クラウドファンディングとは、インターネットを通じた新しい資金調達の形式のことです。実行者は自分の活動やアイデアを発信し、その内容や思いに共感した人や、プロジェクトを応援したいと思った人が資金を提供します。クラウドファンディングにおいてプロジェクトを支援した人は、そのお礼として実行者からリターン品が贈られます。リターン品の内容はプロジェクトによって異なり、商品やイベントの参加権などさまざまです。
リターン品の内容によって、クラウドファンディングは大きく2種類に分けられます。ひとつはリターン品がお金であることが確約されている投資タイプ、もうひとつは商品やサービスなどお金以外のものがリターン品となっている非投資タイプです。
中でも一般消費者に広く理解される、リターンとして商品やサービスが提供される形式が、本記事で取り上げる「購入型クラウドファンディング」です。購入型クラウドファンディングは他のクラウドファンディングと異なり、プロジェクト成功条件別の2つの方式もあります。
「新しい商品を販売するにあたり、クラウドファンディングで市場の反応をみたい」、という資金援助以外の目的で活用されることもあります。
どの形式でクラウドファンディングするのが良いかお悩みの方はもちろん、購入型クラウドファンディングプロジェクトで資金調達などを初めて行う方にとって、知っておきたい内容となっておりますので、ぜひお目通しください。
目次
購入型クラウドファンディングとは
購入型クラウドファンディングは、リターン品として商品やサービスなどを設定する非投資タイプのクラウドファンディングです。目的が資金調達であることに変わりはないものの、従来の寄付や出資、投資などとは性質が異なります。
よくあるリターン品は、新商品や新しいサービスなどで、「支援者に先払いでこれらの商品を事前購入してもらう」というイメージです。
クラウドファンディングは目標額に到達することでプロジェクトが成立する仕組みですが、購入型クラウドファンディングにおいては2つのプロジェクト方式がありますので、次項で解説させていただきます。
購入型クラウドファンディング2つの方式
購入型クラウドファンディングについて、その実施方式をご紹介します。
All or Nothing方式
「All or Nothing方式」では、実行者はプロジェクトが達成したときのみ、支援金を受け取ることが可能です。どのような場合にプロジェクト達成とみなされるかというと、支援額が最初に設定した目標金額を上回ったときです。プロジェクトが未達成の場合は、集まった資金はすべて支援者に返金されてしまいますが、プロジェクトの内容や目標金額、募集期間内のアクションなどによっては、効率的に資金を集められます。
All in方式
「All in方式」では、プロジェクトの達成・未達成にかかわらず、支援金をすべて受け取ることが可能です。注意点としては、支援額が目標金額に届かず、予算が足りない場合でも、必ずプロジェクトを実行しなければならない点が挙げられます。支援額が少ないと赤字になってしまうので、リターン品やプロジェクトの内容をよく検討する必要があります。
購入型クラウドファンディングの市場規模
日本クラウドファンディング協会が公表した「クラウドファンディング市場調査報告書|2021年7月9日」によると、購入型クラウドファンディングの2019年時点の市場規模は169億円でしたが、1年後の2020年は501億円と実に3倍に伸びていることもわかっています。
市場規模としては購入型より大規模となっている融資型クラウドファンディングをみると、2019年が1,161億円、2020年が1,186億円と大きく変化はないことも踏まえると、購入型クラウドファンディングの伸び率は目を見張るものがあります。
資金調達だけでなく、市場の反応を見るという使い方もできることもその要因なのではないかと推測もできます。
その他のクラウドファンディングの種類
寄附型 | 株式型 | 貸付型 |
インターネットで寄付を募る、非投資タイプのクラウドファンディング。あくまで寄付という名目で資金を募るため、購入型とは違ってリターン品がない場合がほとんど。プロジェクトによっては、手紙や写真などで返礼することもあります。 | 支援者に少額の株を買ってもらう、投資タイプのクラウドファンディング。中小企業やベンチャー企業などで行われることが多く、企業は投資家に未公開株を提供するかわりに、資金を募ります。非公開株は通常の株購入よりもリスクが高い分、大きなリターンを得られる場合もあります。 | 投資家がサービスを通じて資金の貸付を行う、投資タイプのクラウドファンディング。「ソーシャルレンディング」「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれており、個人投資家が小額からでも企業を支援できる方法。支援者には、企業が支払う利息の一部がリターンとして分配されます。 |
