EC事業者にとって、商品を販売することと同じくらい重要なのが物流業務です。しかし、保管スペースの確保の難しさや、事業拡大に伴う検品・梱包・発送業務の増加によるスタッフの負担増などで、自社での運用に限界を感じているEC事業者も少なくないようです。また、せっかく受注しても、不良品や納期遅れ、誤配送などで商品の市場価値が下がり、ビジネスがうまくいかなくなることもあります。
そこでおすすめするのが、物流業務のアウトソーシングです。プロの業者に物流業務を委託することで品質の高い物流体制を維持・構築することができます。
本記事では、アウトソーシングのメリットやタイミングについて解説します。
倉庫・物流業務を委託したい方へ
目次
EC事業者はどのような場合に物流アウトソーシングを検討すべきなのか?
EC事業者が物流アウトソーシングを利用するのは、どのような場合に適しているのでしょうか。
「自社物流に限界を感じている」「事業を拡大したい」など、アウトソーシングを検討する最適なタイミングはいくつかあります。
EC事業者の方からは、具体的に以下の課題をいただきます。
- 出荷件数が多く業務が煩雑になりがち
- 1件当たりの出荷量がまちまちで梱包業務が煩雑
- 個別の同梱物の対応が煩雑
- 翌日配送の対応など出荷スピードが求められる
- ギフトラッピングなど特別な対応が必要なケースも多い
- 返品交換対応も行なう必要がある
スタートアップ企業など、まだ自社の事業規模が小さい場合は、事務所の一部や小さな倉庫を借りて、自社の人材だけで物流を完結できるかもしれません。しかし、事業が拡大していくにつれて出荷量が増えれば、そのような物流体制ではどんどん対応が難しくなってしまうでしょう。
「人材が足りない」「在庫を置くスペースが足りない」「在庫が多すぎてミスが頻発している」など、自社物流に限界を感じ始めたら、そのときがアウトソーシングの絶好のタイミングです。
さらに詳しく見ていきましょう。
商品の種類が増えた、または受注件数が増えた
起業当初に比べて取扱商品の種類が増えた、あるいは受注件数が増えたという場合は、アウトソーシングを始める良いタイミングと言えるかもしれません。特に、一般的に受注件数は月300件までと言われています。受注件数が100件を超えると、自社で物流業務を行うことが難しくなるケースもあります。
一人当たりの出荷数が制限される
上記のように受注件数が増えても、人員に余裕があれば、なんとか自社で対応できるかもしれません。しかし、その数に余裕がなかったり、家族経営であったりすると、そうもいきません。発送に時間がかかると、遅延や梱包ミスなど別のリスクが発生する可能性もあります。そのため、一人当たりの出荷数の上限を決めておき、その数に達した時点で早めにアウトソーシングを検討したほうがよいでしょう。
保管スペースの不足
商品在庫が増えれば、当然保管スペースの拡張が必要になります。また、セキュリティや在庫管理などの管理業務も負担になります。それに対応するためには、倉庫を拡張したり、借りたりする必要があります。保管スペースに限界が見えてきたら、アウトソーシングのコストと拡張やレンタルのコストを比較し、アウトソーシングの方が安ければ、切り替えのタイミングと言えるでしょう。
梱包材や輸送費が増えている
物流業務が増えるということは、梱包材が確実に増えるということです。もちろん、送料も増加します。アウトソーシングを利用すればこれらのコストを削減できるので、負担が重いと感じ始めたら早めの切り替えをおすすめします。
梱包・配送業務に一定の品質を保ちたい
プロの物流業者は、梱包から配送までスピーディーかつ極めて丁寧に行います。より良い品質で、きれいな状態で消費者の手元に商品が届けば、会社の評価は確実に上がり、競争優位に立つことができる。ベテランと新人で梱包技術にムラがある場合や、梱包・配送ミスによるクレームが多い場合などは、アウトソーシングが効果的です。
EC事業を拡大する必要性を感じたとき
通常の物流と比較すると、EC物流は以下のような特徴があります。
- 少量の商品を多くの宛先に素早く発送する必要がある。
- ギフトラッピングや資材の同梱など、個別対応が多い
- 返品が多い
- 海外に発送する
これらの特徴から、EC物流は高度にシステム化された物流システムと豊富なノウハウが必要となり、複雑な業務になりがちです。この点、専門の物流事業者にアウトソーシングすることで、自社の業務負荷を軽減し、コアビジネスに割くリソースを最適化するとともに、顧客のニーズに応じた高品質なサービスを提供することができ、EC事業をスムーズに展開することが可能になります。
今後、商品数・ブランド数の増加や海外発送の開始など、事業範囲の拡大を計画している場合は、早めにアウトソーシングの体制を整えておくとよいでしょう。特に海外発送に関しては、業者によっては対応できない場合や地域が限定されている場合があり、選定や契約までに時間がかかる場合があります。そのため、なるべく早く動いたほうがよいでしょう。
物流アウトソーシングで委託できる業務内容とは?
