商流は、流通の4つの機能のうちの1つです。
商流の考え方を正しく理解することで、商取引が円滑になり、正しい情報に基づいた会話ができることで取引先との信頼関係を築くことができます。
商流は4つの機能の中でも特に複雑ですが、理解することでビジネスを円滑に進められるだけでなく、競争力を高めることができます。
また、社内でトラブルやイレギュラーが発生した際の対応スピードを大幅に向上させることができるため、ビジネスの拡大にもつながるのです。
今回は、物流とも関係が深く混同されやすい商流とは何か、商流を理解することでどんなメリットがあるのか、物流や貨幣流通、情報流通など他の流通機能とはどう違うのかについて解説していきます。
物流担当者が知っておくべき!アウトソーシングで期待できる導入効果とは
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目次
商流とは流通4機能の1つ
商流とは「商的流通」の略であり、「取引流通」と呼ばれることもあり、流通の流れの中で取引が発生した際の所有権・データ(情報)の移動が発生する流れを指します。
物流のように目に見えるものの動きではないため、理解が難しいことと同時に発生することの多い物流などとの区別が付きにくい方もいらっしゃるでしょう。
商流について、トマトを生産している生産者から、卸売業者を経て、小売店、消費者へとトマトが届く流れで解説してみます。
まず生産されたトマトは、卸売業者に買い取られると生産者から卸売業者へ所有権が移動。この際所有権が移動したことで1度目の「商流」が発生。
続けて卸売業者が小売業者に卸し決済されると、所有権が小売店に移動し2度目の「商流」が発生します。ただしこの際、小売業者と卸売業者で売買契約が締結されても、決済の発生が翌月末、などタイミングがずれる場合にはまだ所有権は卸売業者にあるため、商流は発生しません。
これに関してはローンを組んで車を購入するときと同じ概念です。
このように、物の移動(物流)が発生すると商流もあわせて発生することもありますが、決済がすみ所有権が移転して初めて商流が発生する、と覚えておくと良いでしょう。
こうした取引による所有権の移動、物の移動など含めて正しく理解することが、取引先とのやり取りにおいても大切なのです。
商流と物流の違いとは
同時に発生することも多い流通の4機能の中でも、混同されやすいのが商流と物流です。
商流と物流の違いを簡単に表すと、「所有権の流れ」なのか「物の流れ」なのかということ。
また取引・契約の条件により物流と商流は流れる方向は「生産者から消費者方向」の一方向ではありますが、必ずしも同時に発生するものではない事も覚えておくと理解しやすくなります。
商流と情報流・金流との違いとは
商流について理解が深まっていくと、商流と物流の違いは理解できたが、金流・情報流と商流の違いがわからない、となってしまうこともあるのではないでしょうか。
まず商流と金流・情報流の大きな違いは「流れる方向」です。物流と同じく消費者方向に向かう一方向で流れるのが商流とお伝えしましたが、金流は逆に「生産者方向」に、情報流は「双方向」に流れます。
また同じく商取引活動のくくりに入るものの、取引により所有権が移転して商流が発生するのに対し、金流は「お金の流れ」が発生するとき、情報流は「何らかの情報の流れ」が発生した時に発生します。
情報流に関しては食品に掲載されることも増えてきた生産者情報の掲載や、広告宣伝活動・在庫データ・受発注データ・出荷完了データなども含まれ、商流との関わりも大きいものの、同時発生するケースは多くはありません。
商流を理解する3つのメリット
では、商流について知っておくことにどのようなメリットがあるのか、説明しましょう。
信頼性が高まる
先ほども述べたように、単にモノの流れを見ただけでは、だれに所有権があるのかは、よく分かりません。これは不動産で考えると良く理解できるでしょう。通りがかりの土地や駅前のビルの所有者は、登記簿を見なければ知ることはできません。「〇〇さんの土地らしい」という噂だけで信用するのは危険です。
