物流倉庫の業務は多岐に渡りますが、その中でも重要な作業がピッキングです。
単純作業と思われがちですが、顧客満足度に直結する業務であり、出荷ミスや誤納品の発生をゼロに近づける仕組みづくりをしないといけません。
しかし、実際の作業は、出荷する商品を集めてくるだけであるため、スペースに余裕があるオフィスで自社対応をするケースも少なくありません。
そこで、ピッキングの基本や効率化のコツなどを解説し、ミスの起きにくい体制づくりのヒントをお伝えします。
- ピッキング作業とは
- 種類と違い
- やり方
- 効率化のポイント
- 自動ピッキングの問題点
この記事を参考にすれば、ピッキングのやり方や、効率を高めるコツがわかるようになるでしょう。
また、ピッキング作業を含めて物流業務を自社対応するか、アウトソーシングを検討するべきかを判断する際にも役立ちます。ぜひ、最後までご一読ください。
目次
物流倉庫でのピッキング作業とは
ピッキング作業とは、注文があった商品を出荷するため、保管された場所から品物を集めてくる作業です。
商品を出荷するまでの流れは、以下のようになります。
- 出荷指示書(ピッキングリスト)に記載された商品を集める
- 仕分け作業(トータルピッキングの場合)
- ダンボールに入れて梱包
- 送り状を貼り付け
- 納品先ごとに仕分け
- トラックに積み込む
始めの2つがピッキング作業であり、商品を間違えて納品してしまうとクレームに発展する可能性があります。
そのため、物流倉庫内の業務でピッキングは顧客と注文客に直接影響与える立場にあるといえるかもしれません。
したがって、管理者はミスが起きない体制づくりが求められます。
特に、保管棚から商品を取り出す際にミスが起きやすいため、誰が作業しても同じ結果が出せる手順や設備を用意して環境を整えることが必要になるでしょう。
ピッキングの種類と違い
ピッキングにはいくつか種類があり、この記事では基本的な3つのピッキングを紹介します。
- シングルピッキング
- トータルピッキング
- マルチピッキング(シングルとトータルを併用)
それぞれ確認していきましょう。
シングルピッキング(別称:摘み取り方式)
シンプルなピッキング方法は、注文ごとに商品を集めてくる「シングルピッキング」と呼ばれる方法です。
楽天市場などECサイトを運営している企業では、この方法で作業されている場合が多いです。
注文ごとに商品を集めてきて出荷するため、発送まで短時間で対応できます。
また、スタッフの育成に時間がかからず、在庫状況がリアルタイムに把握しやすいなどのメリットがあります。
ただし、スタッフが物流倉庫内を移動して、商品を集める必要があるため、労力と作業時間がかかります。
そのため、一回の注文数が多く、取り扱っている商品の種類が多い場合、移動距離や保管する場所を工夫しないと効率を上げるのが難しくなるでしょう。
トータルピッキング(別称:種まき方式)
「トータルピッキング」は複数の発送先から注文された商品をまとめて集めてきて、その後に注文ごとに仕分ける方法です。
ピッキングの後に仕分けが必要になり、作業が2段階になります。
シングルピッキングと比較して、複数の注文をまとめて処理できるため、倉庫内の移動距離や作業時間が短く済むのがメリットです。
一方で、シングルピッキングより作業工程が増えるため、手間が増え、仕分けミスが起きる可能性があります。
また、ピッキング後に仕分け作業をするためのスペースが必要になるため、広さに余裕のない現場では導入ができないかもしれません。
マルチピッキング(シングルとトータルを併用)
マルチピッキングは、前述した2つのピッキングを組み合わせた方法です。
複数の発送先から注文された商品をトータルピッキングと同じようにまとめて集めてきて、同時に仕分けをします。
複数の注文を同時処理できて、移動距離を短縮しつつ、効率を高めることが可能です。
また、仕分けスペースが確保できない物流倉庫にも導入ができます。
しかし、ピッキングと仕分けを同時にすることで商品の入れ間違いが起きる可能性が高まるため、徹底した作業の標準化とダブルチェックの仕組みが必要です。
倉庫でのピッキングのやり方
この章では、ピッキングのやり方を5つ紹介します。
- 出荷指示書による手作業のピッキング
- ハンディターミナルとバーコードを利用
- タブレットと台車を組み合せたピッキング
- IC(RFID)タグを活用したピッキング
- デジタル表示器を利用したピッキング
一つずつ確認していきましょう。
出荷指示書による手作業のピッキング
出荷指示書(ピッキングリスト)を見ながら、出荷に必要な商品を保管場所から集めてくるやり方です。
出荷指示書には、顧客が注文した商品の品番や数量、ロケーション(保管されている場所)などが記載されています。
わかりやすい出荷指示書があれば作業ができるため、多額の初期投資は不要です。
しかし、手作業であるため、ピッキングの正確さやスピードは作業者に依存します。
また、ミスを防止するための確認する仕組みやシステムが必要になるでしょう。
とはいうものの、出荷指示書によるピッキングは、専用設備がいらない方法であり、すぐに始めることができます。
ハンディターミナルとバーコードを利用
バーコードやQRコードをハンディターミナルなどの端末に読み込ませるピッキングは、多くの現場で取り入れられている方法です。
出荷指示書の出荷情報を読み取り、データ登録して正確に必要な商品を集めることができます。
端末で間違った商品情報を読み込むと、音やバイブで通知されるため、ピッキングミス防止に効果的です
以前は、端末を持ちながら作業を行うのが一般的でしたが、片手がふさがり効率が下がるため、手に装着するタイプのバーコードリーダーも普及しています。
タブレットと台車を組み合せたピッキング
ハンディターミナルを使用したピッキングの派生として、タブレットを台車(カート)に取り付けて商品を集める「タブレットピッキング」があります。