その他のタイプのクラウドファンディングについては、下記記事も参考にしてみてください。
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購入型クラウドファンディングのメリット
購入型クラウドファンディングは、インターネットを通じた資金調達が初めての人でも実行しやすく、多くの人から人気を集めています。ここでは、購入型クラウドファンディングの主なメリットをご紹介します。
手軽にプロジェクトの立ち上げができる
購入型クラウドファンディングは、運営の審査に通りさえすれば、企業や団体、個人など、規模や属性に関わらずどんな人でも行えます。融資や助成金などで資金調達をする場合は、財務状況や事業内容などさまざまな条件が必要ですが、購入型クラウドファンディングならプロジェクトのアイデアさえあれば誰でも申請できるのです。資金調達のハードルがぐんと下がるため、これまで予算の関係でアイデアを形にできなかった人でも、気軽に挑戦できる点がメリットです。
商品PRができる
購入型クラウドファンディングは、プロジェクトとして大々的に商品を発表できるので、商品のPRにも効果的です。発案者の思いに共感した人や、これまでにない新しいアイデアを求めている人など、商品のファンをいち早く獲得できます。また、SNSでの拡散も期待できるため、本格的に商品を売り出す前の話題作りとしても役立つでしょう。
テストマーケティングができる
購入型クラウドファンディングは、商品やサービスを一般提供する前のテストマーケティングとしても効果を発揮します。「どのような属性の人が商品を購入するのか」「想定していたターゲット層と違いはあるか」などを検討すれば、さらなる商品・サービス開発への活用が期待できるでしょう。また、支援者にアンケートを送付するなどして、フィードバックをもらうことで、商品やサービスの改善点を見出すことも可能です。
購入型クラウドファンディングのデメリット
このように、購入型クラウドファンディングにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかデメリットもあります。メリット・デメリットを正しく理解したうえで実行に移しましょう。
アイデア流出の可能性
購入型クラウドファンディングでは、プロジェクトを開始した時点で、商品やサービスの詳細がすべて公開されます。そのため、発案者がこれらを一般提供する前に、ほかの人が類似サービスを開始したり、似たような商品を売り出したりする可能性もあります。アイデアや情報の流出を防ぎたい人は、事前に特許申請などの対策を取っておくと安心です。
広報活動が必要
購入型クラウドファンディングは、ただプロジェクトを開始すれば自然に資金が集まるわけではありません。ほかのプロジェクトに埋もれてしまい、多くの人に知られないまま募集期間が終了してしまう可能性もあるため、必ずプロジェクトの存在を知ってもらうための広報活動を行いましょう。SNSで宣伝を行ったり、インターネット広告を打ったりと、商品・サービスのターゲット層に合った方法を選択することが大切です。
購入型クラウドファンディングにおける資金調達の流れ
基本的な購入型クラウドファンディングの流れは、目標金額を定め、どのようなアピールをするか、リターンをどうするか決めてから、掲載先を選定してクラウドファンディングプロジェクトページを立ち上げます。立ち上げてから期限内にプロジェクトが成立した場合、リターンを予定通り支援者に届け、プロジェクト終了となる点はその他クラウドファンディングと変わりありません。
ただし、成功させるためには資金調達するまでに以下の流れを踏まえることをおすすめします。
- 似たようなクラウドファンディングプロジェクトの成功・失敗の事例を参考にする
- 参考例を踏まえ社内でプロジェクト案を遂行する
- 支援者にとって魅力的であろうと考えられるリターンの選定
- 近い事業ジャンルのプロジェクトに強いクラウドランディングサイトを選定する