これと同じで、流通の世界でも、工場や倉庫、店舗やトラック内の商品が、それぞれだれが所有しているかは、契約内容を理解しなければつきとめられないでしょう。つまり、商流を把握していなければ、第三者に対してモノの属性やステータスを明確に伝えることができないわけです。この状態で、「〇〇の商品は自分のものだ」と主張しても、とくに関わりのない第三者にはなかなか信用してもらえません。
しかし、商流について正確に把握していれば、例えば「仕入れたと同時に代金を支払うので、商品の所有権は自分にある」とか「来月末にA社からの支払いが済むまでは、所有権が弊社にある」という具合に、はっきりと主張できるでしょう。すると、第三者からの信頼が得やすいため、銀行に融資を申し込んだ際でも、その資金の動きや額、また取引先の評判や実績、経営状況などを鑑みて、融資がおりやすくなるメリットがあるのです。
一般的に、モノやお金の流れが複雑でからくりが理解しにくければ、それだけ信頼を得るのも難しくなります。よって、商流への理解は、ビジネスにおいて優位性を保つうえで非常に重要といえるでしょう。
リスク管理ができる
商流を把握しておくと、リスク管理にも大変役立ちます。
ECショップを経営していて、離れた場所に在庫を持ち、物流業務をアウトソーシングしていると想定しましょう。ネット経由ですから24時間・365日、いつ注文が入るか分かりません。もちろん購入者の住所も全国に散らばっています。支払方法も、代引きもあれば、コンビニ振り込み、クレジット払いなどさまざまです。
この環境下では、商品の動きとお金の動きが複雑で、ひっきりなしに状況は変化しているといえるでしょう。仮にトラックが渋滞に巻き込まれたり、商品を紛失したり、破損したりした場合、苦情や返品、返金対応に追われることにもなります。
しかし、商流を正確に把握していれば、いざトラブルが生じても、その内容に合わせた適切な処置がしやすく、迅速な判断がくだせます。つまりリスク管理にも大変役立つのです。
業務効率と精度が向上する
流通の世界では、現場で起こったトラブルは、その場ですぐに解決して穏便に済ませることができれば理想的です。上司が、状況を直接見ないなかで、ただ報告を受けて指示を出すには限界がありますし、時間の経過とともに問題が悪化しかねないからです。
そこで、現場の担当者レベルとも商流が共有でき、より多くの社員がモノとお金の流れを俯瞰して見ることができれば、大きく勝手が違ってきます。社内だけでなく、取引先やクライアントとのやり取りが非常にはかどるため、業務効率と精度が格段に向上するに違いありません。
自社の商流を正しく理解するには「商流図」の作成がおすすめ
「商流を理解したいけど複雑でよくわからない!」という方におすすめなのが、自社の商流を正しく理解するのに役立つ「商流図」の作成です。
商流図とは、物・お金・情報・取引先の情報・自社の情報などを一覧図にして、誰がみてもわかる図式に表すというもの。
取引先が多いなど、情報量が多いと作成が大変に感じられるかもしれませんが、この図は一度作成してしまえばメンテナンス次第で半永久的に活用できます。
商流図をみれば、自社で何らかの経営的課題を抱えたとき、イレギュラーなエラーが発生してしまった時にもスムーズに把握・解決するのに役立つのです。
また商流図は1パターン作成すれば問題はありませんが、担当部署ごとに書き加えたり、編集して別バージョンを作成するという企業もあります。
業務効率と精度が向上する
商流図は情報は多くても、作り方はいたって簡単です。以下のステップで作成できますので、新人研修で作成し自社への理解を深めるのにも役立ちます。
また取引先が多い、自社倉庫や工場ごとに商流が全く異なる場合には、それぞれ区別して作成するとわかりやすくなります。
- 自社(工場・倉庫含む)・全ての取引先・を□で囲み記載
- 商品・仕入金額・卸額・数量などの情報を記載
- 商流が発生する流れや物・お金・情報の流れを矢印や線で区別して記載
まとめ
商流を理解し、いつでも図面にして提示できるようにしておくと、第三者からの信頼が高まり、トラブルを最小限で抑えるメリットもあります。業務効率も上がるので、コスト削減や労働時間の短縮にも寄与すると考えられます。
ぜひ商流への理解を深めて、その内容を社内でも積極的に共有し、より質の高い経営を目指しましょう。