スタッフは、タブレットが付いた台車を押しながら、表示される指示に従って作業をします。
ハンディターミナルより画面が大きく、作業内容が一目でわかるようになるため、経験の浅いスタッフでも短期間に戦力化が可能になるでしょう。
IC(RFID)タグを活用したピッキング
商品情報を記録させたIC(RFID)タグを活用すれば、作業の簡略化ができてピッキングの精度を高められます。
具体的には、ICタグはワイヤレスで通信が可能であり、集めてきた複数の商品を一気にスキャンしてチェックができます。
そのため、商品番号を目視で確認したり、バーコードを読み込ませたりという手間がなくなり、作業効率とミス防止の両立が可能です。
また、手に装着するウェアラブルICリーダーを使用すると、棚から取り出す際の動作をしている間に情報の読み込みができてチェックが完了します。
ただし、バーコードに比べて、コストが割高、通信が金属などの影響を受ける、スキャンミスが起きるという問題があります。
したがって、ICタグは導入できる現場や商品が限定されやすいですが、環境を整えればピッキングの効率を大幅に向上させることができるでしょう。
デジタル表示器を活用したピッキング
デジタル表示器を保管棚に取り付けて、表示される指示どおりに商品を取っていく「デジタルピッキング」も作業者の負担を減らす方法です。表示器の指示通りに動けば必要な商品を集められるため、経験や知識のない人でもピッキングができるのがメリットです。
前述したハンディターミナルやICタグと組み合わせて運用もできます。他にも、書類なしで作業が可能であるため、ペーパーレスにもなるでしょう。
ただし、棚に取り付けるデジタル表示器が大量に必要なため、導入には十分な予算が必要です。
ピッキングの効率化3つのポイント
ピッキングの効率を上げる3つの方法を紹介します。
- 作業指示書の最適化
- ピッキング作業を標準化
- ロケーションの工夫
これらは、ピッキングのやり方によって相性の良いものとそうでないものがあります。
それぞれ確認していきましょう。
作業指示書の最適化
作業指示書に記載する情報を精査して最適化すると、作業効率を上げるのに役立ちます。
また、必要な情報(商品が保管されているロケーション・品番・数量)が目立つレイアウトにすると効果的です。
他にも以下のような取り組みで出荷指示書が見やすくなります。
- 重要情報のフォントサイズを大きくする
- 間違えやすい箇所の色を変える
- 不要な情報を非表示
このような取り組みで作業指示書を最適化できると、手作業やハンディターミナルを用いた現場では、ミス防止や効率アップになるでしょう。
ピッキング作業の標準化
商品を取り出す手順や機器の操作、チェック方法を示したマニュアルの作成、整備することで作業の標準化ができ、ピッキングの効率化ができます。
さらに、標準化した作業を動画にして視覚的にわかるようにすると効果的です。
新人であっても、観れば簡単に理解できて再現しやすくなるからです。
このように作業の標準化と伝える方法が確立すれば、育成期間の短縮につながり、初心者も早期に一定レベルのピッキングができます。
また、スタッフの熟練度に依存する体制から脱却もできるでしょう。
したがって、ピッキングのやり方に関わらず、作業の標準化は必要です。
ロケーションの工夫
前述した作業の標準化と同様に、ロケーションの工夫も取り組む効率化のポイントといえるでしょう。
作業者の移動距離が短くなってムダな動きが減れば、負担が軽減しミスが少なくなるからです。
具体的な工夫の例は以下のようなものです。
- 注文が多い商品は出荷場に近い場所に保管する
- 同時に注文されやすい商品は近くにする
- 混同されやすいものは隣に保管しない
- 特定の時期だけ注文が増える商品は、期間中だけわかりやすい場所に保管する
- 棚の色を変えたり、目印を付けたりして保管場所を分かりやすくする
このような取り組みでロケーションを整備すると、探す手間と取り出す時間が削減でき、効率化につながります。
システムとロボットによる物流倉庫のピッキングの問題点
ピッキングの精度や効率を追求する場合、WMS(倉庫管理システム)とロボットを導入すれば、ピッキング作業の大部分を自動化できます。
当然、自動化ができれば、作業精度が高まり、イレギュラー対応が減り、物流の品質も向上するでしょう。
また、システム導入により、作業進捗や在庫情報、入出荷を一元管理できる体制を構築できるため、稼働に必要な人数を少なくでき、人件費の節約、在庫管理の最適化も図れます。
ただし、システムやロボットを導入する場合は初期投資が高額になります。
しかも、設備投資の元を取るには相当な期間が必要になるでしょう。
そのため、すべて自社で対応するよりも、すでに設備や人員が揃っている物流倉庫にピッキング作業を含めて物流業務をアウトソーシングしたほうが効果的である可能性が高いです。
円滑な出荷には物流倉庫での確実なピッキングが必須:まとめ
ピッキングは、出荷するための商品を保管場所から集めてくる作業です。
やり方には、出荷指示書を確認しながら集める手作業や、端末やタグを用いるなど複数の方法があるものの、ミスを減らし、出荷までの時間を短くする効率化が求められます。
ピッキングで効率を求める方法は以下の3つ。
- リスト見直しや作業の標準化をしてスタッフの習熟度を助ける
- 端末やタグを使ってピッキングの精度が落ちない環境を作る
- システムとロボットを導入して人員と手作業を減らして自動化する
これらの取り組みで商品を迅速に集めて出荷できる体制が実現します。
しかし、そのためには労力や資金が必要です。またスタッフが習熟するまでに時間もかかります。
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