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リードタイムとは
「リードタイム」とは、ある製品の開発から、材料や部品の調達、製造、そして出荷・配送されて注文者や消費者の手元に届くまでにかかる全期間を意味します。
基本的にすべてのメーカーは、新製品を開発するにあたってリードタイムを設定します。IT企業でも、ソフトやアプリの開発依頼があれば、その内容や難易度等を考慮してリードタイムを割り出し、その条件を相手に提示して正式に受注するかを決定します。
しばしば「納期」と混同されることがありますが、納期は、「 〇月〇日」というように、注文された製品を届ける特定の日時を表します。一方、リードタイムは、あくまで「〇ヶ月」というように期間を表すので、意味や使い方は根本的に異なります。
多くのビジネスシーンで、リードタイムは、ほぼ例外なく短いことが良しとされます。時間は不可逆であり、物事を早く進めるほど、その過程におけるタイミングや時期についての選択肢が増え、ビジネスチャンスが増えるからです。しかし、遅れてしまうと、その時間を取り戻すのは非常に難しく、機会損失につながることも少なくありません。
リードタイムの短縮化には、「企業の開発・製造力」と「質の高い物流」の2点が不可欠な要素となります。逆を言えば、この両者が充実すれば、自ずとリードタイムは短くなるといえるでしょう。
リードタイムの種類
リードタイムは、細かく4つのフェーズに分けることができます。以下に具体的に説明していきましょう。
開発リードタイム
商品やサービスの開発を企画し、市場に出せる形に完成させるまでの期間です。
スピーディーな開発は、競争優位に立つための大切な要素となります。よって、開発リードタイムは短いに越したことがありません。しかし、急ぎすぎると、コストや人材調達などに無理が生じ、かえって逆効果となることもあるので、現実に即した適切な設定が求められます。
調達リードタイム
新商品を製造するために必要な原材料を調達するまでの期間です。
入手しやすい材料なら、品質の良さや安さ、仕入れにかかる時間などを比較して、最適な仕入れ先を選びます。その材料を一から製造したり、植物のように新たに生育するとなると、ある程度、調達リードタイムには余裕をもたせる必要があるでしょう。海外から調達する場合も同じことが言えます。
生産リードタイム
調達できた材料を使って新商品の製造を開始し、必要な数だけ完成品が揃うまでの期間です。
材料調達のめどが立った時点で、生産ラインの構築、人員の確保や配置、技術指導の徹底を図っておくことが、生産リードタイム短縮のポイントとなります。アウトソーシングする場合は、なおさら製造工程の周知と情報共有の手段の取り決めに注力する必要があるでしょう。
配送リードタイム
新商品を出荷し、小売店や消費者への配達が完了するまでの 期間です。
受注から商品のピッキング、トラックなど輸送手段の手配、積荷、もっとも効率の良い配送経路の割り出しなど、スムーズな流れを構築するロジスティクスの力が試されます。
リードタイムを短縮するメリット
リードタイムを短縮する利点について見ていきましょう。
在庫が削減できる
多くの商品を在庫管理すると、商品の劣化や故障、紛失の原因になります。そこでピッキングから積荷への時間を短くしてリードタイムを縮めれば、確実に在庫を削減できるので、上記の様なリスクが減らせます。
顧客満足度を向上できる
リードタイムを短縮すると、顧客満足度が向上し、競争優位に立つことができます。競合との差別化をはかって企業価値を高めることで、さらなる新規顧客を取り込み、確実な業績向上が期待できます。
コスト削減が実現する
リードタイムの短縮により在庫が減れば、その分のスペースや在庫管理のための人材が必要なくなります。よって余分なコストを削減できるでしょう。
新たなネットワークが広がる
後述しますが、リードタイムの短縮は自社の力だけでは実現しません。必ず協力先が必要で、そのために良きパートナーが見つかれば、リードタイムの短縮化に加えて従来になかった新しいビジネス展開が可能となるかもしれません。
物流のリードタイムを短縮する方法
続いて、リードタイムを短縮するための具体的な方法を紹介しましょう。
入出荷作業の効率化を推進する
物流システムを見直して商品を効率的に入出荷できれば、大幅なリードタイムの短縮化が期待できます。
とくに、荷物が物流倉庫に届いたら、在庫にせず、直ちに仕分けとピッキングを行い、そのままトラックに積荷して出荷する「クロスドック」は、非常に有効です。
新たなツールを導入する
AIやIoTによる自動ピッキングや不良品の仕分け、受注予想、また操作性に優れたマテハン機器やハンディーターミナルの導入なども有効です。まとまった予算が必要になりますが、リードタイムが大幅に短縮できるメリットの大きさを考えれば、決して高くはないでしょう。
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人材育成に注力する
入出荷作業を効率化したり、新たな機器やシステムを導入したりして、戦略的に業務改革を進めるためには、必ずそれに相応しい人材が必要になります。そのための社員教育やスタッフの確保には、しっかりと力を注ぐ必要があるでしょう。
取引先を見直す
リードタイムの短縮は、自社の力だけでは決して達成できません。材料の調達先や仕入れ先、開発・製造の委託先や物流業者との連携、小売店の受け入れ 態勢の整備など。ぶつ切りではなく、一連の流れとして改革を進めなければ、目に見えた成果が出にくい場合が少なくありません。
そのためには、各取引先を見直し、より経験値の高い、上質な相手との取引を検討することも大切です。
まとめ
リードタイムの短縮が実現すれば、コスト削減や重労働からの解放、そして何より顧客満足度が向上して、企業価値が確実に高まります。
そのためには、まず現状の問題点を洗い出すことが肝心です。冒頭でご紹介した4種類のリードタイムを一つずつ見直し、どの点の改革が必要かを浮き彫りにします。たった一か所でも改善の糸口が見つかれば、それをきっかけにしてやがて本格的な改革への道が開けるに違いありません。
ぜひ一日でも早くリードタイムを短縮して、さらなる競争力強化に努めていきましょう。