「燃料サーチャージ」と聞くと航空券のイメージがあるかもしれません。しかし、燃料価格の高騰で、トラックの運賃にも燃料サーチャージが導入されつつあります。
そこでこの記事では、トラック業界に導入が進む燃料サーチャージについて、以下の内容を紹介します。
- 燃料サーチャージについて
- トラックの燃料サーチャージの計算方法
- 燃料サーチャージを導入する際のポイント
- トラック業界に燃料サーチャージを導入する背景
燃料サーチャージがイマイチわからないと感じる人やこれから導入を考えている人に役立つ内容になっています。この記事を参考にして、燃料サーチャージの理解と導入するためのコツを掴んでください。
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目次
燃料サーチャージとは
まず、燃料サーチャージとは、燃料価格の上昇や下落によってコストが増減した場合に、追加運賃として請求する制度です。燃料価格が変化するのは、原料となる原油価格が世界情勢や政策の影響を受けるからです。
燃料サーチャージの起源は、1990年代末ごろに飛行機の燃料価格が急騰したのがきっかけでした。急騰した燃料価格によって航空会社の負担が増大。そのため、燃料代の一部を飛行機を利用する乗客に追加で負担してもらう形で導入されました。日本に導入されたのは2000年に入ってからです。つまり、燃料価格が上昇したら、その分を運賃に追加する仕組みです。
現在では、航空運賃だけでなくフェリーやトラック、燃料が必要な温水プールの利用料金にも燃料サーチャージ制度が導入されています。
正式名称は「燃油特別付加運賃」と言います。
トラックの燃料サーチャージの計算方法を紹介
この章では、燃料サーチャージの計算方法を紹介します。計算式は2つあり、以下の順番で説明します。
- 距離制運賃
- 時間制運賃
燃料サーチャージの計算には、前提条件として燃料価格の設定をしておかないといけません。また、トラックの燃費がわかっていないと計算するための数字が入力できません。
そのため、計算する前に燃料価格と燃費を確定させてください。
距離制運賃
距離制運賃とは、トラックの移動距離で燃料サーチャージを計算する方法です。計算式は以下の通りで、2段階で燃料サーチャージの金額を算出します。
- 燃料消費量(リットル) = 走行距離(km) ÷ 燃費(km/リットル)
- 燃料サーチャージ額(円)= 燃料消費量(リットル) × 算出上の燃料価格上昇額(円/リットル)
トラックの燃費や燃料の上昇額の把握を日ごろから行っていないと計算ができません。
まだ燃料サーチャージの導入前で何をしていいかわからない場合は、トラックの正確な燃費から計測してみましょう。
時間制運賃
2つ目の時間制運賃は、トラックを1日、または半日をチャーターなどで運行した場合に使用する方法です。
こちらも2段階の計算をして燃料サーチャージ代を出します。
- 一日当たりの平均燃料消費量 (リットル) = 一日当たりの平均走行距離(km) ÷ 燃費(km/リットル)
- 燃料サーチャージ額(円) = 一日当たりの平均燃料消費量(リットル) × 算出上の燃料価格上昇額(円/リットル)
今後、燃料サーチャージの導入を検討しているのであれば、両方の数値を出せるように、燃料価格の設定とトラックの燃費を明確にしておきましょう。
燃料サーチャージを導入する際のポイント
この章では、燃料サーチャージを導入する際のポイントを紹介します。
燃料サーチャージ代は取引先に請求するものです。そのため、前触れなしに燃料サーチャージ代を請求しても取引先が支払うはずがありません。また、燃料サーチャージの導入には、国土交通省の地方運輸支局へ届出が必要です。
つまり、燃料サーチャージの導入は、手順を踏んで慎重に進める必要があります。そのため、導入をする前の確認事項として以下の3つポイントあげられるでしょう。
- 原価計算をしっかりと算出する
- 費用見直しと節約を入念にする
- 取引先とコミュニケーションを欠かさず理解を深める
原価計算をしっかりと算出する