自社でEC事業の物流業務を行う場合、倉庫や輸送車両などの固定資産を確保し、それを扱う人材を自社で雇用・育成する必要があります。
一方、物流アウトソーシングを活用した場合は、上記の資材の一切を用意することなく、豊富なノウハウや確かな方法論を持った物流のプロが業務を代行してくれます。これによって自社の事業体制のスリムアップが可能になります。
具体的には、以下のような業務をアウトソーシングすることが多いです。
- 入庫
- 棚入れ
- 保管、在庫管理
- 検品
- ピッキング
- 流通加工
- 梱包
- 配送
これらの作業は、自社から完全に切り離され、契約している物流代行サービスや倉庫業者、運送会社などに全面的に委託されます。
入荷
物流業務のスタートは商品・製品(加工してから製品として流通させるもの)が到着し、倉庫に受け入れるところからとなります。入荷された商品の数や状態に問題がないか確認する作業が検品です。 もしここでミスや誤りがあると、予定通りの出荷が間に合わなくなる、在庫差異が発生してしまうなど顧客への影響も出るトラブルになってしまいます。
棚入れ
検品後の商品を所定の位置に格納することを、棚入れ(または入庫)といいます。EC物流において、商品は大小さまざまで重量もそれぞれ異なるため、ロケーション管理や棚割りをどのようにするか工夫が必要です。 所定の場所に棚入れしていない、格納した数量を間違ってデータ入力した、などの人為的ミスが起きやすい業務です。代行業者では、この問題を解消するWMS(倉庫管理システム)を導入しているケースが多いでしょう。
保管、在庫管理
商品を適切に保管・管理するために重要な業務が保管、在庫管理です。商品により冷蔵必須なもの、湿気を避けるべきもの、暗所保管が必要なものなど様々です。保管期間が長くなると商品の劣化にもつながってしまうため、適切に在庫を動かせるよう、管理する工夫も欠かせません。 また商品の品質維持のためにも繁忙期がいつなのか、繁忙期・閑散期それぞれに対応しうる在庫調整を可能にするためにも、この業務が的確に運営されることが重要です。
ピッキング
出荷する商品を棚から取り出すことをピッキングといいます。この業務を適切に行えないと、誤発送に直結し顧客からの信頼失墜となるリスクがあります。 またこの業務をスムーズ・的確に進めるには、既出の「棚入れ・在庫管理」が適切に運営されていることが欠かせません。 誤出荷の理由と対策については、別記事:ECで誤出荷はナゼ起きる?6つの原因と7つの対策を紹介!で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
流通加工
ユーザビリティの向上、販売店の負担軽減につながる流通加工は、様々な加工を行うため設備投資も、従業員教育も負担のかかる業務です。 ECにおいては、商品を袋詰め(衣類・雑貨など)する、商品を小分けにして包装する、同梱するサンプルをちらしとあわせて包装する、などがあります。そのほかにも個別に顧客からのオーダーがあれば、ギフトラッピングに対応するケースもあるでしょう。こうした対応を効率化するには、人材教育や梱包資材の選び方なども重要で、機械化できない(するほどの件数でもない)場合は人手が欠かせないため、物流業務上の大きな課題にもなりがちです。そのため、流通加工から梱包・発送までを代行業者に委託する企業も少なくありません。
出荷検品・出荷
出荷する前に間違いがないか確認する、宛名をプリントし貼付する、確認後の梱包の封をするといった業務を行うのがこのステップです。 梱包するにあたっては、配送中の汚損・破損を防ぐための緩衝材を入れる作業や、適切な梱包材を選ぶことも重要です。 もし間違って宛名を貼付してしまえば、希望日に届かない、間違った商品を届けてしまうといった、物流上最も避けるべきトラブルになります。間違いのないよう効率よく進めるには、どのように作業を進めるかがポイントになります。