- クラウドファンディングサイトへプロジェクトページを掲載してもらう
- プロジェクトページ情報の拡散とアピールをSNSやメディアで展開する
- プロジェクトが成立・成功したら支援金を受け取る
- プロジェクトを実行しリターンを返戻する
成功事例だけでなく、失敗事例も参考にすることでより成功確率の高いプロジェクトを立ち上げることができます。また魅力的なリターン・プロジェクトとするだけでなく、多くの支援を集めプロジェクトを成立させるためには、より多くの賛同者をつのる ためにも認知され可能性を向上させるための行動も重要です。
購入型クラウドファンディングに関する法律について
購入型クラウドファンディングでプロジェクトを起案し、資金調達する場合は通信販売と同等とみなされるため、広告規制に関する以下の3つの法律を遵守することが求められます。
- 特定商取引法:特定商取引法に基づく表記ページの作成が必須となる
- 景品表示法:誇大・虚偽広告とならないようアピールしなくてはならない
- 消費者契約法:消費者保護の観点から「瑕疵担保責任は一切負わない」ということはできない
いわゆる資金調達、というイメージだけでプロジェクトページを立ち上げてしまうと、上記の法に反してしまい罰則を受けることもあるため注意しましょう。
また通信販売と同等の扱いとなる、ということに十分留意した誠実な対応が求められる点も、他のクラウドファンディングとの違いともいえますので気を付けてください。
購入型クラウドファンディングの税金の話
購入型クラウドファンディングで資金調達した場合、支援金に対して税金がかかります。
- 個人事業主として資金調達する場合:所得税
- 法人として資金調達する場合:法人税・消費税
上記のように購入型クラウドファンディングはプロジェクト起案者の属性により、支払う税金が代わり、手続きも異なる点に注意して下さい。
購入型クラウドファンディングを行う際の注意点
購入型クラウドファンディングは、特定商取引法上の「通信販売」に該当するため、必ず同法のルールを守ったうえでプロジェクトを遂行しなくてはなりません。主な内容としては、「表示義務」「誇大広告の禁止」などが挙げられます。
表示義務とは、事業者の名前や所在地、連絡先などの情報を掲載する義務のことです。通販サイトをよく利用される方の中には、「特定商取引法に基づく表記」というページを見たことがある人も多いでしょう。購入型クラウドファンディングを行うときは、このような情報を必ず支援者が確認しやすい箇所に掲載する必要があります。
また誇大広告の禁止においては、取り扱う商品やサービスを「実際とはかけ離れたもの」や「実際よりもよい効果をもたらすもの」として広告した場合、罰則が科されます。たとえ効果を誇張しようとした意図はないとしても、そのように消費者が誤解する広告を打った場合はルール違反とみなされるので、くれぐれも注意しましょう。
クラウドファンディングの発送代行は「MOTOMURA」にお任せ
購入型クラウドファンディングでは、支援者へのリターン品の発送を自分自身で行わなければなりません。支援者の数が多いと発送に時間がかかったり、住所などのミスで商品が届かなかったりと、トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。このような失敗を防ぐためには、リターン品の発送を代行業者に依頼するのがおすすめです。
「MOTOMURA」では、クラウドファンディングのリターン品の発送代行サービスを提供しており、送り先のデータがあれば、少量からでも対応可能です。また、首都圏に隣接しているため輸送料を削減でき、お得に配送できるでしょう。これから購入型クラウドファンディングを行う人は、ぜひ「MOTOMURA」を活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
「自分で考えたアイデアを実現したい」と思ったとき、資金調達の方法で悩まれる人は多いでしょう。
助成金や補助金を利用したり借り入れを行ったりするのもよいですが、気軽に資金調達できる方法として、人気を集めているのが購入型クラウドファンディングです。商品PRやテストマーケティングなどにも効果があることから、新商品・サービスを一般提供する前の施策としても導入されています。
個人・中小企業が発案する場合など、リターン品の管理にコストがかかるときは、発送代行を依頼するのもおすすめです。