燃料サーチャージを適正に行うには、事業の規模に関わらず原価計算を正確に行わないといけません。どんぶり勘定では、燃料サーチャージそのものに妥当性がなく、正確な金額が算出できないからです。
トラックの走行距離・燃費・燃料代などが明確にわかっていれば、燃料サーチャージで追加請求する金額に確かな裏付けができます。まずは原価計算を行いましょう。
費用見直しと節約を入念にする
必要経費として計上している費用の見直しや、節約できるものがないかチェックしましょう。
理由は、燃料サーチャージの妥当性を示すためです。日常の業務で使用しているものを必要以上に浪費していないかなど、原価計算と合わせて数値化できるようにします。
その結果、燃料サーチャージの導入が便乗値上げではない裏付けになるでしょう。増えたコストを取引先に請求するのは最後の手段にするつもりで、費用の見直しと節約をしましょう。
もちろん、節約や経費削減に励んでいることを取引先にアピールすることも重要なポイントです。
取引先とコミュニケーションを欠かさず理解を深める
突然、燃料サーチャージの導入の話をする前に、取引先とコミュニケーションを欠かさず理解を深めて、実情を知ってもらいましょう。まずは相手の理解が得られないと、燃料サーチャージの導入がうまくいきません。
そのためにわかりやすい説明資料や、原価計算の数値、今までの経費節約の実績など準備をして、交渉するようにします。
まずは、お互いの理解を深めるために、コミュニケーションをしっかりと取るようにしてください。
トラック業界に燃料サーチャージを導入する背景
この章では、国が燃料サーチャージ制の導入を進めようとしている背景を紹介します。
内容は以下の通りです。
- 適正な運賃
- ドライバーの労働環境の改善
- トラック業界の維持
適正な運賃
燃料サーチャージの導入を進めるのは適正な運賃にするためです。今まで燃料価格が高騰した分は、運送業者が負担してきた経緯があります。しかし、燃料の高騰が続き、さらに値上がりが予想される今日では負担するのは限界といえるでしょう。
加えて、小規模の運送事業者は、取引先に対して交渉力が弱く、適正な運賃にできていない場合が多いという実情もあります。
つまり、運賃の適正化のためにも燃料サーチャージの導入を進めたいということです。
ドライバーの労働環境の改善
燃料サーチャージの導入は、ドライバーの労働環境の改善にも役立ちます。
ドライバーの賃金は、全産業の平均所得より1~2割少ない仕事といわれます。また、労働時間も長く、労働環境の悪さから若年層から敬遠されているのが実情です。
何もせずに放置しておくと、さらにドライバーの数は減っていくでしょう。
したがって、若手ドライバーのなり手の確保や労働環境の改善のために、燃料サーチャージを普及させたい狙いがあります。
トラック業界の維持
3つ目はトラック業界の維持です。運送業は荷物を運ぶビジネスです。ビジネスである以上、一定の利益が出せなければ事業は成り立ちません。
利益の成り立たない状態を放置すると、倒産・撤退する事業者が増えるでしょう。その結果、日常生活で必要な物資の運搬に支障が出るようになるかもしれません。運送業は電気や水道などの社会インフラの次に社会を支えている産業です。したがって、運送業が衰退すると、その影響は計り知れません。
加えて、オンラインショッピングの普及で、トラック業界の必要性はさらに高まっています。トラック業界の維持、一定の利益確保のために燃料サーチャージの導入が必要です。
人材確保と産業維持のため燃料サーチャージの理解を広めよう
燃料サーチャージとは、燃料価格の上昇で追加の燃料代の一部を追加運賃として荷主や乗客に請求する仕組みです。最初は航空会社が導入しました。しかし、現在ではトラック業界も燃料価格の高騰の影響で、燃料サーチャージ制度を導入する動きが広がっています。
ただし、航空会社との違いは、トラック業界の燃料サーチャージの導入は、ドライバーの確保、産業維持に関わるほどのものになっています。
まずは、燃料サーチャージへの理解を広めて、導入に対して前向きに取り組むようにしましょう。