EC物流をアウトソーシングするメリット
EC事業者にとって、物流アウトソーシングは以下のようなメリットがあります。
- 物流コストや人件費の削減
- 物流品質やスピードの向上
- 物流システムや設備の最新化
- 物流リスクの分散
- コアビジネスへの集中
EC物流をアウトソーシングするデメリット
一方で、物流アウトソーシングには以下のようなデメリットもあります。
- 情報連携や管理体制の不備
- アウトソーシング先との価値観や方針の不一致
- アウトソーシング先への依存度や排他性の高さ
- アウトソーシング先からのサービスレベル低下
これらのデメリットを回避するためには、物流アウトソーシングを成功させるためのポイントがあります。それは以下の通りです。
- 自社で行うべき物流業務と委託するべき物流業務を明確に分ける
- アウトソーシング先を選定する際には、実績や評判だけでなく、自社と相性が良いかどうかも考慮する
- アウトソーシング先と定期的に情報交換や評価を行い、改善点や問題点を共有する
- アウトソーシング先に対して適切な報酬体系や契約内容を設定し、双方が満足できる関係を築く
以上が物流アウトソーシングについて知っておくべきことです。
アウトソーシングの注意点
物流アウトソーシングを検討する際の注意点は以下の通りです。
委託可能な業務内容の確認
物流業務といっても、倉庫業務から配送業務まで様々なものがあります。中には、希望する物流加工ができなかったり、検品が困難な場合もあります。扱う商品によっては、保管に特殊な環境・機能・技術が必要な場合があります。そのため、自社のニーズに合った業者を探すことが何よりも重要です。
他にも、業者によっては即日発送や細かい梱包の指示には対応していなかったり、対応できる商品数が限られていたりする場合があります。どの業者を選ぶにせよ、物流をアウトソースした場合、社内物流に比べて柔軟性に欠け、コミュニケーションに時間がかかる可能性があることを念頭に置いておく必要があります。
物流業者を選定する際には、これらの点を考慮した上で、自社のニーズに合った実績のある業者を選ぶことが大切です。
見積もりを取る
当然ながら、物流業務を外部の専門業者に委託すると、業務委託料が発生します。物流アウトソーシングの料金体系は、「基本料金+在庫数や配送個数に応じた従量制料金」が一般的です。また、特別なサービスプランを利用する場合は、そのプランに応じた追加費用が発生します。こうしたコストを積み重ねた結果、当初の想定よりもコストが高くなる可能性があります。
また、御社の工場や仕入先の倉庫とアウトソーシング会社の倉庫との距離が長い場合は、輸送費も考慮しなければなりません。
これらのコストの合計が、自社で物流業務を行う場合のコストを上回ってしまうと、アウトソーシングのメリットは薄れてしまいます。したがって、複数社から見積もりを取り、事業レベルや立地条件など様々な要素を考慮した上で、総合的に最も適切な会社を選択する必要があります。
アウトソーシングを断られる可能性がある
一般的に、物流会社では一定期間(1ヶ月など)に委託する最低個数を定めています。つまり、あまりに委託品目が少ないと、断られる可能性があるのです。これも事前によく調べておく必要があります。委託する商品数が少ない場合や不安定な場合は、1点からでも柔軟に対応してくれるクラウドソーシング業者を利用することをおすすめします。
物流アウトソーシングのメリット
物流業務をアウトソーシングすることで、以下のようなメリットが考えられます。
- 新製品開発、販売、マーケティングなどのコア業務に集中できる
- 在庫保管スペースが不要になるため、管理業務や管理コストの削減
- 倉庫保管、検品、梱包などの作業が不要となり、人件費の削減
