後も月次ミーティングを行い、改善点をフィードバック
契約時に押さえるポイント(SLA・最低料金・追加費用・情報管理)
導入の成功は「契約時に何を取り決めたか」で決まります。とくに以下はSLA(サービス品質保証)として契約に明文化しておくことが重要です。
- 当日出荷率
- 例)受注締め17時 → 当日出荷98%以上
- 誤出荷率
- 例)0.1%以下を保証、超過時はペナルティ
- 在庫精度
- 例)99.9%以上を維持、年次棚卸で確認
- ピーク対応
- 例)通常時の2倍まで48時間以内に対応
- レポート提供
- 日次/週次で在庫・出荷数・誤出荷を報告
SLAを契約に入れていないと、トラブル時に泣き寝入りするリスクがあります。
移行リスクと回避策(データ移行・返品処理・在庫棚卸)
- 在庫差異が大量に発生
移管前に必ず棚卸を実施しておく - システムのタイムラグで二重出荷
APIテストで受注〜出荷のタイム差を確認 - 返品対応が想定外に遅い
RFP段階で返品処理SLAを明記しておく
SLA例(当日出荷率・誤出荷率・在庫精度)
在庫差異や遅延を防ぐために、当日出荷率98%以上・誤出荷率0.1%以下・在庫精度99.9%以上といった
数値+ペナルティ条項を契約に明記してください。
発送代行でよくある失敗と回避方法
単価だけで選んでしまう
多くの企業が最初にやりがちなのが「ピッキング◯円」「梱包◯円」など、単価の安さだけで選んでしまうことです。
結果的に、以下のようなトラブルにつながります。
- 出荷が遅い
- 誤出荷が多い
- 追加費用が次々発生する
回避策:CPO(1注文あたりのコスト)で総額を比較し、SLA(当日出荷率・誤出荷率など)も契約に含める。
ピーク時の物量を見誤る
セールやキャンペーン時に出荷数が通常の2〜3倍に膨れ上がるケースは珍しくありません。
ピーク対応力を確認せずに契約すると、注文が捌けず発送遅延・クレームの嵐になります。
回避策:RFP段階で「ピーク時に通常比2倍まで48時間以内対応可能か?」など具体的な条件を質問する。
SLAを契約に盛り込まない
「当日出荷はできるだけ頑張ります」「誤出荷は少ないです」といった曖昧な説明のまま契約してしまうと、
実際に遅延や誤出荷が起きたときに責任の所在が不明確になります。
回避策:必ずSLA(サービス品質保証)を契約書に明文化する。
- 当日出荷率98%以上
- 誤出荷率0.1%以下
- 在庫精度99.9%以上
これらを「数値+ペナルティ条項」として定めること。
送料・資材など「後出し費用」を見落とす
見積では安く見えても、実際に運用を始めると「資材費が別」「ラベル印字費用が追加」といった後出し費用が発生し、想定よりコストが高くなることがあります。
回避策:見積依頼時に、以下を必ず確認する。
- コンテナからの荷下ろし作業(デバンニング)
- 資材費(箱・緩衝材・ラベル印字)
- 返品処理費
- 月額固定費の内容(WMS利用料、アカウント費用)
- 追加作業費用(セット組・ギフト対応)
社内ノウハウが残らない
発送代行に丸投げしてしまうと、自社に物流の知見が全く残らないリスクがあります。
将来自社倉庫に戻したい、別業者に切り替えたいとなったときに、ノウハウ不足で混乱することがあります。
回避策:
- 定期レポートを必ず受け取る(在庫精度、誤出荷率、出荷リードタイム)
- マニュアルや作業手順を共有してもらう
- 社内でも最低限の物流知識を持つ担当者を置く
まとめ:発送代行は「費用+品質」で選ぶのが成功のカギ
発送代行は、単に倉庫作業を外注するだけではありません。
自社の物流基盤を担う重要なパートナー選びです。
本記事では、
- 発送代行の基本(とは/メリット・デメリット)
- 費用の内訳とCPO計算式
- 比較の軸(当日出荷率・誤出荷率・在庫精度・締め時間)
- 導入の流れと契約で押さえるSLA
- よくある失敗と回避策
を解説しました。記事を読んだだけで終わらせず、次の一歩を踏み出すことで成果につながります。
-
費用感を把握する
無料配布の「費用試算シート」に自社条件を入力し、CPOを算出してみましょう。 -
業者に見積依頼を出す準備をする
RFPを活用すれば、複数社に同条件で見積を依頼できます。 -
失敗を防ぐ契約条件を整える
無料配布の「SLA例文」や「チェックリスト」で、契約前に確認すべき点を明確にしましょう。
「まず相場を知りたい」「納得感のある発送代行業者を見つけたい」──そんな方にとって、発送代行の導入は経営判断の大きな分岐点です。数字で比較し、SLAで品質を担保すれば、責められず、自信を持って提案できる状態になります。
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