- プロに任せることによる納期遅れや誤配送の減少
- 梱包の品質向上
- クレーム件数の削減
これらのメリットについて、詳しく解説していきます。
業務の最適化
コア業務を回して市場を拡大しながら、複雑な物流業務を自社で処理することは、企業にとって大きな負担となります。既存の従業員に本来の業務に加えて物流業務を行わせるのは非常に非効率ですし、専門要員を用意したとしても、自社に物流ノウハウを蓄積するには多くのコストと時間がかかります。
その点、物流業務をアウトソーシングすれば、日々の実行と物流業務を信頼できるパートナーに任せることができます。これにより、従業員は本業に専念し、ビジネス拡大のための時間を確保することができます。また、自社の物流能力を心配する必要がなくなるため、ビジネスの成長に合わせてより多くの商品を出荷することで、スムーズに売上を伸ばすことができるのも大きなメリットです。
このように、物流アウトソーシングを利用することで、高い物流品質を確保しながら、自社で効率的に業務を行うことが可能になるのです。
コスト削減
自社の物流をアウトソーシングすることで、アウトソーシング企業は多くの物流コストを削減することができます。
削減できるコストの第一は人件費です。自社物流の場合、物流業務を行う作業員を雇用し、教育する必要がある。また、年末年始などの繁忙期には、一時的にアルバイトを募集して人員を補う必要がある場合もあります。この点、物流アウトソーシングを利用すれば、人材の採用・育成にかかるコストや労力を削減することができます。
また、在庫管理を維持するためのコストを削減できることも重要なポイントです。物流アウトソーシングを利用することで、物流に必要な倉庫や車両、情報システムなどの固定費や、在庫管理自体にかかるコストを削減することができます。また、関東地方や東海地方に拠点を置く物流業者を選べば、全国一律の配送が可能となり、配送にかかる総コストを削減することができます。
経済産業省の調査によると、企業が物流アウトソーシングのメリットとして挙げた回答は、「物流コストの明確化」(44.9%)が最も多く、次いで「コスト削減」(38.5%)となっています。
お客様のニーズに合わせて対応できる
もう一つのメリットは、お客様のニーズに合わせたサービスを提供できることです。
お客様によっては、ギフトラッピングなど特別な対応を求められることもあるでしょう。しかし、物流業務を担うリソースや時間が限られている場合、そうした顧客ニーズに対応することが難しい場合も少なくありません。
その点、こうしたオプションサービスも提供している専門会社に委託することで、お客様のニーズに合った質の高い貨物輸送を提供することが可能になります。また、企業のニーズによっては、チラシやノベルティなどを同梱してくれる会社もあるようです。
このように専門業者に委託することで、自社だけでは対応が難しかった業務にも対応できるようになり、顧客満足度の向上が期待できるのです。
まとめ:物流アウトソーシングでEC事業を効率化しよう
近年、EC需要は目に見えて増えてきていますが、それは同時に競争が激しいということでもあります。商品開発や販売だけでなく、物流業務も充実させてこそ、真に競争優位に立つことができるのです。したがって、状況に応じてアウトソーシングを行うタイミングを逃さないことが非常に重要です。
物流アウトソーシングを利用することで、アウトソーシング企業は本業に専念しながら、様々な面でのコスト削減や高い物流品質の確保を行うことができます。アウトソーシング先を検討する際には、費用対効果を多角的に検討し、自社のニーズに合った実績のある会社を選択することが重要です。
EC事業者は、自社のニーズや状況に合わせて、物流アウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。